失われた名前 サルとともに生きた少女の真実の物語

制作 : 宝木多万紀 
  • 駒草出版
4.03
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本棚登録 : 159
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905447221

作品紹介・あらすじ

誘拐、サルたちとの生活、売春宿、そしてストリート・チルドレン…。数奇で過酷な運命をへて幸せをつかんだ、ある少女の真実の物語。

感想・レビュー・書評

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  • ここまでドラマチックなストーリーがあるだろうか。

    およそ信じがたいが、幼少期に誘拐されてジャングルに置き去りにされ、そこでサルに育てられて命をつなぎ、その後人間社会に戻って家族を持ち、幸せに暮らす女性の自伝だ。
    といっても、昨今注目のゴーストライター事情から(!)自分自身の覚書のためにも付記しておくと、著者とはあるが文章そのものをご本人が書いたわけではなく、聞き取りと裏付け取材をした著者の娘ヴァネッサとライターの三人の共作であり、そのあたりは、あとがきや執筆協力者としてのリストでも明記されている。

    ただその内容は、想像をはるかに超えるエキサイティングさで目が離せず、ほぼ一気読み。
    ライターのリン・バレット=リー氏はもともとは小説家だったようで、その文章力もこのノンフィクションをより一層魅力的なものにしている。翻訳もとても読みやすい。

    おそらく、人間界を離れた年齢が絶妙だったのだろう。発達の面から考えても、これ以上幼ければ、のちに人間らしい暮らしを取り戻すのは不可能であったろうし、これ以上年齢が上だったなら、サルとともに生きることはできなかったかもしれない。
    加えて、ご本人が、もともと情熱にあふれた非常に頭の良い人物であったことも大きい。延々と続く過酷な環境の中、サル社会からの脱出、人間社会で生き抜く日々、どれをとっても生来の著者のタフさと知性がなければ果たせなかった事実と想像する。

    読み終えて、現在に至るまでの取り戻しの日々がない!と慌てたが、どうやら続編に備えて、ネタは温められているらしい。
    続編が本当に楽しみな一作である。

  • 彼らの感情はとても繊細で複雑だった。そのニュアンス一つひとつに、私は人間の感情と同じものを感じた。謙虚や高慢、降伏や防御、嫉妬や賞賛、怒りや喜びといった、あらゆる感情を持ち合わせていた。彼らとの関わり方を会得すると、寂しいのか、孤独なのか、愛情に飢えていて抱きしめて欲しいのか、それとも挑発しているのか、干渉したいのか、彼らの気持ちが手にとるようにわかった。
    言葉の多様性にも、いつも驚かされた。甲高い警告の叫びや、苛立ちや喜びの表現、フルートのような響きをもつ日々の会話の優しい音色‥‥。
    ごくたまに単独で行動することもあったが、サルたちは群れの秩序の中で生きる社会的な動物だった。私はただ、彼らの仲間の一員でいられることが嬉しかつた。私はここに属するのだ、と感じていた。(69p)

    霊長類からどうやってヒトは人になったのか。という研究は数多くある。しかし、霊長類とヒトはその幸福の度合いにおいて、どれほどの「差」があるのか。という学問はない。

    コロンビアの環境が生んだ特異な経験によって、この少女は5才から10才の頃までジャングルのサルたちに育てられ、やがて売春宿に売られ、ストリートチルドレンとして生き、マフィアのメイドから逃げ出してやっと人並の生活を手に入れる。その間に車ごと崖から落ちたり、爆発死から寸前で生き残り、マフィアの追求から奇跡的に逃げおおせる。映画の題材には十二分になり得るけれども、私の興味はやはり前半のサルとの生活である。

    思い出すのは、ネアンデルタール人と一緒に育ったクロマニヨン人のエイラを描いた小説である。あのネアンデルタール人は、見事な社会生活と信仰と薬処方の技術、狩の技術を持っていた。それと、マリーナが語るサルたちとの距離があまりにもないことに、驚きを禁じ得なかった。そして、母親への憧れから彼女がヒトの世界に戻った途端にヒトという動物は彼女をとんでもない境遇に陥れる。売春娘として育てる。ヒトがヒトを殺す世界生きる。その理由は大きく言えば、カネである。カネのために、ヒトは動物としての最低限度の思いやりさえ無くなるのである。

    しかしながら、そんな彼女を助けるのもカネの力ではなく、ヒトなのだから、人間はむつかしい。

    2014年5月1日読了

  • ​​​​​​小川糸さんの本に書いてあって、

    感動した旨。
    図書館にあったので、借りてみました。

    子供の頃、親とはぐれて狼に育てられた、、、とか
    猿に育てられた、、、とか。
    今までも、何例もありますが、

    この主人公マリーナは、
    4〜5歳ごろ、子供を誘拐する組織に誘拐され、年齢なのかジャングルに置き去りにされた少女。


    その彼女の娘が母親の物語を残さなければ、と決心し実際に現地まで赴き、取材を敢行し、作り上げたノンフィクション。

    物語を読むとわかるのだが、ナキガオオマキザルの群に、付かず離れずして生き延びるが、ある日人間を垣間見て、人間の里に降りてゆくのだが。。。


    これでもかというほど、彼女には暴力などの危機に晒され続けるのです。


    人間と再び生活を始めるのが11〜2歳。
    なので、人間社会に戻れた。
    多くの例では、動物の社会に長くいすぎて、人間社会への対応ができなかった例がほとんどだ。

    実に克明で、ジャングルの中の猿との生活の箇所は秀逸。機会があれば読んで欲しい1冊です。

  • 森の中に捨てられ、普通なら死ぬところを何度も生き伸びた。
    森から拾われて淫売宿に売られて逃げ、ストリートチルドレンからマフィアの家族に拾われて家政婦として働いた後逃げて、修道院へ逃げ、親切な元隣人に助けてもらい、生き延びた女性の話。
    猿と家族のような生活を送り、動物や自然の生活を愛していたが、人間である自覚が否応にも出てきてしまった。
    森から森にいたままの方が幸せだったのか、と思うような出来事がたくさん起こる。
    1950年代のコロンビアは犯罪、貧困、麻薬だらけ。
    小説などではなく本当に猿に育てられた少女の話がすごく面白かった。オオカミに育てられたオオカミ少女の話は昔ガラスの仮面に出てきたが、原作についてノンフィクションなのか定かじゃない。
    サルとして見た人間の生活がいかに奇妙に見えるか、確かにと思わせられる。

  • コロンビアでジャングルに捨てられ、サルに育てられた少女の
    波乱万丈の物語。
    映画化したら面白そうだ。

  • 実話を元にしていながら、ライターさんが手を加えているので小説のような感覚で読める。ご本人の記憶が薄れてきているということなので、多少の脚色や想像はあるとしても、「事実は小説よりも奇なり」という言葉を思い浮かべざるを得ない。信じがたいことが次々起こる。特にジャングルでの生活は凄まじい。年端もいかない少女が、孤独と恐怖の中で正気を保ったまま生き残るのは奇蹟に近い。私なら人と話せないこと、虫にたかられることだけで気が狂いそう。

    ジャングルを脱出した後も、大人に裏切られたり助けられたり、波瀾万丈。せっかく職を得たレストランをすぐ辞めてストリートチルドレンに戻ってしまったのは納得しがたかったけど、幼い頃から社会と断絶され、毎日学校に通ったり宿題をしたりといった生活習慣が身についていなければ仕方ないことなのかもしれない。

    ようやく安定した生活を得られそうなところで話は終わる。そこから結婚し、子どもに恵まれる幸せにどうやってたどり着いたのか。続きが出るようなことを後書きで言っていたので期待したい。

  • 同じくらいの歳なのに・・・
    こんな事ってあるのねえ
    人の暮らしが豊かだとは思えなくなる

  • ジャングルに捨てられた子供。なにから始めるか。それは、食べること。
    猿たちとの間でも意思疎通できるようになる。生きるということが秘める力、恐るべし!

  • 幼い頃に誘拐されてジャングルに捨てられ、サルと共に暮らした少女。後に人間に拾われ、人間社会の中で暮らし始めますが、森で育った彼女にとって、「人間の生活」とは理解することすら難しいものでした。行く先々で何度も名前を変えられた彼女が「自分の名前」を得るまでの、ノンフィクションのお話です。

  • 幼い頃誘拐され、ジャングルに置き去りにされた少女が歩んだ道を、その少女を母に持つ娘が記す。どこまでが真実なのか疑いたくなる道のりなんだけど、少なくともストリートチルドレンとしてギリギリの中に置かれていたのは真実で、よく生き抜いてくれたなと思った。まだ途中で終わっているので続きが出るならぜひ読みたい。

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