さよならのあとで

制作 : 高橋和枝 
  • 夏葉社
4.26
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本棚登録 : 332
レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816042

作品紹介・あらすじ

死はなんでもないものです。私はただとなりの部屋にそっと移っただけ。-永別のかなしみをいやす、42行の言葉。

感想・レビュー・書評

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  • 誰を失った悲しみも、慣れることはない。悲しみの形はいろいろで、麻痺することもない。
    いつだって悲しい。けれど避けることは出来ない。

    静かな本である。
    詩が一つ。
    どっしりと沁みてくる。

    まだ来ないその日を予測して怯えていても仕方がないけれど、でも、誰かを失う、その日は必ずやってくる。

    その時、心の、いつもは意識しない引き出しの奥深くに、そうだ、この詩がこの言葉がこの本があったんだ…と思い出したら、泣いたあとにきっと顔をあげられる。

    自分が生きている限り、どんな悲しみも、その悲しみと共に、また歩いていくしかないと、思うだろう。
    うつくしくひそかに、光り続ける一編の詩を胸に。

  • ブクログスタッフさんのおすすめで知りました。

    なんて優しいんだろう。

    大切な人を失くした悲しみと絶望はどうしようもなくリアルで。
    自我を持ちながらその悲嘆を感じずにいることなんて到底できない時期があって。

    この世にはもういない愛しいあの人は、いつも一緒にいる、どこにでもいる、と今はわかるけれど
    悲しみの底に深く沈んでいる渦中にいるとき、その怒濤のような感情に寄り添い、ほんのりあたたかく、ふうわりと包んでくれるバイブレーション。

    年の初めにこんな大きな優しさに出会えたことに感謝。

    ゆうさんありがとう。



  • 肌色がかった紙のおおきな余白に浮かぶ言葉は、ひと匙ひと匙が、ザラメのように胸にゆっくりと溶ける。まるで大きな白い皿に盛られたひと匙の料理をゆっくりと味わうように。亡き人の葬儀で朗読したい一遍。

  •  表紙のまんなかに描かれたかわいらしい花が目をひく。けれど花はこうべを垂れ、しおれているように見える。あたかもこの本を手にとっただれかがいま感じているかもしれず、そうでなくともいつかは直面せざるをえないあの重たい感情が、かりそめの花となって一冊の詩集によりそい、咲いているかのように。

     本書は、亡くなった「私」から残された「あなた」につたえられる、「さよならのあと」の言葉として編まれている。「あなた」はもちろん私たち読者を指すけれど、もしかしたら、しおれかけた花のことかもしれない。うちひしがれ、しかしそれでも生きていかなければならない花にむけて、「私」は透きとおった水のようなメッセージをそそいでくれる。

       死はなんでもないものです。
       私はただ
       となりの部屋にそっと移っただけ。

     まるで雨上がりの葉先から、あかるい日射しに押されたしずくがぽたぽたとこぼれ落ちるようなやわらかさで、言葉は頁のまんなかにひとつ、またひとつ、したたり落ちていく。あいまに添えられた挿絵は、なつかしい思い出を描いたようなやさしい輪郭で、私たちの目もとをゆるめてくれる。そうして生まれた波紋は頁の内側の余白へ、さらにその外側の余白へと、しずかにひろがっていく。

       私の名前がこれまでどおり
       ありふれた言葉として呼ばれますように。

       私の名前が
       なんの努力もいらずに自然に
       あなたの口の端にのぼりますように。

       私の名前が
       少しの暗いかげもなく
       話されますように。

     言葉そのものはとてもみじかい。手にもったときの厚みとはうらはらに、字を追うだけならたったの一分で、このつたないレビューを読むよりも早く、読めてしまう。にもかかわらず一分の読書以上のことを感じられたなら、それはこの詩集のほとんどをつつみこむ余白によって、私たちの記憶がよびさまされたからではないか。つい昨日のことのように思い出されるその声、そのほほえみ、その名前。他のだれでもない私たち個々の経験をどう思い出し、受けとめるかによって、余白の上にうかびあがる日々はいかようにでも着色されていく。
     とともに、タイトルから奥付までのあいだで唯一、見開きすべてが空白でぬりつぶされた箇所がある。個々の具体的な経験をこえて私たちにひとしく迫りくる出来事の変えがたさを、これほど端的に、これほど静謐にしめしているのは、本書をつうじておそらくここだけではないか。
     つまるところ、この一編のみじかい詩は、空白の出来事と残された余白とのつきあい方をめぐる、「私」からの応答なのだと思う。これまでどおりの自然さを大切にして、と語られた「あなた」は、さて、余白のような時間をどんな色でぬっていくだろうか。

     表紙の花にひかれるようにして詩集をひもといていくと、それによく似た花が白い地面のうえで咲いているのに出会う。花はあいかわらず元気がないように見える。でもそのまわりに咲く他の花々が、地面をすこしだけにぎやかにしている。そして花のそばには木の枝があって、枝の先にはつぼみがほころんでいる。冬のあとにはそれでもやっぱり春がめぐってくる、だから「すべてはよし」だよ、と花にむかってほほえんでいるかのように。

  • 僕が漫画分野で“こんな本を手掛けてみたい”と思うくらい、愛情溢れた丁寧で素敵な本を出版している夏葉社。そこから今年出された訳詩集。帯に「いちばん大きなかなしみに」と書かれているように、この世で誰もが出会う、最も大きな悲しみに向けて書かれた詩です。僕もとても大きな悲しみの中、昨日、出版した本がありますが、その本に冠した「希望」という文字が、本作の中でも結晶してます。あとは各自、ぜひ読んでください。

  • 年を重ねる程、人の死に触れることは多くなるのに
    経験を重ねても、人は悲しみに慣れることができない。
    でも、この本に書かれていることはひとつの解決になるのかも。

  • 断片

  • 以前から気になってはいましたが
    自分に必要、今、読むべき時だと思い読みました。
    とても優しい。

  • 喪失のつらさを少しでもやわらげられないかと購入。
    故人を思い出し、涙なしに読めない。

  • 詩歌

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