いま読む ペロー「昔話」

著者 :
  • 羽鳥書店
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感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904702420

作品紹介・あらすじ

赤ずきんに「赤い」頭巾をかぶせ、猫に「長靴」をはかせた、17世紀フランスの宮廷作家シャルル・ペロー。世界中で読み継がれてきたペローの『昔話』は、もともと大人向けの読み物として貴族の文芸サロンで誕生した。民間伝承と宮廷文化との出会いから生まれた物語の背景をふまえ仏文学者・工藤庸子が新たに訳す。充実の解説付。[主要目次]眠れる森の美女/赤頭巾/青ひげ/猫の大将 または長靴をはいた猫/仙女たち/サンドリヨン または小さなガラスの靴/巻き毛のリケ/親指小僧/訳者解説 ペロー『昔話』と三つの謎

感想・レビュー・書評

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  • ペローという名前で思い出すお話って何でしょうか?
    「長靴をはいた猫」かな? 「青ひげ」かな? それとも「シンデレラ」でしょうか?

    これらのお話は、シャルル・ペローによって書かれた8編からなる『昔話』のものとされています。収録されたそれぞれのお話のタイトルを上げておきますね。

    『眠れる森の美女』
    『赤ずきん』
    『青ひげ』
    『猫の大将または長靴をはいた猫』
    『仙女たち』
    『サンドリヨンまたは小さなガラスの靴』
    『巻き毛のリケ』
    『親指小僧』



    さて、ペローの昔話は、一応「子ども向け」という建前にはなっていますが、読んでみるとなかなか一筋縄ではいかないお話なのです。
    大人になった「いま」、あるいはペローの時代から遠く離れた「いま」、改めてペローの『昔話』を読んでみませんか、というのが本書の趣向です。

    構成は、前半が『昔話』そのもの、後半がそれぞれのお話で章を分けた解説となっています。200ページ強で、さほど厚い本ではありませんが、ちょっとすてきな赤色の紐しおりが2つ付いていて、前半と後半をそれぞれ読み進められるようになっています。前半のお話を1編読んだら、その物語についての後半の解説を読んでもよいですね。なかなか親切設計です。
    行きつ戻りつしているうちに、お話の世界を楽しみつつ、お話が生まれた世界もまた楽しめるようになっているわけです。

    ペローはグリム兄弟よりも前、太陽王ルイ14世の時代の人です。創立されて間もなかったアカデミー・フランセーズの会員であり、詩人でもあり、フランス語の辞書の編纂にも携わった文人です。
    『昔話』はペローが採集した民話が元になってはいますが、ペロー自身が作り替えた部分もかなり多いようです。「子ども向け」の建前を持ちつつも、子どもに向けたとは考えにくいような教訓が付されていたりして、不思議な味わいです。
    解説によれば、どうやらこの時代には、手書きの原稿が文芸サロンで朗読され、雑誌に発表され、さらに手を加えられ、という形で「文学作品」は徐々に形作られていたようです。
    民間伝承に伝わる原初的でときに残酷でもある要素と、宮廷のきらびやかな香りが絶妙に混ぜ合わされたのがこうした物語たちなのかもしれません。
    かっちりと一分の隙もないわけではないけれども、どこか格調も感じられると言いますか。

    今回読んで驚いたのは、『眠りの森の美女』に思わぬ後日談があったことと、『赤ずきん』が「え!?ここで終わるか!?」という場面で終わっていたこと(『赤ずきん』については、グリム兄弟版の方が流布しているため、ペローのものがぷっつり終わっている印象を受けるようですね)。
    『長靴をはいた猫』は、「いやー、こんな綱渡りの戦略、自分なら絶対に立てられない」と再確認。
    『青ひげ』は怖いと同時におもしろい話でした。意外な収穫です。絶体絶命なのに笑ってしまうときってこんな感じかもしれません。
    『巻き毛のリケ』は解説にもあったように、構成に不備があるともいえるのでしょうが、このいささか雑な感じが「味」のようにも思います。

    解説に収録された挿絵のうち、ギュスターヴ・ドレのものが秀逸です。

    いまさら童話?とおっしゃる方も、読んでみると意外に楽しいかもしれませんよ。残ってきたものにはやはり魅力があるということなのだろうと思います。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/61306

  • いま読む ペロー「昔話」
    (和書)2014年01月19日 20:10
    羽鳥書店 2013年11月1日


    柄谷行人さんの書評から読んでみました。

    文学のふるさとという言葉を考えてみた。国民・臣民の形成が国家の支配というものであり文学が国家の支配としてあるならば、ペローの文学はそういった国家の支配の手段(道具)になる以前の自然状態として文学のふるさとと呼ばれるのだろうと思った。

    そして国家の支配の後にくるものはそういった国民文学としての国家の支配をかわすことでありそういった文学がポスト国民文学になるのだろうがそれは文学のふるさとの回復のようなものになるのだろうと思う。

    そういったことを坂口安吾やペローについて柄谷行人や坂口安吾全集で島田雅彦などが書いているのを読んだことがある。

    長靴をはいた猫について渋沢龍彦翻訳を読んでみようと思っていたので手間が省けた。解説も解りやすく本の栞の紐が二本ついていて本文とその解説を交互に読みやすい作りになっていて最初は戸惑ったが読んでみると非常に有効だった。

  • 解説読まないと意味ない雰囲気がする…とりあえず本編は読み終わった。本の雰囲気はとても好き。内側よもぎ色の紙だし、表紙の絵もいいし。

  • 「昔話には著作権がない! 」

    17世紀フランス、太陽王ルイ14世の宮廷に在った昔話の名手、シャルル・ペローの8つの昔話「眠れる森の美女」「赤頭巾」「青ひげ」「猫の大将または長靴をはいた猫」「仙女たち」「サンドリヨンまたは小さなガラスの靴」「巻き毛のリケ」「親指小僧」を読み解く。

    民話や昔話には著作権がない!

    なるほど、この当たり前のことに今更ながら気がついた。
    だから「昔話」は時代や国の都合の良いように、いくらでも改編が可能なのだった。

    おとぎ話の名手ペロー作として名高いこれらの昔話といえども
    ヨーロッパの各地で言い伝えられてきた民話や伝承の
    三百年前のフランスにおけるひとつの進化形に過ぎないことが本書を読むとよくわかる。

    しかし進化形とは言え
    現代の、道徳に見合うよう純粋培養されたストーリーから比べると
    子供は捨てるわ、人は食うわ、血は飲むわ、
    そのなんでもあり感には何か原始的な匂いすら漂う。

    そもそもこのペローの昔話集は
    ルイ14世の姪、エリザベート・シャルロット・ドルレアンに
    献じられたものであったそうだ。
    ロココの華麗なるサロンで令嬢たちがお読み遊ばしたであろう本の
    その内容のワイルドさに軽いめまいを覚えた。

    はるか昔にあった、たとえば「赤頭巾ちゃん」なら
    「狼と少女」というシンプルなモチーフが、
    時を経、人の口や手を経ていく度も転がされ変化した末の最新版を
    自分が手にしていたのだと思うとちょっと感慨深い。

  • おなじみの童話
    でも原作は?
    ディズニーで明るく優しく脚色された童話たち
    でも原作は?
    解説が興味深い
    表紙がすごすぎるよね
    《 貴婦人に 賛辞を受けた 文学は? 》

  • 鴻池朋子の表紙イラストが素敵過ぎる。。。

    羽島書店のPR
    「赤ずきんに「赤い」頭巾をかぶせ、猫に「長靴」をはかせた、17世紀フランスの宮廷作家シャルル・ペロー。世界中で読み継がれてきたペローの『昔話』は、もともと大人向けの読み物として貴族の文芸サロンで誕生した。民間伝承と宮廷文化との出会いから生まれた物語の背景をふまえ仏文学者・工藤庸子が新たに訳す。充実の解説付。」
    Tomoko Konoike Official Site / 鴻池 朋子 オフィシャルサイト
    http://tomoko-konoike.com/

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著者プロフィール

フランス文学、ヨーロッパ地域文化研究。東京大学名誉教授。著書に、『ヨーロッパ文明批判序説──植民地・共和国・オリエンタリズム』『近代ヨーロッパ宗教文化論──姦通小説・ナポレオン法典・政教分離』『評伝 スタール夫人と近代ヨーロッパ──フランス革命とナポレオン独裁を生きぬいた自由主義の母』(いずれも東京大学出版会)、『政治に口出しする女はお嫌いですか?──スタール夫人の言論vs.ナポレオンの独裁』(勁草書房)。訳書に、『いま読むペロー「昔話」』訳・解説(羽鳥書店)、コレット『シェリ』(岩波文庫)。編著に『論集 蓮實重彥』(羽鳥書店)、共著に『〈淫靡さ〉について』(蓮實重彥、羽鳥書店)。他、多数。

「2019年 『女たちの声』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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