発達障害チェックシートできました: がっこうのまいにちをゆらす・ずらす・つくる

  • 生活書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903690506

作品紹介・あらすじ

「発達障害」をもつ子どもたちが、いきいきと学校で学び生活するために、現場の養護教諭7人が1から作り上げた「チェックシート」本体と、その制作過程、理論的背景が1冊の本になりました。日本語の読み書きが苦手な子どもたちのための、LL(やさしくよめる)ページも導入し、すべての人に開かれた本をめざしています。

感想・レビュー・書評

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  • 発達障害の子どもたちへの支援のためにチェックシートを作成した、養護教諭の実践をまとめた本です。

    チェックシートは、学校生活の中で欠点とされている行動(人の話を聞かない、落ち着きがない、適切でないことを言って喧嘩になる、など)を起こす子が、どのように注意され、それをどのように受け止めているのかを明らかにし、さらにはそれが「長所」にもなりうるんだよと伝える構成になっています。
    生徒と教師の両方に、意識変革を促すチェックシート。

    全編を通して「みんな同じでなくていい」というメッセージが伝わってきます。
    同時に、意見や価値観の違う人とどう向きあえばいいのかのヒントにもなります。…学校現場じゃなくても、なかなか、難しいけどね。

    作成の過程を通して、養護教諭、保護者、学校の先生、専門家など多くの立場のさまざまな意見に触れられます。またその意見の相違を乗り越えて、自分にも相手にも満足いくものを作ろうとする姿勢には胸をうたれました。
    チェックシート自体もそうですが、この本も、すごく丁寧に、検討を重ねて作られている印象を受けました。
    読み物としてもとても面白かったです。いい本でした。

  • いまいち

  • 「わるいところさがし」「選別・判定」のためのチェックシートはいらない!という帯の通りの本だった。感動しました。

  • すばらしい。
    私もあの子も地続き。
    だからこそ 分かり合う営みを!

  • 発達障害の当事者、保護者、支援者、教育者など、関わりがある人は絶対に必読。
    できれば社会のすべての人に読んでもらいたい。

    本当の支援とは何か、障害のあるなしにかかわらず、というか、そもそも「障害がある」ことの本当の意味とは何かを考えさせられる。

    障害を「障害」としてしまっているのは、ただ単に多数である「普通」の人、今ここにある「当たり前」の社会なのではないか?
    そこに合わせられない人を「障害者」としてしまっている傲慢さなのではないか?
    その傲慢にみんなが気づけたら、きっともっと、誰にも生きやすい世の中になるのだろうけれど。

  • 本書は、「発達障害チェックシート」の制作記録と
    その理論的背景の解説で構成されている。

    当時定時制高校に勤務していた7人の養護教諭が、
    「『発達障害』をもつ子が、学校の中で居場所をみつけてほしい」
    「どの子も、もっと自分自身を認めてほしい」
    「困っている生徒がいたら手助けしたい」という願いのもと、
    「あたらしいタイプのチェックシートをつくろう」
    とあつまって制作したものである。

    本書は、チェックシート本体、制作編、理論編の3部構成になっている。

    チェックシート本体は、次の4種類からなる。
    ・チェックシート
    ・ひとくふう集
    ・先生のためのひとくふう集
    ・チェックシート 職員用マニュアル

    巻末の資料編に、文部科学省の「児童生徒理解に関するチェックシート」、
    定番のDSM-IVやICD-10がある。

    こちらは定番でも、自分でチェックするものではなくて
    人にチェックされるものだなと感じる文章であるし、
    さらに、これでチェックされるのはちょっとなぁと心情的に感じるものだ。

    一方、この発達障害チェックシートは、副題に
    「わたし発見 あたらしい自分をみつけよう!」とある。

    自分で質問に答え、ふりかえり、自分を見つけていくシートなのだ。

    自分で自分の特徴に気づき、
    自分で対処法を見つけていくツールとして使うことができそうだ。

    「ひとくふう集」もこういう特徴をもっているから
    どう対処すればいいのかが項目別に整理されている。

    制作編、理論編は、初出はそれぞれが別々の雑誌に連載されていたもので、
    学校に勤務する教員、とくに養護教諭に向けて書かれていた。

    本書を出版するに当たっては、教員だけではなく、
    保護者、研究者、当事者に読んでもらいたいという意図を持ってまとめられた。

    著者の考える当事者は、子どもだけではない。

    当事者のところに括弧書きでこのように書かれている。

    (日本の学校制度につまずいている人は、きっとこどもだけでなく、
    おとなの方の中にもいらっしゃるとおもいます)と。

    当事者に読んでもらうため、本書は、
    LLブック(やさしく読める本)のコンセプトをとりいれている。

    前書きも目次も本文もすべて、一般活字の通常の中身と
    字を大きめにやさしく書いたLLページの両方をもつ。

    LLページは、制作編と理論編のそれぞれの章のはじめについている。

    これは、当事者に、すこしでも「わかる!」とか、
    「本文のほうも、よんでみたい!」とおもってくれたら・・・
    という意図でつけられたものである。

    LLページでは次のような工夫をしている。
    ・なるべく ふだん つかっている言葉で、わかりやすく 説明する
    ・わかりやすい みためになるよう、漢字は できるだけ つかわない
    ・おくりがなを まちがえやすい字は、かなで かく
    ・漢字を つかうときは、ふりがなを つける
    ・ひらがなが おおいぶん、わかちがきに する

    LLページだけ読んでいくとやさしく内容がわかるようになっているので、
    本書全体の概略をつかむのにも活用できる。

    著者がLLページをおもいついたのは、
    『LLブックを届ける-やさしく読める本を知的障害・自閉症のある読者へ』
    (藤澤和子・服部敦司編、読書工房、2009年)との出会いがきっかけであるとのこと。

    この本の中にあった
    「「おなじ本を たのしむ!」という かんがえのもと、
    わかりやすい「まとめ」を それぞれのページに つける という方法」が、
    本書のLLページのヒントとなったという。

    著者が『LLブックを届ける』のコンセプトに強く共感したのは、
    自分自身は外国で言葉がわからなくて
    とてもかなしかったことがあったけれど、
    「外国に いかなくたって いま ここで、
    おなじような きもちに なっている人がいる」
    と知ったからであった。

    そして、現場である定時制高校の生徒達とのやりとり、
    「教科書こそ この『おなじ本を たのしむ!』
    というかんがえで つくってほしい!」という思い。

    著者の思いが1冊の本に出会ったことで結実して、
    また新しいものができあがる。

    私自身は、『LLブックを届ける』の著者や
    その中で展開されていたエピソードに近いところにいるので、
    この「つながった」ということを非常にうれしいと感じた。

    「読書案内」で紹介されていた、障害学関係、発達障害関係、
    ケア論等の関連本にも興味を覚えた。

    読んでいた本もいくつかあり、そんなところにも共感を覚えた。

    シートのファイルを希望する人は、本に書いてある
    メールアドレスに連絡するとデータファイルをもらえるとのこと。

    メールがにがてな人は、500円分の切手と
    CDが1枚はいる大きさの返信用封筒を出版社宛に送ると
    CDを返送してもらえるということも書いてある。

    書字へのアクセスが困難な人には
    テキストデータを提供するということも書かれている。

    作り手の思いがつまった1冊である。

  • 立ち読みしたら、子供の療育向け。親や先生がセルフチェックするリストだった。当事者が読んでもしゃあないか。

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著者プロフィール

すぎむらなおみ
1965年うまれ
大阪教育大学教育学部卒業後、高等学校で養護教諭として勤務しています。
それなのに、わたしは「学校」が苦手です。でも、生徒のみんなといっしょにいたくて、学校はやめなかった。
勉強すれば、この苦しさからのがれられるかと…定時制高校在任中には、名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程にもかよっていました。(笑)
「こんな世の中になってほしい」という願いをこめて、養護教諭のなかまたちとつくった本に、すぎむらなおみ+「しーとん」『発達障害チェックシートできました-がっこうの まいにちを ゆらす・ずらす・つくる』(生活書院、2010年)があります。
「だれもが、のびのびできる場所」そんな場所が、世の中にたくさんふえますように。

「2011年 『エッチのまわりにあるもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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