- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904785874
作品紹介・あらすじ
1. 口頭でのやりとりに限定されている。文章を読み書きする方法は排除されている。
2. 学生には質問させない。
3. 学生に考える時間を与えない。考えるのを保留して考える自由は無い。
4. 何を考え、何を考えないかの制約条件は氏が一方的に決める。
マイケル・サンデル氏の教育実践「ハーバード白熱教室」で謳われる「対話」。
しかしそれは学生が自由に考えることを禁じている「対話」であり、根源まで考え抜く力を鍛えるべき哲学の授業として適切なのだろうか?
外国の「偉い」思想家の言うことに容易になびく「知的植民地性」を指摘し、単なるサンデル批判に留まることなく教育方法についての無自覚・無知への反省を促す、骨太な教育論。
感想・レビュー・書評
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マイケルサンデルの白熱教室に対する反論である。確かにサンデルの対話では、例外を認めず、どちらかを即答させる尋問という指摘が当てはまる。〇×のクイズとなんら変わることはないようにも思われる。
ただし、実際はその教室での授業風景を録画編集して、分かりやすいところを正否として示したという編集の問題もあるとは思われる。
対話教室という訳自体が間違っていて、ディベートだけなのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本書の多くの部分に説得されなかった。
1.本書が取り上げているのはトロッコ問題である。この問題は答えるのにあまり思考を必要としない心理学実験のようなものだと批判されている。だが心理学実験ではなぜいけないのかが分からなかった。そういうことを論じる場合、この問題を出す意図や講義の目的を検討しなくて良いのだろうか。
2.問題の中には、ある条件が成り立つかどうかで答えが変わるが、その条件が問題文の中に明記されておらず、解答者がそれを見つけるべきものがよくある。一般にそういう問題が悪いとか、それに答えるのは意味がないとは言えない。質問の中に細かい条件が指定されていないからと言って、解答者が正解に到達する時に細かい条件を考慮しないで良いとは限らない。
3.著者はトロッコ問題を批判的に眺めることを学生に求めている。だが、最初から批判的に眺めるのでなく、問題に素直に答えようとした方が、この問題はある条件が成り立つかどうかによって答えが変わるとか、答えが存在しないといった、その問題の特徴がよく分かるだろうし、そのようにして問題に対する認識を深めた方が、問題に答えようとせずにあら探しするより効果的な批判ができるだろう(例えば正解がないという特徴は、正解があるという前提で出題されたら問題の欠点と見なしうる)。問題に素直に答えようとすることと問題を批判的に眺めることは両立しうる。
4.将棋である局面の最善手を探す場合、その局面が生じた原因を調べる必要はない。過去は無関係。トロッコ問題では過去の経緯が答えに影響するのだろうか。この問題で解答者が何をなすべきかを考える際に、その状況が生じた原因や責任を解答者が探ることに意味があるのかどうかが分からなかった。
トロッコ問題を問うことやディベートを論じている個所を見ると、正しい認識が得られるかどうかがこれらを評価する際の重要な基準になっているように見える。だがその基準が持ち込む必然性のないものだと思った。(2023年7月18日) -
批判的思考とは。
文章を書くとは。
自分の立ち位置を確認できる一冊。
物事を本質で捉えられるようにするためには,思考ーメタ思考ーメタ・メタ思考を往還できるように訓練する必要がある。
対話でいえば,他者との対話以上に自己との対話を重視することが,思考を鍛える最短のルートである。 -
「白熱教室」に代表される対話型授業が、学生の能動性を促進するように見せて、実は徹底して学生を受け身にしていると指摘している。言っていることは正しいが、何かに似ているなと思ったら「美味しんぼ」だった。素材のおいしさ(能動性)至上主義で、農薬・化学調味料(対話型授業)を全否定するところなど。また、筆者の池田氏は、『ある憲兵の記録』のエピソード(撫順戦犯管理所で強要されたと思われる)を事実として引用している。その鋭い批判精神がなぜか中韓関連だと発揮されないのも、「美味しんぼ」によく似ているのだ。
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相変わらず素晴らしい内容です。
サンデル教授の授業方法には特に思うところはありませんが、単純な二項対立には反対です。
人が陥りやすい思考であるからこそ、注意が必要です。
そして、この単純化された二項対立が、様々な対立を生む元凶にもなります。
ディベートに対する批判には、納得できない部分もありますが、他の部分は、概ね私も同じ考えです。
一読をお勧めします。 -
サンデル氏の講演録を素材にした批判的思考。
対話による学びを成立させるための基本的知識や技能の大切さを指摘する。
著者プロフィール
宇佐美寛の作品





