増補版 街場の中国論

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 430
レビュー : 47
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908250

作品紹介・あらすじ

中国はどういうふうに「苦しんでいる」のか。それがこの本の全体に伏流する通奏低音的なテーマです。無数のリスクファクターを抱え込んだ、前代未聞の巨大国家の統治に中国人はどんなふうに苦しみ、ガバナンスの維持のために創意工夫を凝らしているのか。僕はそれを知りたいと思いました。―増補版のための解説より―

感想・レビュー・書評

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  • 風邪をひいているときにワインを飲んで、そのワインの味が全然わからないときがある。鼻が詰まると、よいワインの10%もその価値をアプリシエイトできないだろう。疲れているときにレストランで食事をしても「なんか今いち」と思うことがある。先月行ったイタリアンも僕らの中では「まあまあ」だったのに、実はめちゃくちゃ美味しかったことに気がついた。全てはmy faultで相手に責任はないのである。

    というわけで、あるものの善し悪しをみるときは、こちら側のコンディションもとても大切になるのである。

    長々言い訳しているのは、本書である。僕は2009年に「中国論」を読んだが、あまりインプレスされなかった、、、と当時のブログに記している。その根拠は特に示していないが、新幹線で3冊読んだうちの1冊だったので、速読してそう「即決」してしまったのだろう。

    汗顔の至りである。面白いと奨められてこの増補版を読んだが、実に面白かった。

    僕は北京に1年住んでいたので中国のことが「わりと分かっている」気になっていたのだが、本書を読んで「本当のところは」まるで理解していなかったことに気づかされた。2009年から数年、外国を論ずるとはどういうことか、学んだのも大きいかもしれない。「辺境論」を読んだ後に本書を読んだので日本の立ち位置がより良く理解できたのかもしれない。増補版といっても尖閣諸島やオリンピックなどのエピソードが加わっただけで、本旨は全く変わっていないのだ。本書は、そのトピックが古いにもかかわらず、今読んでも新しい普遍性を持っている。

    少なくとも本書は速読には向いておらず、むしろ行間を読み取るように丁寧に読むのが肝腎だ。すいすい読める「内田節」にだまされてはいけないのである。僕は最初から読み方を間違えていたことになる。

    アマゾンの点(星)つけが信用できないのは、読み手の力が顧慮されていないことにある。読み手がプアだとどんな名著を読んでも「僕にはピンと来ませんでした」という、それこそピンと来ないコメントと低い星しかついてこない。

    一度読んでぱっとしなかったときも、それは僕のレベルの低さゆえかもしれない、という謙虚さを持っておいたほうが良いと思い知った。さらっと読んだ本を酷評するのはとてもリスクの高い行為なのである。それは読み手の知性が低いことを示す、点にツバする行為以外の何者でないこともあるのだ。

  • ・中国のことを考えるときは、彼らと我々の抱え込んでいるリスクのスケールの差を感情に入れる必要がある

    ・近現代史を通して、中国人は「やっぱり中体西用」を思っている可能性が高い

    ・中華思想は、ナショナリズムではない。

  • 2007年に刊行された「街場の中国論」の増補版。2011年刊行。Ⅱ講義篇は、「街場のアメリカ論」に続く、神戸女学院大学の大学院で行った2005年の講義を纏めた、待場シリーズの第二弾。「日本国外でもリーダブルな中国論」、「中国人が読んでも「なるほど、そうか……」と納得できるようなもの」、「日中の世界像の〈ずれ〉を中心的な論件にした中国論」を目指した書とのこと。後から付け足されたⅠ街場の中国論の方が、時事ネタを扱っていて今読むと古臭い感じがする。

    著者の父親・義理の父親は、いずれも先の戦争で中国に恩義を感じ、戦後日中友好に尽くした人物だったとのこと。このためか、著者は中国の反日政策や乱暴な国内統治に寛容というか、肯定的な理解を示している。

    著者によれば、中国の伝統的な中華思想は、中心部=中華から発信する「王化」の光があり、それが届かないところ=周縁部には「化外の民」(北狄、南蛮、東夷、西戎)がいて緩く臣従し、境界線を定めずにその全体を「王土」として曖昧なまま帰属させる、というもの。そして、「伝統的な中華思想を受け継ぎ、統治の基本理念を「王化」戦略においている」現代中国に対して、その「王化」ルール、すなわち華夷秩序に付き合うのが日本の国益にかなう、と説いている。

    このように考えれば、尖閣諸島を巡る国境問題は曖昧なままでよく、また形式的に隣国に敬い従って入れば、隣国の圧力を脅威に感じる事もなくなる、ということになる。そして日本がこのようなポジションを取ろうとしたときの最大のネックは米国だという(米国のアジア戦略は、日中、日韓、中韓に適度な緊張関係を維持すること)。

    中国をアジアの盟主として奉るというのは、さすがに心情的に抵抗感あるけれども、過去の歴史を振り返ってみてそれがアジア地域の安定に最も有効な手立てだとすれば、そのような戦略も「アリ」なのかなあ。何れにしても、これまで読んだことのなかった新鮮な対中国論だった。

  • 今月は読書に集中できなかった。

  • 日本の地理的な立ち位置を思うと、中国を勘定せずに歴史や経済、政治を考えることはできない。その中国の行動原理を私たち日本人はしばしば理解できないが、それを安易に"嫌中"としてこき下ろすのではなく、中国の行動原理は何か?中華思想とは?という歴史的な変遷から考えている。中華思想や儒教をよく知らずに、中国と向き合うのはあまりに幼稚だと自戒の念も込めて私は思う。

  • 日本人の「嫌中国論」は日本頽落の証。中国が日本と違うから嫌いと言うのは言っても仕方のない話。相手は14億もの国民のいる国。そもそも日本とは違う国。冷静に考えれば中国がこの先、今の日本ほどに政治的・経済的に安定した国になることは困難。中国の統治者は失敗したら共産党独裁の瓦解を招くという背水の陣にあり、残忍なほど冷徹にならざるを得ない。日本は失敗してもせいぜい政権交代と、負けしろが広い。日本には復元力があるが、中国にはそれがない。巨大国家の中国は統治に苦しんでいる。

  • 中国の事情について自分なりに腹落ちした。あってるかどうかはわからないけど。
    極東は軽く仲悪いくらいがアメリカとロシアにとってパワーバランス的にちょうどよい。
    各国は自国内をまとめるためにナショナリズムを利用していて、現状、軽く仲悪いくらいでおさまっている。
    ということになるかなあ。現状維持ってむずかしいと思うけど、それができれば最善ということかしら。

  • 中国を理解するときに大切なポイントは、中華思想の基底にある華夷秩序の考え方を知ることでしょう。それを知ると、中国の外交戦略に言えることは、「国境線を画定する」という振る舞いそのものに対して激しいアレルギーを持つ、ということが分かります。内田氏のおっしゃるように曖昧なままやり過ごせれば良いのでしょうが、最近の日中両政府の言動からはうまく収まるとも思えません。特に、近々安倍首相が戦後70年にあわせて「安倍談話」を国内外に発表するのですが、どうも一悶着起こりそうな予感がします。世界中至る所で、ぎくしゃくです。

  • 2011年3月3日 初、カバスレ、帯付。
    2014年3月12日、津BF

  • あえて国境を定めようとしない中華思想と国境を定めようとする周辺国。あえて今のままでいいじゃんと棚上げする中国と今決めようとする周辺国。そういった前提に立つと色々なことがふに落ちた。今後、日中間で起きることをこの本に書いてある考えで捉えて考えるのも面白いと感じた。

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著者プロフィール

1950年東京都生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学博士課程中退。神戸女学院大学文学部総合文化学科を2011年3月に退官。同大学名誉教授。専門は、フランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に『サル化する世界』(文藝春秋、2020)、『困難な成熟』(文庫版、夜間飛行、2017)、他多数

「2020年 『談 no.118』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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