となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 478
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908786

作品紹介・あらすじ

仲良くやっていきましょう。

テロ、戦争を起こさないために―
大勢のイスラム教徒と共存するために――

現代イスラム地域を30年以上見つめつづけてきた研究者である著者が、いま、なぜ「こんなこと」になっているのか? を解説。
「一夫多妻制って?」などの日常的な話題から、「イスラム国」がなぜ生まれたか、といった世界情勢の見方や「テロを本当になくすために必要なこと」まで、抜群のわかりやすさで綴る、現代必読の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • イスラム=怖い・テロなど考えている人に読んで欲しい
    イスラム啓蒙書として最適な本書『となりのイスラーム』
    著者曰くイスラム(ムスリム)とは①人間が一番えらいと思わない人 ②人と人のあいだに線引きしない人 ③弱い立場の人を助けずにはいられない人 ④神の定めたルールの下では存分に人生をエンジョイする人 ⑤死後の来世を信じ楽園に入れてもらえるように善行を積もうとする人 だそう。
    西欧諸国でのムスリムや西欧のリベラル・世俗主義の記述がとても興味深い内容であった。

    フランスでは『世俗』が国の理念として掲げているのは周知の事実だ。その為、ムスリム女性が顔をすっぽりと覆い隠すタイプのスカーフを公共の場で着用した場合には、罰則を受けるという。イスラムの教えには女性が、髪やうなじ、顔を隠すといった事が『コーラン』に記されている。
    著者はこの事からフランスがムスリム女性への対応はセクハラ行為に当たるのではないかと指摘する。

    当然のことだが、どの国や民族にも善人・悪人は存在する。しかし、真実の姿を見ないでイスラム=悪 と簡単にまとめてしまう事が悪なのである。

    本書は前述の通り良書なのだが、著者は少しイスラムに傾いていると感じたので☆☆☆☆。

  • イスラム教とはどういう宗教なのか、なぜ過激派組織がうまれるのか、なぜこの悲惨な状況の中で神を信じることができるのか、それらのことを知って少しでも理解できれば、イスラム教徒に対する過剰な恐怖心や不安感を消せるんじゃないかと思い、この本を手に取りました。

    この本には、フランスは「ブルカは遅れている。世俗主義に反しているからブルカを禁止する。普段ミニスカートを履かない女性に履けと強要するのと同じ事。セクハラを働いているようなものだ」というようなことが書かれています。その一面もあるのでしょうけど、フランスその他のヨーロッパ諸国からすれば、「テロが多発している今、ブルカの中に爆発物や銃を隠し持ったりさせないためにブルカを禁止する」という面もあることを、この著者が知らないとは思えません。

    徹底的にイスラム側から見た意見であり、公平性にかけると思うけれど、イスラム教を知るにはよい本だと思いました。

    この本を読み終わった翌朝、イギリスのニュース番組で「難民は寄生虫を持っている可能性があるから受け入れるべきではない。財政的に国を支援して、自国で解決させるべきだ」というような主旨の話をしていて、憤りを覚えました。もちろん、難民問題が深刻な状況にあることはわかっていますが、それにしてもなんて何という言い方をするのだと。

    西欧諸国のイスラムに対する根深い蔑みの意識が、現在のこの状況に関わっていることを受け止め、弾圧するのではなく、信仰を認め、イスラム教徒の居場所を奪わず共存していく道に進んでいかない限り、たとえIS(イスラム国)が滅びたとしてもまた同じような組織ができ、テロが起きてしまうだろうと思います。

    何の罪もない、助け合いの精神に溢れたイスラム教徒が、穏やかに暮らしていける日がいつか来るでしょうか。アメリカの大統領選を見ていても、アレッポすら知らない候補者がいることに唖然とします。日本が何をすべきなのか、もっと議論をしていかなければ、日本の平和も長くは続かないだろうと感じました。

  • ひとを肩書などの色眼鏡で見ず、女性や子どもなど弱い立場の者を助けたり、来世を信じて善行を積もうとする面倒見のいい人たち。それがイスラム教徒らしい。

    ISISの言動は常軌を逸してるし、なぜ神に命を捧げられるのかわからない。イスラム教って謎に満ちてると思いませんか。本書を読むまで、私はまさにそんな感じでした。

    でも読んだら目からウロコ。美容院のお姉さんがイスラム圏でのひとり旅で信じられないほど親切にしてもらったと言っていてとても不思議だったのですが、その理由がわかりました。イスラム教徒が悪いのではない、イスラム国がおかしいのだと。

    報道されない事実、偏ったマスメディア。国家が戦争を生むことで、たくさんの罪なき人たちが命を失っていく。いつ世界が壊れてもおかしくないこの時代だからこそ、お互いを認め合うことに解決の道がある。権力や暴力に依存しない世界。そんな未来を世界の人すべてが目指していけますように。

  • イスラム教徒は怖いという間違った観念を持っていました。これだけ色々な本を読んでいてもそういう印象を持ってしまうのですから、世間一般の意識もそんなものではないかと思います。
    昨今のイスラム教を取り巻く状況は、どんどん状況悪くなっています。テロや殺人を簡単に引き起こしてしまう人々という印象が強くなる一方です。

    ところがこの本を読むと、イスラム信者がこういう事件を引き起こす訳がないという印象を持ちます。大多数のイスラム信者の人々は、善行を積むことによって天国へ行くことが出来るので、弱い人、困っている人が有ると善行を積むチャンスとして、競うように助けてくれるようです。難しくなりがちな民族、宗教問題を親しみやすく書いてくれているので、急激にイスラム教徒の人達に親しみを感じてきました。

    翻って何故世界中でイスラム教徒が関与したと言われるテロが頻発しているのかも書かれています。人の命を奪う事は許されない事ですが、西欧諸国が過去から現代まで、彼らを追い詰め生活圏をめっちゃくちゃにして来たこともまた事実。この歪みをどうやって戻して行けばいいのでしょうね。

  • 小さな解釈の違いが積み重なると全く違うものになってしまう。
    きちんとお互いの文化や歴史、宗教の意味を理解しあい、受け容れあう必要がある。
    価値観が真逆だから武力で争い抑えつけるのは間違っている。

    イスラムだけでなく、個々人の間でもお互いの価値観を認め合い相手の考えを想像せず、一方的におしつけてしまう事でいじめや不正行為などが起きる。

    まずは皆んなが知る必要があると思う。

  • 2017/7/10読了

    イスラムについて、私はずいぶん、色眼鏡でみていた。考え方は素晴らしいじゃない。また、細かくいろいろ定まっていること、神様に全部ゆだねるから人間は自由でいられるという考え方。羨ましい。日本人、無宗教なんだから、こういう良い考え方だけ取り入れれば良いじゃない。

    イスラムについて、(あとがき より)
    1.人間が一番えらいと思わない人
    2.人と人との間に線引きをしない人
    3.弱い立場の人を助けずにはいられない人
    4.神の定めたルールの下では存分に生活をエンジョイする人
    5.死後の来世を信じて、楽園(天国)に入れてもらえるように善行を積もうとする人

  • どこで見つけたのか忘れたけど…。
    読んでよかったです。
    この先、イスラム教の人に出会うかわからなけど。

  • 副題~世界の3人に1人がイスラム教になる時代~~①人間が一番えらいと思わない人、②人と人のあいだに線引きをしない人、③弱い立場の人を助けずにはいられない人、④神の定めたルールの下では存分に生活をエンジョイする人、⑤死後の来世を信じて、楽園(天国)に入れてもらえるように善行を積もうとする人。それがムスリムだ…と。オランダは極端な個人主義で、社会生活を基本とするムスリムを排撃する。フランスは自由・平等・博愛の進歩を受け入れないムスリムを目の敵にする。ドイツは民族主義的な考え方から抜け出せずにいる。イスラム国を生んだのはヨーロッパの不寛容だが、なにより悪いのは難民を生み出したイスラム教国の方にある。そもそも国民国家という枠でイスラム教徒を括ることはできず、カリフ制度の復活を望む~良い本だ! 自分が非イスラムであるという自覚の許で、わかりやすく納得させる。1956年生まれ東大卒、同志社大大学院教授でトルコに家を持つ

  • イスラム教徒はどうしてそういう考え方をするのか、ということが少しわかるようになった気がする。
    「イスラム」とは唯一絶対の神アッラーに従うことだが、欧米では「神に絶対的に服する」からイスラムは人間の主体性というものを認めない、理性というものを認めない宗教だろうと思いこむ。著者はこれは欧米の誤解のひとつであると言う(p.57)
    この世のすべてのことを神にゆだねるのだから物事の結果をすべて神様に丸投げしている。そういう意味で気楽な宗教なのだ。そもそもそういう楽な面がないとイスラム教徒が増えるわけがない(p.58)…なるほど、と思う

    「アラビアのロレンス」でロレンスが案内人の男と旅をしていて井戸の水を飲んだところで、その井戸の持ち主が案内人の男を撃ち殺す場面。こういうシーンがいまだに続く西洋のイスラムイメージを作り上げたと言う。
    「沙漠といういわば大海で会った相手に対して、オレのテリトリーに入ってきたな、撃ち殺すぞ、というのはまったくの見当違いの理解であるということは知っておいていただきたい。ここは自分の土地だというのは農耕民の発想です。」(p.64)
    ーなるほど。確かにイスラム圏を旅していて、イスラム教徒の人達がとても親切であることは何度も感じてきたことだ。

    このほか、ハラール認証のおかしさについての説ももっともだと思ったし、イスラム国が出現してきた経緯についてもなるほどと思うところがあった。

    イスラムの規範と近代西欧に生まれた規範のあいだには根本的な違いがある。
    「西欧諸国がイスラム世界を啓蒙するのだと言い張り、一方のイスラム世界は、その啓蒙を拒む。結果、テロリストが増えるだけ…。これは、思考の体系が異なるのに、一方をごりごりと相手に押しつければ、相手が変わるだろうというありえない思い込みによるものです。この不毛な連鎖を断ち切らなくてはいけません。」(p.223)
    -確かに、まず相手のことをもっとよく知ろうとすることが必要だと思う。

  • いい本だと思う。よく知らないし、知ろうともしないイスラム教徒の人間像とイスラム社会を、大学院教授がわかりやすく説明している。理由もなく毛嫌いして、これ以上イスラム世界との関係をとげとげしいものにしないことを目的にしている著者の思いが溢れている。欧州でイスラム教徒の立場が悪くなっている背景が、それぞれの国で違うことも興味深い。

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著者プロフィール

同志社大学大学院グローバルスタディーズ研究科長・教授。1956年東京都生まれ。1979年東京大学教養学部科学史・科学哲学分科卒業。東京大学大学院理学系研究科地理学専門課程(修士課程)修了。東京大学助手、一橋大学大学院教授などを経て、現在に至る。専門は、現代イスラーム地域研究。著書に『となりのイスラムー世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代』(2016年/ミシマ社)、『イスラームから世界を見る』(2012年、ちくまプリマー新書)など多数。

「2018年 『地図・写真・データで見る 中東の国々内藤正典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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