ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)

  • クオン
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感想 : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904855812

作品紹介・あらすじ

今注目の作家チェ・ウニョンの短編集第1作、待望の邦訳

高校の文化交流で日本から韓国へやってきたショウコは、私の家に1週間滞在した。帰国後に送り続けられた彼女の手紙は、高校卒業間近にぷっつり途絶えてしまう。
約十年を経てショウコと再会した私は、彼女がつらい日々を過ごしていたと知る。
表題作のほか時代背景も舞台も異なる多彩な作品を収録。
いずれの作品の登場人物も哀しみ、苦しみを抱えながら他者と対話し、かかわることで、自らの人生に向き合おうとする。
時と場を越えて寄り添う7つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 過去を振りかえり立ち上がってくる切ない想いを描いた話に惹かれる。それだけ過ぎ去った時間が増えたからなのか。
    フッと蘇る心の奥にしまわれた記憶。鋭い痛み、後悔、哀しみ、さまざまな想いに揺れる。
    二度と会う事ができない人との想い出はなおのこと切ない。
    けれどその痛みは、過ぎた時間がオブラートのように包み込み、苦い想いを少しだけ呑み込みやすくしているとも感じる。
    7つの話は、どれも人との出会いと別れを描いている。繊細で内省的な主人公たちが、過去を回想し静かに物語る。それは歴史や社会を揺るがす事件、時代の空気とも無縁ではない。
    過去を振り返りながらも人生に向き合い真摯に生きている姿がいい。
    著作『わたしに無害な人』も良かった。チェ・ウニョンはまだ30代。これから年齢を重ねたらどんな話を送り出してくれるのだろう。
    とても楽しみ。

  • 遠ざかってしまった記憶を静かに悼み、弔うような短編たち。
    二度と戻れない過去に自分が他者を傷つけたこと、取り返せないままここまで生きてしまったことを思い、しんと冷たく胸が凍える。
    痛みは消えないし、きっと忘れもしない。忘れないまま、明日も静かに生きていく。

    表題作よりも他の短編たち、なかでも「ハンジとヨンジュ」「彼方から響く歌声」「ミカエラ」が好きだった。
    今となっては何が最善だったのかもわからないこと、もっとやれることがあったかもしれないこと、だけどできなかったこと、そういう体の奥に石のように沈む後悔の表象が際立つ作家だなと思う。

    「作家の言葉」で、もう自分は小説で身を立てることはできないかもしれない、諦める時が来たのだと思い泣いたという記述にこっちが泣いてしまいそうになった。
    この人が作家の舞台に上がることができて、日本にいながら本を手に取れること、それはただただ貴いのだと、鮮やかな表紙をゆっくり撫でる。

  • 親しかった友達との仲がこじれてしまったこと。家族の愛情と期待を重荷に感じていたこと。大人達の話に口を挟んで取り返しのつかない破局を招いてしまったこと。学業で挫折したこと。おばあちゃんっ子だったこと。あらゆる登場人物と人間関係と語られる心情に憶えがあり、身近すぎてとても平静を保てなかった。こんな読書は初めて。

  • 人は去る
    冬の日のコンロのように

  • 小学6年生のとき地域の文化交流で韓国に行ったことがある。ホームステイなどはなかったが地元の同い年の子供達と交流する場が設けられ、その場で並んでた順にペアを組まされた。わたしのペアになった子は髪が長くてとても可愛い子だった。お互い相手の言葉はわからないのにそれなりに楽しい時間を過ごしたように記憶してる。まあ子供だし。帰国後もわたしは彼女としばらく文通をしていた。彼女のおばあさんが日本語の読み書きができたので私と彼女の手紙をそれぞれ翻訳してくれていたのだ。彼女のおばあさんの日本語の文字はとても綺麗だった。

    表題作「ショウコの微笑」を読みながら当時を思い出さずにいられなかった。高校の文化交流でで出会ったショウコとソユの物語。噛み合わない、でも実は合わせ鏡のようだった二人。ショウコとソユとミスターキム、そしてソユと母と祖父、それぞれの関係性は切なくも暖かく。ドイツで出会った韓国人一家とベトナム人一家の交流と決別を描いた「シンチャオ、シンチャオ」も切なく心に残ると同時に日本人として他人事ではいられない切実さが伴う。人民革命党事件やセウォル号事件など韓国の歴史に大きな爪痕を起こした事件をフックに取り残された人々の悲哀に寄り添う「オンニ、私の小さな、スネオンニ」「ミカエラ」、フランスの田舎町にある修道院やロシアのサンクトペテルブルクという意外な場所を舞台に恋のような静かな熱狂と喪失を描く「ハンジとヨンジュ」「彼方から響く歌声」。

    著者チェ・ウニョンはこれが強烈な個性だと思うのだけど、ラスト近くでパッと手綱を離すのだ。不意に足元を掬われる。その不穏さが一番わかりやすく描かれてるのが最後に収録された「秘密」。強固な信頼関係で結ばれていた祖母と孫娘、その記憶はそのままに、しかし孫娘は連絡もつかない中国の田舎に引っ越したという。謎は明かされぬまま祖母の祈りのような言葉だけが残る。こうして全編振り返ると、ストーリー的に収まりのつかない、取り残された気持ちを抽出するための物語構成がベースなのかなと思う。取り残された人に寄り添う優しい視点、社会や政治への批判的な視線、そのミックス具合も含めてかなりかなり好みです。長編もぜひぜひぜひ読んでみたい。あとこれも言っときたいんだが表紙のレモンイエロー素敵です。

  • 〇韓国は大陸にある国なんだなあと。外国との距離感が違うように感じた
    〇“ゆるし”の物語

    「ショウコの微笑」
    …日本人の留学生ショウコと出会い、ソユとソユの家族は変わっていく。ショウコからの手紙が途絶えて、おじいちゃんとソユは。
     短編ながら、じっくりと女性の半生が描かれている

    「シンチャオ、シンチャオ」
    …ドイツの小さな町で、家族ぐるみの付き合いをしていた韓国人1階とベトナム人一家。
     壊れたのは私の言葉がきっかけだった。
     ベトナム戦争の影。日本と韓国の間の戦争についても考えさせられた。自分たちは何度でも向き合わなくてはならないのではないか。

    「オンニ、私の小さな、オンニ」
    …母と母が慕っていた“お姉さん”韓国を揺るがした冤罪事件で、二人の間に溝ができる
     打ち込んで、どうにもならない壁にきづいたときの無力感

    「ハンジとヨンジュ」
    …自分の進む道を見失いフランスの修道院でボランティア活動に打ち込むヨンジュ。アフリカからボランティア活動に参加したハンジに心を寄せる
     しかし突然ハンジに無視されるようになり。
     理由のわからないモヤモヤ。多分ささいなキッカケだったのだろうけど…。実際、理由のわからないままの別れは多いのかも

    「彼方から響く歌声」
    …大学サークルでは女性が蔑視されていた。ミジン先輩は鮮やかに抵抗していた。
    しかし私はそんなミジン先輩に複雑な思いをいだいていた。

    「ミカエラ」
    …夫と娘のために献身的に働き続ける母。善良な母と大切に思っているがすれ違ってしまう娘。
    ローマ教皇の韓国訪問とセウォル号事件

    「秘密」
    …自慢の孫娘に苦労をかけたくないおばあちゃん。孫娘は中国の学校の教師になりにいったというが、便りが途絶えている。
    描かれていない事情を推しはかる

  • とても良い本だった。
    どの物語にも、何とも言えない切なさが漂う。
    小説の中でだけ他人事として感じる切なさではなく、自分がどこかで経験したことのある切なさが襲ってくる。
    生きるって、人の心に寄り添うって、人を愛するって、夢を持つって、何かを信じ続けるって…切ない。

  • 自分が自分であるといる理由だけで自らを蔑み嫌う人たちの立場で、社会や人間を見つめる作家になりたい。(作家の言葉:あとがきより)

    今の私が、読みたかった物語たち。自分自身で在る悲しみに対して、都合のいい解決や、安易な救いや、気休めの寄り添いなんて必要ない。孤独でも自分自身として生きる人の姿がある。

  • とても狭い世界を描いた作品なのに、どの短編も良質な映画を観た後の静かな余韻が続く。この著者の他の作品も読んでみたい。

  • 独り言と小説の間のような文章。申し訳ないが物語として機能する段階にはまだ至っていないように感じたし、こういう「モロ」な文章は読んでいて面映くなってしまうのだけれど、エッセイと小説の中間の文章なんだと考えて読めばなんとなく読み方は分かるという感じが。また、翻訳の問題なのだと思うが、一人称と三人称が一文の中でずっとごちゃまぜにしてある話があり、こればっかりはちょっと読むのがしんどかった。なんだかすごく不可思議な文章だったのだけれど、誰か気がつかなかったのだろうか?

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