さよならのあとで

  • 夏葉社
4.28
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (1ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816042

感想・レビュー・書評

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  • 死はなんでもないものです。(Death is nothing at all.)で始まる1篇の詩。これによってきちんと悲しむことができる。そんな気がした。
    悲しむ心を支えてくれるには、悲しむこともなんでもないこととせねば。そう思えた。

  • 本当にシンプルで3分で読めるのに
    感情がぶわっと。。

  • 読みながら動悸がした。
    死別だけでなく、離別においても
    あてはまるところがあって。
    小さい頃、地震でしぬのが怖くて毎日机の下に隠れたり
    いつも家族の死を想像してかなしくなってひとりで泣いたり
    家族でケーキを食べる時間が終わることがかなしくて食卓で大泣きしたり
    感受性200ぱーで、おセンチにもほどがあったけれど
    それは今もまったく変わらなくて
    「別れ」にはいつまでたっても慣れることができないなあ。
    また会えるじゃんってなれる友人がほんとうにすごい、わたしは常に後ろ向きなんだよな
    たいせつな人と離れるって、この世でいちばんの苦行

  • 静かな優しい詩
    いつか自分の葬式にも使いたい。

    英文のまま理解できたら、
    また違う味わいがあるんだろうなと思いながら、
    訳者の気持ちも伝わります。

    「私の名前がこれまでどおり
    ありふれた言葉として呼ばれますように」

  • 何度読んでも、つーっと涙が出てきてしまう
    静かで優しい語り

  • 肌色がかった紙のおおきな余白に浮かぶ言葉は、ひと匙ひと匙が、ザラメのように胸にゆっくりと溶ける。まるで大きな白い皿に盛られたひと匙の料理をゆっくりと味わうように。亡き人の葬儀で朗読したい一遍。

  •  表紙のまんなかに描かれたかわいらしい花が目をひく。けれど花はこうべを垂れ、しおれているように見える。あたかもこの本を手にとっただれかがいま感じているかもしれず、そうでなくともいつかは直面せざるをえないあの重たい感情が、かりそめの花となって一冊の詩集によりそい、咲いているかのように。

     本書は、亡くなった「私」から残された「あなた」につたえられる、「さよならのあと」の言葉として編まれている。「あなた」はもちろん私たち読者を指すけれど、もしかしたら、しおれかけた花のことかもしれない。うちひしがれ、しかしそれでも生きていかなければならない花にむけて、「私」は透きとおった水のようなメッセージをそそいでくれる。

       死はなんでもないものです。
       私はただ
       となりの部屋にそっと移っただけ。

     まるで雨上がりの葉先から、あかるい日射しに押されたしずくがぽたぽたとこぼれ落ちるようなやわらかさで、言葉は頁のまんなかにひとつ、またひとつ、したたり落ちていく。あいまに添えられた挿絵は、なつかしい思い出を描いたようなやさしい輪郭で、私たちの目もとをゆるめてくれる。そうして生まれた波紋は頁の内側の余白へ、さらにその外側の余白へと、しずかにひろがっていく。

       私の名前がこれまでどおり
       ありふれた言葉として呼ばれますように。

       私の名前が
       なんの努力もいらずに自然に
       あなたの口の端にのぼりますように。

       私の名前が
       少しの暗いかげもなく
       話されますように。

     言葉そのものはとてもみじかい。手にもったときの厚みとはうらはらに、字を追うだけならたったの一分で、このつたないレビューを読むよりも早く、読めてしまう。にもかかわらず一分の読書以上のことを感じられたなら、それはこの詩集のほとんどをつつみこむ余白によって、私たちの記憶がよびさまされたからではないか。つい昨日のことのように思い出されるその声、そのほほえみ、その名前。他のだれでもない私たち個々の経験をどう思い出し、受けとめるかによって、余白の上にうかびあがる日々はいかようにでも着色されていく。
     とともに、タイトルから奥付までのあいだで唯一、見開きすべてが空白でぬりつぶされた箇所がある。個々の具体的な経験をこえて私たちにひとしく迫りくる出来事の変えがたさを、これほど端的に、これほど静謐にしめしているのは、本書をつうじておそらくここだけではないか。
     つまるところ、この一編のみじかい詩は、空白の出来事と残された余白とのつきあい方をめぐる、「私」からの応答なのだと思う。これまでどおりの自然さを大切にして、と語られた「あなた」は、さて、余白のような時間をどんな色でぬっていくだろうか。

     表紙の花にひかれるようにして詩集をひもといていくと、それによく似た花が白い地面のうえで咲いているのに出会う。花はあいかわらず元気がないように見える。でもそのまわりに咲く他の花々が、地面をすこしだけにぎやかにしている。そして花のそばには木の枝があって、枝の先にはつぼみがほころんでいる。冬のあとにはそれでもやっぱり春がめぐってくる、だから「すべてはよし」だよ、と花にむかってほほえんでいるかのように。

  • 僕が漫画分野で“こんな本を手掛けてみたい”と思うくらい、愛情溢れた丁寧で素敵な本を出版している夏葉社。そこから今年出された訳詩集。帯に「いちばん大きなかなしみに」と書かれているように、この世で誰もが出会う、最も大きな悲しみに向けて書かれた詩です。僕もとても大きな悲しみの中、昨日、出版した本がありますが、その本に冠した「希望」という文字が、本作の中でも結晶してます。あとは各自、ぜひ読んでください。

  • 年を重ねる程、人の死に触れることは多くなるのに
    経験を重ねても、人は悲しみに慣れることができない。
    でも、この本に書かれていることはひとつの解決になるのかも。

  • 詩集とは区分したけれど、
    これに収録されているのは一編の詩。
    そこにこめられた祈りを最大限届く余白に託した本だった。
    死というものがわかれだなどと思わないで、この名前をいつものように呼んでいて。
    思い出すまでもなく、日常にいることをわすれないで。
    そんな、やさしさの真実が描かれている一冊だった。

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