詩集 小さなユリと

著者 :
制作 : 荻原 魚雷 
  • 夏葉社
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本棚登録 : 45
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816158

感想・レビュー・書評

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  • 完全復刻 大切な詩集。
    これは、昨年、買いなおした、復刻版です。
    まだ、本棚に載せていなかったので、載せておこうと思いました。

    黒田三郎さんは、一番好きな詩人の一人です。

    「秋の日の午後三時」
    不忍池のほとりのベンチに坐って
    僕はこっそりポケットウィスキイの蓋をあける
    晴衣を着た小さなユリは
    白い砂の上を真直ぐに駆け出してゆき
    円を画いて帰ってくる

    遠くであしかが頓狂な声で鳴く
    「クワックワックワッ」
    小さなユリが真似ながら帰ってくる
    秋の日の午後三時
    向岸のアヒルの群れた辺りにまばらな人影

    遠くの方で微かに自動車の警笛の音
    すべては遠い
    遠い遠い世界のように
    白い砂の上に並んだふたつの影を僕は見る
    勤めを怠けた父親とその小さな娘の影を

    • kanegon69 さん
      いいね! from Paris
      いいね! from Paris
      2019/03/28
    • まことさん
      kanegon69さん!
      いいね!たくさんありがとうございます!
      Parisにいらっしゃるんですね!!
      美術館巡りなど楽しまれていらっ...
      kanegon69さん!
      いいね!たくさんありがとうございます!
      Parisにいらっしゃるんですね!!
      美術館巡りなど楽しまれていらっしゃるんでしょうか?お土産話がお聞きしたいです。
      2019/03/28
  • 雑誌「母の友」で東直子さんが紹介していた詩「夕方の三十分」の一節が心に残り、読んでみたくなった。

    妻がが結核になり、3歳のユリと暮らした日々を綴った父親の独り言のような詩の数々。

    幼い子を寝かしつけた後、飲みに出て歩いたり、イライラして娘を叩いたり、酔っ払って車に轢かれたり…ひどく心配で危うい子育て。

    けれど、そんな部分をさらけ出し、自分をひどい父親だと認め、娘のために台所に立ち、洋服を買い、日々を過ごし、ひと時の美しい時間を感じ取る。そこにはちゃんと娘への愛があるように思えた。

    罪悪感に苛まれながらも一人で我が子に向き合う様子は、孤独な子育ての心がうつしだされているようで、共感し、涙が出てきた。

    料理中に邪魔されてイライラし、互いに興奮してきてカッとなり喧嘩してしまう様子はリアルで、忘れられない。

    「小さなあまりにも小さな」最後の一節、

    歩いているうちに
    歩いていることだけが僕のすべてになる
    小さなユリと手をつないで

    幸せな感覚が伝わる。
    ささやかな日々を大切にしようと思った。

  • 手元に置いておきたい詩集。つくりがていねいです。ことばもやさしいながらにさみしく、こちらの隙間にはいりこんでくる。

    「歩いているうちに
    歩いていることだけが僕のすべてになる
    小さなユリと手をつないで」

  • むきだしでやさしい、無声映画を観ているような詩
    思わずにんまり

  • 駄目な酔っぱらいのお父さんと、小さな三才の娘。

    だめだなぁ、と思いながら、やさしい気持ちで読み進める。

    ひっそりとしずかな道は、仕事をしていないうしろめたさを際立てる。

    僕はこの道のしずかさにたえる

    小さなユリを送り出したあとのしずかな道。なんだかほほえましくもあり、同じく三才の娘を持つ僕とあまりに似ていて、恥ずかしい気持ちにもなる。

    勤めを怠けた父親とその小さな娘の影に、僕も僕と娘の姿を重ねてしまう。

    あまりに小さなことにまどわされながら、今も昔も同じように人は日々の生活を繰り返す。

    さすがに夜中に暴れたり、居酒屋に走ったりはしないけど。

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