善き書店員

著者 :
  • ミシマ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908465

作品紹介・あらすじ

6人の書店員にじっくり聞き、探った。この時代において「善く」働くとはなにか?500人超のインタビューをしてきた著者が見つけた、普通に働く人たちが大事にする「善さ」――。「肉声が聞こえてくる」、新たなノンフィクションの誕生。

この時代において「善く」働くとはなにか?
500人超のインタビューをしてきた著者が、現役書店員6名へのロングインタビューを敢行。
その肉声の中から探し、見つけ、考えた、体を動かし普通に働く人たちが大事にするようになる「善さ」とは――。
「肉声が聞こえてくる」、新たなノンフィクションの誕生。

話をうかがいはじめたら……すぐに、ああ、こういうゴツゴツとした手ざわりのある体験そのものを聞きたかったんだよなという手応えがあった。この分野ならずとも多かれ少なかれ抱えているものに、「書店員」という職業を通してさわっている気がした。いまの働く日本人にとって「これはあなたの悩みや思いでもあるかもしれないですよ」といいたくなるような声がたくさん聞こえてきて取材に夢中になったのである。――最終章「普通の人に、『長く』話を聞いて記録するということ」(書き下ろし)より。

感想・レビュー・書評

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  • 書店員さんのロングインタビュー集。
    「善き」という二字から書店員という仕事の善し悪しを考察する本かと思ったけれど、そういうわけではなかった。
    語り手である書店員さんの話も主題が仕事の善し悪しということはなくて、書店員としての自分のことや日々の仕事のこと、日々考える(考えてしまう)こと、目指していること等、多岐に渡っている印象だった。

    私自身は書店で働いているわけでもなく、書店員としてのhow to本を読んでも仕方がない。
    (それでもそういう本があったら読んでしまいそうだけど)
    この本は客という立場では聞くことの出来ない書店員さんの本音が収録されている。
    また「仕事」のとらえ方という点では自分との比較も出来、共感するところも少なくなかった。
    どんなに本好きでも、日々のルーチンや売り上げの推移やらを全て楽しめるわけではなく、好きなことだからこそ仕事としてどう処理していくかが難しいこともあるんだろうな。
    私は好きなこととは全く異なる仕事をしているけれど、それはそれでまたいろいろ思うところもあり、本に関わる仕事が羨ましいなんて想いもあるわけで…。

    それでも各々出来ることをやるしかないんじゃないかと。
    気が抜ける話だけど、それが今回の結論。
    この本で語られている書店員さんのお考えはとても素晴らしいと思うので、書店の客の一人としてとても嬉しかった。
    私は大好きな書店に客として関われることを喜ぼうと思う。
    そして、書店員さんの姿勢も学びつつ自分が担っている仕事を真面目にやっていこう。
    私でないといけない仕事だとは思わないけれど、必要のない仕事とも思わない。
    私は私の場所で出来ることをする。
    そうすることで、実はこの本に書いてあることとも繋がっているのだと思うから。

  • この時代において「善く」働くとはなにか?
    500人超のインタビューをしてきた著者が、現役書店員6名へのロングインタビューを敢行。
    その肉声の中から探し、見つけ、考えた、体を動かし普通に働く人たちが大事にするようになる「善さ」とは――。
    「肉声が聞こえてくる」、新たなノンフィクションの誕生。

    10年前の書店員の貴重な証言集。

  • 表紙がそのままリード文になっている。それをを読むと、この本の狙いやらはわかると思う。

    「善き」という言葉には、微妙な響きがある。もちろん優秀ではない店員は登場しない。けれども、カリスマ書店員とも違う。中には業界内でとっても有名でそれに似た人もいるのかもしれないが、ロングインタビューを経て浮かび上がるのは、目立った成功例とそれに至る過程ではなくて、「何のために働いているのか」「働いて得たものは何か」という、極めて普通の労働者の「善き想い」だった。

    私は昔、流通関係に勤めたことがあって、彼ら彼女たちの云う「棚をつくる」というのも「どう品揃えを充実させるか」「商品をおすすめするか」ということとよく似ていていると思った。むしろ、あまりにも既視感があってびっくりするほどだった。

    だから、彼らの仕事へのプライドもよくわかる。小山さんなんかは客観的にはブラック企業並の働き方をしているが、それでもこういう働き方は私の上司に居たと思う。

    しかし、書店員さんたちは流通業界の労働者よりも遥かに厳しい労働環境に居ると感じた。この本が出版されたのは3年前だけど、その間にも恵文社の堀部さんは「ぼくは独立するつもりはない」といいながらも、今年独立したし、ジュンク堂の佐藤さんは、仙台ロフト店がなくったせいもあるのか辞めているようだ。私の確認しただけでもそれだけ環境が変わった人が出てくる。だからこそ、好きでなければやっていられない仕事なのだろう。

    1991年の大店法の規制緩和で、郊外に何百坪という大きな店ができて行き、10年後にブックオフやアマゾンが台頭、コンビニも増えて雑誌の販売が本屋では難しくなる。本屋の冬の時代は今も続いているが、恵文社や長崎書店のような小さい所の生き残りへの苦労、ジュンク堂、東京堂書店のような大手の中の労働者としての淘汰、高頭さんのような青山ブックセンターやときわ書房のような閉店する店を渡り歩く運命を持った人もいる。それでもインタビューから浮かび上がるのは「善き書店員」の姿なのだと云う事が、この本の最大の特徴である。

    私は、商品を売る喜びや、利用者とのコミニュケーションを持つことの喜びを遂には持つことが出来ない(出来なくなった)と判断して、あの仕事から永久に去った。

    だから、彼らの仕事はホントにたいへんなのだけど、何処か羨ましいという気持ちが湧いて仕方ない。

    2016年10月16日読了

  • 装丁が美しい(でも最近の流行りでややおなかいっぱい)、「善き」っていうタイトルがあてはまるようなあてはまらないような。「善き」じゃない気がする。じゃあなんだろうって言われても提案できないんだけど…

    内容は胸がキュンとするくらい良かった。自分の仕事と似ているからだけではない。それぞれの店員の想いが伝わってきて、書店にたずねてみたくなった。

  • 非常に興味深かった。
    ロングインタビュー。
    インタビューっといっても質問者の存在は透明フィルターのようで、読んでる私が、目の前でその人が語っているような感覚。
    とても読みやすかった。
    逆に、あとがき、になるのかな?インタビュアーの著者の方が語られてる方が読みにくい、とゆーか、ちょっと読むの疲れる感じがした。
    インタビューの部分が読みやすかった分、そのへんの差がなんかおもしろかった。

    善き、書店員、かあ。
    そーゆー意味なら、きっとあっちこっちに善き、人はいっぱいいるんだろうな、って思う。例えば、いつもよるコンビニに、月イチ通ってるパン屋さんに、休みたんびにお邪魔する図書館に。

    返品作業が、ねえ。とか、文庫のみっちりつまった段ボール箱の重さだとか。フェアだとか、棚替えだとか、思いつくことはあるんだけど、
    なんかしらないけど一日が終わっちゃったりして、だとか。
    給料は低いし、業界的にも将来的に、どうなるか不安だし、でもやっぱ、日々本を触って、関わって働いていられるってことが好きで・・・・。
    とゆーあらゆる気持ちに、そう、そうなんだよねえっと深くふっかーーっく同意。

    書店員、だけじゃなくて、その周辺の、
    たとえば問屋さんだとか、出版社の営業さんだとか、
    毎日荷物を運んでくる運送業者さんだとか、印刷業の人だとか、そーゆーひとたちの、こーゆーお話も聞いてみたいなあっと、しみじみ思った。

  • 2012年辺りの日本の都市の書店員の方々のインタビュー集

    8章にインタビューアーである著者のこの本の狙いが書かれているけど、今までにありそうでなかった種類の本。

    書店の状況や一般市民の人生観を切り取って残されていて、
    とても良質のドキュメンタリー作品を映像でなく、文章で表現したような感じ。

  • 本屋以上に書店員さんの方が“絶滅危機種”だよなぁ、とため息混じりで読んだ。

    『善きレコ屋店員』も希望(誰か作りませんか?)

    ここでインタビューされた書店員さんはみな“普通の人”なんだろうけれど、共通する閉塞感もまた今の日本の普通の空気なのだろう。

  • 書店員の生の声、リアルな働く人の声が詰まっていた。みんな必死。毎日一生懸命考えてもがきながら仕事してる。そういう飾らない本当の日常の部分がすごく伝わってきて、熱くなった。自分はまだまだだけど、ベテランの人でさえ毎日必死なんだから、私も日々もがきながらもコツコツ積み重ねていこうと思う。書店員っておもしろい。

  • 書店員の仕事は憧れるが、どう考えても労働と賃金が伴わない。広く知られている事だけれども本の出し入れ、返品業務が仕事の大半を占め、本だけに重い為腰を痛める人も多い。正社員になる事は望めない上に期待値は高いというどうにもやりきれない事ばかりです。
    この本で語る書店員さん達はその世界ではある程度名の知られた人だと思いますが、基本的に保証がなくて不安の中仕事している事が良く分かります。それでもこの本を読むと本を扱って仕事する事の喜びが伝わってくるんですね。なので読み終わっても本屋やってみたい気持ちが無くなる事はありませんでした。やらないけどね。
    最後に著者が語る章があまりにもだるくて、俺いい事言うから聞いて!という雰囲気ムンムンで興をそがれました。それさえなければ僕の中でもう少し評価が上がった事であろうと思います。

  • 仕事について悩んでいるときに読んだということと、学生のときに書店でアルバイトをしていたということもあって、いろんな感情を持ちながら読んだ。
    印象に残ったり、共感できる話が多かったり、人の気持ちが伝わってくるような文章で、とても好きな本。

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著者プロフィール

明治大学公共政策大学院教授
東京大学法学部卒業。一橋大学博士(法学)
行政法及び地方行政論を専攻。総務省に入省し,内閣官房参事官(国民保護法担当),総務省大臣官房参事官(財政担当),一橋大学教授等を経て,現在に至る。

「2023年 『パンデミックと行政法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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