顔にあざのある女性たち: 「問題経験の語り」の社会学

著者 :
  • 生活書院
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903690414

作品紹介・あらすじ

顔にあざのある女性たちはどのような苦しみを抱え、どのようにその只中を生きているのか!?彼女たちによって語られたライフストーリー=「問題経験の語り」に目を向け、その存在や苦しみを可視化し、「問題経験」の軽減の方途も探ろうとする、精緻な研究の成果。

感想・レビュー・書評

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  • 人を見た目で判断することって全部「差別」になるの? 社会学者 西倉実季さんと、“ルッキズム”について考える | こここ
    https://co-coco.jp/series/study/mikinishikura/

    『顔にあざのある女性たち』西倉実季(生活書院) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG(2009-08-11)
    http://booklog.kinokuniya.co.jp/booklog/masaishii/archives/2009/08/post_79.html

    生 活 書 院
    https://www.seikatsushoin.com/bk/041%20kaoniaza.html

  • 1人の取材者として、人に経験をインタビューする時にどのような態度でいるべきなのか、とても勉強になった。
    インタビューをこんなにもメタ的に捉えるというか、「この発話で被取材者は何を試みているのか」なんて問いは考えたこともなかったので、とても新鮮で驚くとともに、そのように考えると見えてくるはずのものを私はこれまでたくさん見落としてきたのではないだろうかと思わされた。

    筆者が抱いていた想定が当事者間の現実の問題意識とは異なっていたことについて、両者のすれ違いと筆者の気づきをこれまたメタな視点で検討した第7章はとても面白かった。
    自分の質問が相手を誘導している可能性について、記者はこんなに誠実に向き合っているだろうか。もちろんライフヒストリー研究と、あるテーマに沿って考えやコメントを求める記事とはそもそもの狙いが大きく異なるわけだが、それでもやはり反省を迫られているような気持ちになる。

    それからとてもいいなと思ったのが、センシティブなテーマを扱い社会への提言も含みながら、全く説教臭くないこと。
    加えて当事者を「生きづらくて可哀想な人」という上から目線の書き方を全くしていないこと。
    これは新聞記事と学術論文の違いなのかわからないけど、冷静な分事実の重みそのものがどっしりと伝わってきて、とてもいいなあと思う。
    逆になんで新聞記事はあんなに説教臭くなるのか?短い文章の中に詰め込みすぎるから性急にみえるのか?
    全くわからないけど、これは私の中で大きな問いだ。

    社会学、やっぱりいいなあ。
    いつかライフヒストリー研究ってしてみたいな。

  • ライフストーリーガイドブックから選んだ1冊(7/20)。
    この本は筆者がインタビューした3人の顔にあざがある女性たちのライフストーリーをもとに彼女たちの問題経験を検討していく。
    3人とも単純性血管腫という症状を持って生まれていて、顔の他にも首や肩、全身にまであざが及んでいる人もいる。幼い時からそれぞれいじめや、親からの負い目、就職、恋愛、結婚全てにあざがあるとこにおいて苦難がついて周ってしまう。その苦難は女性であるが故の特有な問題経験である。筆者が「女性」に着目してる理由は、この女性であるために特有な問題経験があることと顔という他の部位と比べて特殊なところにあざがあるからである。
    身体障害は世間では広く知れ渡っていて、車イスを使う人とかはバリアフリーがあったりとか、周りは丁寧な対応になっているし、生活し易くなってきたと思う。
    しかし彼女たちのあざという症状では身体障害とは違って物理的に不便になることはないかもしれないが、内面的な部分ではとても苦しんでいると分かった。障害だけど障害じゃない複雑な立ち位置、それに女性というのも含めて。こういった人たちの気持ちを少しでも知ることが必要だと思った。

  • 資料ID:W0164882
    請求記号:361.4||N 83
    配架場所:本館2F書架

    加賀谷先生から書評いただきました!

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    おもわず涙ぐんでしまった
    西倉実希『顔にあざのある女性たち』生活書院 2009
    加賀谷 一
     きみは街で顔に赤い大きな痣(あざ)のある人を見かけたことがあるだろうか。
     小さなあざでなく、顔の半分とか、場合によっては腫れてこぶのようになっていることもある。例えばそのような人と電車でのりあわせて、その人が目の前にいるとする。そんな時、その人の顔のことがすごく気にならないだろうか。人は顔にとても関心がある、興味がある。だから、つい視線がそのあざのほうにいってしまうんじゃないだろうか。でも、すこし遠慮があるなら、じろじろ見たりはしないと思う。そっとのぞき見をするような感じだろうか。
     もし、きみがそのような人と出会っていなければ想像してほしい。自分だったらどうするだろうか、って。その時、どんな風にあざのある人の顔に視線を向けるのだろうかって。 そして、そのような視線、まなざしを人前でいつも受け続けている人がいて、その人がその時、どんな気持ちなのかを思ってほしい。
     ただ、実際にはそのような人と接することはそんなに無いかもしれない。でもそれはその人たちの多くが、一年中、厚いお化粧をして、顔をそむけながら、いつも電車のかたすみの奥にすわって、人目につかないようにしているせいもあるんだ。
     この本は、そのようにして毎日、本当につらい思いをしながら、しかも、そのことを家族にも告げることがほとんど出来ず、じっと耐えている人たちのことについて書かれている。
     だから、きみがもしその人たちの気持ちについて少しでも知りたいなら、ぜひこの本のページを開いてほしい。ちなみにぼくは思わず涙ぐんでしまったけど・・・

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著者プロフィール

1976年生まれ。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程修了。博士(社会科学)。現在、東京理科大学教養教育研究院准教授。主な著書・論文に、『「社会」を扱う新たなモード』(2022年、共著、生活書院)、「『ルッキズム』概念の検討」(『和歌山大学教育学部紀要(人文科学)』No.71、2021年)。

「2022年 『マイノリティだと思っていたらマジョリティだった件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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