唱歌の社会史: なつかしさとあやうさと

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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904678589

作品紹介・あらすじ

「唱歌」という、今までにはあまり類のない視点から読み解く日本近現代史。
ひろく愛唱されている文部省唱歌の数々には、近代国家としての「日本」および「日本人」をつくっていくという隠された目的がありました。
明治維新までは、ほとんどの日本人は「日本」「日本人」という自意識のないままに生きてきました。富国強兵策、植民地主義の中で、日本政府は、「日本人」という意識を国民に持たせる政策をとります。それが、国語読本、修身、であり、音楽=唱歌教育でした。
本書は、2015年におこなわれたシンポジウムをもとに、新規書き下ろし原稿を加えました。
今も人々に愛唱されている唱歌の数々を例示しながら、唱歌の成り立ち、植民地政策のなかで歌われた歌詞、戦後の占領政策のなかで黒塗りされた軍国的な歌詞、また官製の唱歌に対抗した「童謡」などをいとぐちに、国文学、社会学、法制史学、また詩人の立場から、近代日本の社会史を広くみていきます。
唱歌の愛好者はもとより、音楽教育、歴史教育の実践者、また、研究者にもおすすめいたします。
取り上げる唱歌は、「庭の千草」「故郷」「我は海の子」「早春賦」「蛍(蛍の光)」「あおげば尊し」「春の小川」「霞か雲か」「夏は来ぬ」「朧月夜」「浜辺の歌」「兵隊さん」「故郷を離るる歌」「里の秋」「故郷の廃家」「鉄道唱歌」ほか。

感想・レビュー・書評

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  • 唱歌が最後まで歌われないものの中で、蛍の光や我は海の子などがある。そこでは国土拡張や兵隊となることが児童生徒の目標であるということを鼓舞したものであることが戦後になくなっている。
     教員養成系大学の学生が小学校の教師となった場合に、歌を指導することがあるので、こうした来歴は知っておくべきものである。

  • 必要に迫られて購入した。小さな本だが、素晴らしい唱歌研究の入門書である。「蛍の光」など、唱歌の歌詞をめぐってなされた考察が、ナショナリズムなどの政治的議論へと発展する。最近はやたらと大風呂敷を広げる研究が多いが、小さな入口から入って、思わぬ大きな世界へとつながっていくスリリングな論考は、自らの研究のお手本としたい。

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著者プロフィール

京都産業大学現代社会学研究科教授、同ダイバーシティ推進室長

「2022年 『マスキュリニティーズ 男性性の社会科学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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