夢十夜を十夜で (はとり文庫 3)

著者 :
  • 羽鳥書店
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904702307

感想・レビュー・書評

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  • 楽しい。『夢十夜』が好きで買った。人はどれほど恣意的に小説を読むのかということの証左であると同時に、こんなに豊かな読みがあるのかという証左にもなっている。しかも、『夢十夜』が書かれた時代背景を考え合わせ、さらに漱石自身の教養の深さをも考え合わせてみるならば、単なる思いつきすら説得力を持つような、多様な読みが可能になってくる。これはもう、作家ひとりの力ではないような気がしてくる。

  • 抜群のおもしろさ。読んでしあわせ。

  • 一作を精読すると、その過程で、さまざまなことへとつながり、広がっていく、というのの具体例。正直、精神分析学的な読解に関する部分は、もういいよ、って感じにならなくもないけど、ひとつの作品がもつ裾野の広さ、みたいなものを感じた。

  • 文学

  • 漱石の『夢十夜』を10回に分けて精読して行くという講義録。巻末に付録として板書の図版、学生最終レポートを収録。
    『アカデミックな読解』というのはどういうものか、という興味で読み始めたのだが、非常に面白かった。そこに当時の時代性を見ようとする人が多いのは不思議。人がどう小説を読んでいるか? というのを纏めて読む機会はなかなか無いので、そういう意味でも面白い。
    『はとり文庫』、これからちょっと注目してみよう。

  • 2016/02/13

  • タイトルと装丁(国芳の猫!)にやられて、購入。いやはや、心憎い。

    漱石についての知識も読書経験もあまりなく、他の研究書とか批評を読んだことがある訳でもないので良し悪しはわからないし、こういう分析を初めて読んだからこそなのかもしれないけれどもしかし、

    おもっしろかった!!

    最初に夢十夜を読んだときのぼんやりとした不思議さや、捉えどころのなさも味わい深いものであったけれど、こうやって理論的に読み解いていくのもまた、愉しいものでありました。
    止まらず読んだ。
    小説以外でこんなにどっぷり入り込むなんて、久しく無いこと。


    ここまで深読みできるとは、漱石ってすごいな。改めて。

  • 夏目漱石の『夢十夜』この不思議な話を漱石の背景となるイギリス文学、絵画、心理学、象徴、生活ありとあらゆる角度からひもとく高山宏先生。対する学生さん達の解釈も個性的で面白く素晴らしいやりとりであった。知的で深い洞察の応酬も楽しく読み終えたが…いくら深読みしても深読みしてもまだまだ謎が残る。そしてさらに違った解釈ができると思わせる漱石の底知れない実力に震撼とした。

  • 夏目漱石「夢十夜」を大学の「日本表象文化論」という講義で取り上げ、
    第一夜から第十夜まで、
    1講義時間ずつ、精読した論考を纏めた文学研究の書。
    「夢十夜」に漂う仄かな不気味さが、ずっと気にかかっていたのだけど、
    縦横無尽な言葉遊びが横溢しているとか、あるいは、
    漱石と同時代人に当たるフロイトを持ち出して、
    要するに「不気味なもの」でしょ、と解説する条で膝を叩いた。
    この「不気味なもの(unheimlich)」というのは、
    人智を超えた異形の存在ではなく、身近で親しみの持てる自宅や家族など、
    本来、寛ぎをもたらしてくれる事物(heimlich)が、
    何かの拍子に様相を変じた(と、当人に感じられた)瞬間に生じる感覚で、
    例えば第三夜の、自分の子供を背負っているはずが、
    不穏な展開に……というエピソードによく表れている、と。
    他にも愉快な読み解きがバンバン出てきて、
    昔、科学系の本で読んだ「『夢十夜』は漱石が実際に見た夢を述懐していると思われる」
    という学者の指摘が、満更、外れてはいないとしても、
    やはり漱石はそうした素材を元に、
    文明批判を交えて意図的に物語を組み上げたのだろうと考えざるを得なくなる。
    ところで、小説を読むとき、
    行間に滲む作者の意図や背景の情報にリアルタイムで思いを巡らせてしまうと
    気が散るので、
    特に幻想的な物語などは、あまり頭を働かさず、
    イメージの奔流に身を任す主義なのだけど、
    そうして一度読み終えた後、しばらく経ってから手に取り直して、
    今度はじっくりいろいろ考えながら……というのが理想的な読書かと。
    一回読んでどんな話かわかればもういいや、ではなく、
    そんな風に時間をかけて味わいたいと思わされる本に、
    出来るだけ多く出会いたい――と、改めて感じた。

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著者プロフィール

1947年岩手県生まれ。批評家、翻訳家。大妻女子大学名誉教授、副学長。著書に『アリス狩り』(青土社)、『近代文化史入門――超英文学講義』(講談社学術文庫)、『殺す・集める・読む――推理小説特殊講義』(創元ライブラリ)など多数。翻訳書にジョン・フィッシャー『キャロル大魔法館』(河出書房新社)、エリザベス・シューエル『ノンセンスの領域』(白水社)、『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』(共に佐々木マキ画、亜紀書房)など多数。

「2019年 『詳注アリス 完全決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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