- Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904702116
作品紹介・あらすじ
原型的イメージ探索の記録。
「自然史」とは「ナチュラルヒストリー」を意味している。
それは、「自然誌」「博物誌」「博物学」でもあり、分類学的な博物誌と系統学的自然史のあわいを揺れ動きながら、原型的イメージを図鑑のように編み、それが変容してゆく過程を歴史のなかにたどる。
『UP』 (東京大学出版会) の好評連載「イメージの記憶」を中心に、 『10+1』 連載「都市表象分析」の最後の3回分も収録。
本書には、前著『政治の美学――権力と表象』にいたるまでの著作のエッセンスが凝縮されており、田中純の思索を繙く最良の手引書となっている。
感想・レビュー・書評
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シンボル
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歴史の積層のなかから白く輝く骨を発掘すること。或いはさざ波に洗われる波打ち際で貝殻を拾い集めること。そして、その骨と貝殻の形態上の類縁関係やアレゴリカルな布置を析出すること。
ここに召喚されたあまたのイメージは著者の手によって相互に参照されるネットワークを形成し、個々の論考で取り扱われたイメージはそのネットワークを介して別のイメージへと揺曳する。
ネットワークの結節点にあたるものは、〈進化〉であり、〈情念〉であり、〈写真〉であり、〈都市〉であって、この多様な主題系を手繰り、拾い上げて発掘し、新たな意味を付与する手捌きも、偏に図像学のみならず、文学や哲学、美学に都市論に加え、生物学や科学思想など極めて横断的。そしてさらに、これらは先行する著者の著作の自身による解題ともなっており、難解ではあるが豊穣で刺激に満ちた著者の著作の入門書にもなる。ここには「正しく迷う」(ベンヤミン)ためのレッスンがある。