- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903619118
感想・レビュー・書評
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ロシアでなじみの妖怪や魔物たちが、人間社会にすうっと入り込んで物語を展開しているというべきか、何か奇妙な事件が起きるたびに人外のせいにしてしまう人間たちの動揺や滑稽さを表現しているというべきか。個人的には文章があまりなめらかでないというか、少々読みにくく感じたものの、「妖犬」など哀切な話もあり、まずまず楽しめた。
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ユーモアものを得意とした女性作家(1872-1952)による連作短編集。
亡命中の1930年代に発表。著者は祖国に戻ることなくパリで生涯を終えた。
魔女(ヴェヂマ)・ドモヴォイ(家の魔)・レシャチーハ(森の魔の女房)・ルサールカ(水の精)
まじない師(ヴェドゥーン)・ウォジャノイ(水の魔)・ヤガー婆さんなど15編。
田舎の屋敷、妖怪は当然存在すると信じているばあや・料理女・小間使いに御者や村人たち、
そんな影響を受けてか、半ば恐れを抱いている語り手の若い女性(お屋敷のお嬢さんなど)。
これは夏には母方の領地で過ごした著者が、体験した農村の暮らしが反映している。
妖怪が直接は現れず、騒ぎや事件は幻想的・心理的なものとして解決を見るものも多い。
二人(?)の妖怪に化かされる(互いに相手が妖怪だと語り手に信じ込ませる)ユーモラスなものも。
ちょっと毛色が変わって面白いのが、都会が舞台の「化け物たち(オーボロチェニ)」と「妖犬」
悪魔崇拝の流行や、マヤコフスキーはじめ多くの詩人が朗読を行ったカフェ「野良犬」の
詳しい描写など、ロシア文学・芸術の「銀の時代」の享楽的なペテルブルグの雰囲気が横溢。
どの短編も祖国へのノスタルジアに満ちている。
迷信が生活の一部となっている人たちも、妖怪たちを産んだロシアの大地も愛おしいのだ。