映画を撮りながら考えたこと

著者 :
  • ミシマ社
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908762

作品紹介・あらすじ

『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』『海よりもまだ深く』…

全作品を振り返り、探った、
「この時代に表現しつづける」
その方法と技術、困難、そして可能性。

構想8年の決定版

感想・レビュー・書評

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  • レビュー『映画を撮りながら考えたこと』(是枝裕和)
    ここ数年映画を観るようになった自分ではあるけど、本当に、「観る側の世界の広さによって見えてくるその映画の世界の広さも違ってくるのだなぁ」ということを考えさせられることが多くなってなかで、手にとった一冊。
    この本を読む(‘読む’という感覚じゃなくて、是枝監督が上映し終えた映画のスクリーンの前で語っているのを聴いていたという感じのほうが適切かもしれない)ことによって、映像の作り手側の姿に触れることができた、きっとこれから映画を観るときは、無意識のうちに作り手側の想いや意志を感じる感性が疼いてくれることだろう。

    さて、もう少し具体的にこの本で印象に残ったことを挙げておこうと思う。まずは‘日本の映画産業’を‘世界の映画文化’との比較のなかで見つめていた箇所、しかもそれを映画監督の目を通して眺められたこと。世界各都市で開催されている‘映画祭’、今までは、何となく映画作品の箔をつけるためのイベントくらいにしかとらえていなかったけど、世界各都市のマイナーなものから、メジャーなものまで多くの映画祭を巡ってきた監督の経験から、眺めた‘日本という国が映画に向き合う姿’が、時間軸でいうものすごく近いところ、文化の深度でいうと本当に浅いところに置かれているように語っていた。
    是枝監督が巡って眺めた各都市での映画ファンとの触れ合いや映画関係者を受け入れる街の人々のもてなしのここち良さは読んでいる私にも伝わってきた。

    そして「悪いのはみんな萩本欽一である」という強烈な番組タイトルで、テレビ番組の制作経験と、その可能性を語った箇所は、
    「欽ちゃんはそんなことをしでかしていたのか」という驚きと、「そういう見方をすれば確かに欽ちゃんはテレビを素人化し、「芸がなくても出られらる場所」に変えてしまったという、エンターテイメントとしてのテレビ変遷の謎解きをしてくれる。

    是枝監督が制作した、ドキュメンタリー、テレビ番組、映画を時系列に並べ、制作のエピソードを添えながら、映画の面白さ、可能性を‘作り手’の側から語る後半部分。それらをとおして、もう一度観てみようと思った映画は
    『歩いても、歩いても』(安倍寛)
    『奇跡』(前田前田)
    『海よりもまだ深く』(安倍寛)

    まだ観ていないのだが是非観たいのが
    『幻の光』(江角マキコ のデビュー作)
    『DISTANCE』(伊勢谷友介)

  • 大好きな是枝監督が映画を撮りながら考えていたことの本。途中まで読んで、全部読むのがもったいなくて寝かしていたけれど、樹木希林さんが亡くなり、改めて手にとった。

    最初に是枝監督の映画を見たのは2008年「歩いても歩いても」。何で見ようと思ったのか思い出せなかったけど、きっとこのコピー「人生はいつもちょっとだけ間に合わない」。これが出会い。

    ・音楽や美術や映画や本や教養(中略)、世界はそういう小さなことの積み重ねで成り立っている
    ・被害者の家族の誰もが加害者を呪っているわけではない。人間の感情はそれほどまでに複雑で、多様性に満ちている。
    ・意味のある死より、意味のない豊かな生を発見する。


    改めてまた作品を見てみようと思う。
    2018.11

  •  本屋さんを探しまわるもなかなか目にすることが出来ず、図書館にリクエストしてようやく読むことが出来た。
    分厚く値段もそこそこする単行本だけれど、それだけの価値がある本だと思った。借りていることも忘れて何度か線を引きたくなったくらい、心に刺さる言葉がたくさん。
    一度読んで読んだ、おしまい、にできない本。
    そのあたりが、是枝監督の映像作品と同じだと思った。
    何度も何度も読み返したくなる。
    もう一遍観たくなる。観なきゃいけない気がしてくる。

     自身の監督作品のことを軸に、テレビや映画の世界のこと、映画祭のこと・・・。特に映画祭についてとテレビ論は、監督の作品を観ていない人が読んでも、とても面白いと思う。
    この本をより楽しむためには、やはり是枝監督の作品をたくさん観て知っておく方が良いのだけれど、残念ながら私は、映画の初期の頃の数作と、最近の数作しか観ていない。ここに載っている全ての作品を観たいと思っていて、その上でまたこの本を手にしたい。映画は観られるだろうけれど、ドキュメンタリー番組はどうなんだろうか。

     私は映画を観るのが好きだけれど、映画を語ることは得意ではない。でも、もっと映画を観る視点を広げて掘り下げられるように、そしてそれを自分の言葉に出来て、うまく人に伝えることが出来るようになりたいな、とこの本を読んでいる間中、猛烈に思った。

  • 映画「そして父になる」で、福山雅治に対して、リリーフランキーが怒り、福山を叩こうとするシーン。リリーフランキーの叩き方が、その役の人生を浮かび上がらせる最高の演技になっていた。ずっとこの演出が、是枝監督のものかリリーフランキーのものか、気になっていたがようやくこの本で謎が解けた。

  • 映画作家の記したものとしてはおそらく完璧なのではなかろうか。作家性と社会、経済と視点や立場を変えて、映画にまつわる総体として欠けるところがない。
    作家としてのパーソナルな葛藤、技術論、心情、そしてスタッフ、役者はもとより社会や世界にまでつながる人間への意思と行動。さらにはテレビはじめマスコミ論やドキュメンタリーとジャーナリズム、果ては世界の映画祭の現状やビジネスに至るまで。本当に映画と映画製作と、世界を愛しているのだなあ。
    なにより文章が巧い。絵が巧い映画作家と文章が巧いのとがいるように思う。自分としては文章が巧い作家が肌に合う。

  • 【最終レビュー】

    予約著書・図書館貸出。

    『NHK地上波「クローズアップ現代」是枝裕和監督×ケン・ローチ監督対談』

    チェック以降、本格的に続きを読み進め、本日、既読したばかり。

    時代の流れを見据えながら、一作、一作、試行錯誤の連続。

    監督自身の環境が変化していく中においても

    数々の世界の映画祭の生々しい空気感を通して、実りある収穫を得ていく。

    着飾らない作風をベースにしながらも

    クオリティーの高い、観客に対する視点を上げるための

    『意識化・想像力・記憶』を介しての

    『内面に問いかける作風=様々なディテール』

    流石である。

    ただ、今の邦画に対しては、危機感を噛みしめていること。

    このことにおいても、監督自身、本質的な想いを丁寧に綴っている。

    『このままでは、邦画は崩壊する』

    以前、監督自身があるインタビューで語っていた。

    [ライフスタイルの多様化にも関わらず『逆行している風潮』]

    その背景に関することも綴られている。

    なかなか、表沙汰には伺いしれない

    『的を得たメッセージのの数々…』

    『作品のひとつひとつに対しての率直な想い』

    を掘り起こしながら

    [映画は、突き詰めれば、深い深い世界観に満ちている文化の一つ]

    そういった想いに、ただただ、ヒシヒシと実感するのみであった。

  • 少し前から気になっていた「是枝監督のあたまんなか」。しばらくの間読みたいリストに置かれていた本書を帰省をきっかけに久々に大きな本をえいっと手にしてみた。

    普段映画を観る前にはできるだけ事前情報をえないようにするのが自分の信条であるがゆえに未鑑賞作品のタイトルが出だす頁では若干躊躇するも、パーキングブレーキをかけるには至らずそのまま読み進めていくことになった…というか止まれなかった。

    既鑑賞作品は「ワンダフルライフ」「歩いても 歩いても」「そして父になる」「万引き家族」の4本止まり。でもそれらの作品を通して気になり始めたのが一体この監督がどうしたことに思いを馳せ、こうした作品を世に送り出すことにしたのか(もしくはなったのか)、その動機やあるとするならその紆余曲折の過程を知ってみたいというぼんやりとした願いであり、そうしたものがあったからこそ実際に本書を手にする日を楽しみにしていたのではあるが、ただ前述の他愛のない信条が故に遅々として増えてゆかない観賞歴が邪魔をして結局今までかかってしまった。

    ただ結果は…。

    上々…どころか明朗快活、気分爽快。自分自身の言語能力のはるか上でもってきちんと説明されていくその作品が生まれることの発端と過程の様子。あたまの中で「それそれ!自分も日々抱えていた感情は‼」となんども唱えながらよくぞきちんと説明してくれたと言わんばかりの賛称を送りながら一気に読み進めることになった。

    奇しくもつい先日Japan Societyでの映画祭Japan Cutsを通して是枝監督の愛弟子の一人であるという広瀬奈々子監督の初監督作品の上映に(しかもご本人登壇のQ&Aセッションつきの機会に)触れることができ、それゆえ本書で是枝監督が言及する「後に続く世代へのドアの開け方」といったような話題についてもあいづちを打ちながら読み進めることができたのは幸運だった。

    幸い来月には「誰も知らない」を劇場で鑑賞する機会が得られそうで、素晴らしき前夜祭となった。残りの作品もとっとと制覇し、また本書に戻ってこよう。

  • 『万引き家族』を再見したいと思い(そして、『幻の光』を観たこともあって)、再読する。是枝裕和という人はブレていない。謙虚で真面目。悪く言えば「俺が俺が」というエゴがない。作品を作るにあたってどんな先輩から――主に映画畑のみならず、テレビ畑から――学び、なにを具体的に考えて作品を作っていったかが、丹念に記されている。読み応えがある。人柄もあるのだろうが、「是枝ワールド」というものを作らず常に自己解体を試みる姿勢は立派。悪く言えばその野心が失敗作を生むところもある?(個人的には『三度目の殺人』がそうだと思う)

  • とにかく是枝裕和監督は自分の考え、感覚を大切にしている素晴らしい映画監督だとよく分かります
    読み終えると彼の作品がとにかく観たくなります笑

  • 世界的映画監督の書いたエッセイ。

    難しい映画論ではなく、どういったことを考えながら作品を生み出してきたかがわかりやすく、書かれています。

    技術論や裏話もさることながら、いかに映画を愛しているかという思いが伝わってきました。

    これほどの情熱をかけて、作品を作るという行為をしてみたい。

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著者プロフィール

是枝 裕和(これえだ ひろかず)
1962年、東京都生まれの映画監督。演出家、早稲田大学理工学術院教授。1987年に番組制作会社テレビマンユニオンに入社、テレビのアシスタントディレクターを務め、ドキュメンタリー番組の演出に関わる。1995年『幻の光』で映画監督デビュー。
その後多くの映画作品を撮り、ジャンルを問わず様々な演出、そして若手育成に関わってきた。若き西川美和を見出したことでも知られる。
代表作『誰も知らない』で第57回カンヌ国際映画祭にて柳楽優弥が最優秀男優賞、『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞をそれぞれ受賞。ほか、『歩いても 歩いても』『海街diary』『三度目の殺人』が代表作。そして2018年6月公開の『万引き家族』が世界三大映画祭のひとつ、カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞。
書籍の刊行も多い。書籍代表作に『映画を撮りながら考えたこと』。

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