たとえる技術

著者 :
  • 文響社
3.20
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905073420

作品紹介・あらすじ

芥川賞作家・ピース又吉直樹や、直木賞作家・西加奈子らとの共著でも知られる文筆家、せきしろ。
エッセイが東海大の入試に使われるなど、確かな文章力に定評があり、また数々の芸人にコント脚本を提供するなど、圧倒的なユーモアを生み出すせきしろの、表現力の秘密は「たとえ」にあった――。



「オダギリジョーが本名と知ったときのように驚いた」
「『この犬、他の人になつくこと滅多にないのよ』と言われたときのように嬉しい」
「雨天中止を知らなかったような孤独」

感想・レビュー・書評

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  • たとえるだけで、
    幸せが何通りにも増えていく
    ふしぎ。

    たとえるだけで
    ひとつも同じ幸せは
    なくなってしまう
    ふしぎ。

    中には
    たとえることで少し、
    わかりにくくなってしまったものも
    あるけれど、

    大部分のたとえは
    私のみえなかった世界を
    見せてくれた。

    この本は
    「冬のくもり空のなかから
    さしこんで
    足元を照らす
    ひとすじの光のような」
    本だ。

  • たとえる、ということだけで1冊の本を書けるとは!
    自由律俳句できらりと光っていた著者のセンスが本書でも炸裂しています。
    スケールもニュアンスも自由自在。
    イメージのギャップに爆笑を誘われたり、詩的な情景にノスタルジーを感じたり。
    「AのようにB」という1つのパターンだけなのに、発想や着眼点を変えるだけでバリエーションはいくらでも広がっていくのです。

    何気ない会話の中で「おっ」と思う比喩を使っている人につい惹かれてしまう私には、なんともおいしい1冊でした。
    「優しさ」を「ランチパックを取り出すときのように」なんて例えられたら、一瞬で恋に落ちてしまいそうだ…。

  • 嬉しい、楽しい、美味しい...
    そんな日常を彩る感情を、
    せきしろさんらしいたとえで楽しむ本。

    たとえの幅を広げる連想ゲームで、
    イメージの対象から、徐々に外枠へと、
    考えを膨らませていくのは発見だった。

    アイドル → 女性 → 人間 → 動物 → 生物 → 地球
    事実 → 史実 → 昔話 → 神話

    この並びの展開に気付くだけで、
    ひと回りもふた回りもスケール大きくたとえられそう。

    また、時候の挨拶の作り方もおもしろい。
    季節をたとえた後、その季節を 今日この頃 に替え、
    いかがお過ごしでしょうか? を追加するだけだという。

    春 →
    パン祭りで盛り上がるような春 →
    パン祭りで盛り上がるような今日この頃、
    いかがお過ごしでしょうか?

    完成。
    こてこての定型文なんかより
    おもしろく、春らしさも良く伝わる。

    本書で登場した、くすりとするたとえをピックアップ。
    --------
    ・クララが立ち上がった時のように、
    盛り上がってますかー?

    ・御柱から振り落とされた人のように転がるおむすびを
    おじいさんがスペインのお祭りの牛のように追いかける

    ・君も能力者なんだろ と言われたように運命的

    ・どこからか高校野球中継の音が聞こえてきそうな暑さ

    ・みかんで満足してしまった
    わらしべ長者のようにつまらない
    --------
    しかし、このたとえる技術、
    いざ実践してみると、なかなか難しい。
    引き合いに出す知識や、多角的な連想が思い付かないと
    おもしろ味のない、退屈なたとえになってしまう。

    日頃から多くの知識を吸収したり、
    目に映る情景を文字に起こしてストックしたりなど、
    たとえの抽斗増やしも重要なのだろう。

    秀逸なたとえが瞬時に閃くようになりたい...。
    今まで以上に、想像力豊かに
    感情を伝えていこうと思った一冊。

  • 「○○のような~」をどう例えるか?をまとめた、自由俳句のせきしろさんならではの感性が光る1冊。
    いやいやかえってわかりにくいってーと突っ込みたくなるのも多いのだけど(「小さい」をたとえるのに「大きな耳がかわいらしいフェネックギツネのように小さい」とか)、、「図書カードに書かれている卒業生の名前のように知らない」とか物語が浮かびそうなぐっとくる表現もあり、楽しめました。

  • こんな例えを日常の中でさっと言いたくなる本

    お湯が沸く寸前の電気ケトルの中のように

    「この犬、他の人に懐くこと滅多にないのよ」と言われた時のように嬉しい

    地面を行き交う死ぬ間際の蝉のよう
    →動きが予測不能

    部活のOBが言う「俺らの頃の練習」と「お前らの練習」くらい違う

    転校生の習字セットくらい見たことない

    あいつはコンビニのトイレを借りる為にガムを買うような気遣いのできる男だ

    おじいちゃんが来ていた紳士用ポロシャツのように灰色の雲

    起きてから必死に思い出そうとする夢のように灰色の雲

    コンクリート打ちっ放しのデザイナーズマンションのように灰色の雲

    プレパラートの上のカバーガラスのように壊れやすい

    突然の自習のような喜び

    体育館の天井に挟まったバレーボールのようにどうすることもできない

    視聴覚室のカーテンのような黒さ

    店員がオーダーを取りに来ないような孤独

    片付け忘れた人生ゲームの人のような孤独

    何も乗ってないテーブルクロス引きのようにつまらない
    うまくできた福笑いのようつまらない

    紙ナプキンを無駄に多くてにしてしまったような罪悪感

    カラオケで歌っていると店員が入って来た時のように戸惑う

    バーコードバトラーで強そうなボーダー柄の服

    〜のクローンのように悔しい

    バブルの頃の服の肩幅のように広い

    瓶の中の生態系のように小さい

    バイト初日のようなアウェー感

    飛ばせない音声ガイダンスを聞くように待つ

    遠くに聞こえるパトカーのサイレンのように無関係

    「君も能力者なんだろ」と言われたような運命的

    デッドボールをうけた助っ人外国人のように激怒する

    終電が終わった駅のように静かだ

    チェックアウトが11時かと思ったら10時だった時のように驚く

    「知り合いかも」に父親が表示された時のように驚く
    (元カノの彼氏)

    落し物コーナーにある老眼鏡のように寂しい

    陶器を包む新聞紙のように優しい

    本当は敵なのを隠しているかのように優しい

    中身がわかるようになっているおにぎりのように優しい

    砂壁にセロハンテープで貼ったもののように頼りない

    一度トレーに載せてしまったパンを売り場にも時のような罪悪感
    →いい感じになった人と連絡とらなくなる

  • ○○のように、と「たとえ」るだけで、“水で戻した乾燥ワカメのように”文章が拡がります。

    例えば
    「シャア専用のような赤いもみじ」
    「メロスはナマハゲのように激怒した」
    …「悪い子はいねがぁ」と入ってくるメロスにおびえて泣き出す邪知暴虐の王
    「メロスはこち亀の大原部長のように激怒した」
    …ラストのコマで「邪知暴虐の王はどこだ!」と乗り込んでくるメロス

    「たとえ」を使えば会話も広がり、互いの感情を共有することも容易になる。
    また、「たとえ」を考えることは連想を続けることで時間つぶしにもなるし、想像力の訓練にもなる。

    細かい技術論というよりも、エッセイ的にスラスラ読める、楽しい一冊。

  • たとえる技術。それは、表現する技術。表現するこころ。伝えようとする、こころ。

  • たとえることで「感情を共有できる」をテーマとしていている本です。段落ごとのお題を「〜のような」という例えで思いを伝え、相手にも心地よく想像を掻き立てる技術が学べます。

  •  例えることにこんなに情熱を注いだ本は初めて読んだ。面白かった。

    『体育館の天井に挟まったバレーボールのようにどうすることもできない』p.82

    『手袋を外して本気を出した人がいたかのように手袋が落ちている』p.100

    『日射しからおばさんを守るサンバイザーのように大きい』p.112

    『テレビをつけたらちょうどバルスのところだったような偶然』p.131

    『本当に全米が号泣してしまうように悲しい』p.229

    『「怒らないから言ってごらん」という言葉のように信じられない』p.240

     (^○^)

  • 例えることは、表現の幅が広がっていい事だと思うのだが、ここの中にある表現はただ言葉を長くしたかっただけではないかと思うほど、無駄な表現の様に感じた。要は人それぞれということか。

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著者プロフィール

作家、俳人。1970年、北海道生まれ。A型。北海道北見北斗高校卒。主な著書に『去年ルノアールで』『海辺の週刊大衆』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』『たとえる技術』『その落とし物は誰かの形見かもしれない』など。また、又吉直樹との共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』などがある。

「2022年 『放哉の本を読まずに孤独』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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