オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 女子刑務所での13ヵ月

  • 駒草出版
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感想 : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784905447955

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    女性刑務所、と聞くと男性刑務所と比べて華やかなイメージを抱くだろうか?それとも陰湿なイメージを抱くだろうか?

    筆者が入ったダブリー刑務所は、(他の刑務所と比べれば)華やかといったほうがいいかもしれない。囚人たちは意外と率直で、あっけからんとしていて、新入りにも優しく接してくれる。よくある囚人同士のいじめや看守からの虐待といった話も、本書では出てこない。
    それはこの収容所に凶悪犯がいないことが一因だろう。彼女が収監されているのは連邦刑務所であり、麻薬絡みの犯罪や詐欺といった、服役年数二桁は行かないような囚人が多く入れられている。そのため、犯罪者基準に照らせば相当モラルが高い。殺人などの重大犯罪者は連邦矯正施設に入っているし、郡刑務所は、ダブリーよりもよっぽど荒れていて環境が酷いとのことだ。

    また、映画などでおなじみの「同性愛者の囚人にレイプされる」うんぬんに関しても、この刑務所では起こっていない。所長のクーマ・デブーは「この施設にいる誰かが万が一、性的なプレッシャーをかけてきたり、脅したり、傷つけたりしたら、私のところに直接言いに来て欲しい。このダンブリーでは違法な性行為については、いかなる小さな罪をも許しません」と述べている。囚人同士の性的接触が徹底的に排除されていたため、レイプ事件も表立っては起こっていなかったようだ。ただ、やはり囚人同士の恋愛は当たり前のように発生しているらしく、看守の目を盗んで情事に及ぶカップルも少なくない。レズビアンの筆者に言わせれば誰も彼も「本物のレズビアン」ではなく、「刑務所内限定のレズビアン」ばかりだったようだが。

    むしろ危険なのは囚人以外の「この施設にいる誰か」、つまり看守や刑務所のスタッフである。囚人から誘う和姦もなくはないが、多くは看守からの一方的なレイプである。
    アメリカ国内で、看守と囚人の間の恋愛ほど、不平等な大人の関係は存在しない。囚人とその管理者の日々の関係の中にある極端な不平等が、軽い侮辱からひどい犯罪まで、あらゆるタイプの虐待につながるのは至極当然のことなのだ。ダブリーの看守や他の地域にある女性専用の刑務所内では、毎年看守による性的虐待が報告されている。

    以上のように、刑務所に入ったとはいえ、筆者は絶望に暮れるほど最悪な環境にはおらず、かといって自由を思い出せなくなるほど刑務所にのめりこんではいない。女性は男性にない「社会性」を持っているからだろうか、はみ出し者であるはずの彼女らが、刑務所での生活を何とかして華やかにしようと一致団結していく。そのちぐはぐさと、ときおり起こるドタバタ劇がとてもユニークな一冊だった。

    ―――――――――――――――――――――――――――――――――
    【メモ】
    ・私は怖かった。身体的な暴力を受ける恐怖よりも(私はその形跡を一切見たことがなかったけれど)、刑務所のルールを破ったとか、因人のルールを破ったなど、自分がやってしまった過ちで公然と罵られることが怖かった。例えば、まちがったタイミングでまちがった場所にいたり、誰かの椅子に座ってしまったり、自分が求められていない場所に侵入したり、まちがった質間をすると、恐ろしい看守か恐ろしい囚人によって(時にスペイン語で)、呼び出され、怒鳴り散らされることになる。ニーナを質問で困らせるとか、A&Oの新入り仲間とメモの交換をしてルールを理論化したり、何が起きているのか確認する以外は、私は心を開かなかった。

    ・私は騙されたり、利用されたり、あるいはターゲットにならないように慎重に行動した。怒鳴るとかひどい言葉を投げかける以上の脅迫をしてくる人間はいなかったが。

    ・私が大学の時に考えていたより、過食は少なく、けんかはずっと多かったが、女性特有の精神がそこにはあった。新密な仲間意識と楽しい日の下品なジョーク、そして芝居がかったドラマと、おせっかいと、悪い日の意地悪なゴシップだ。

    ・そこはとても不思議な場所だった。すべて女の社会に数人の奇妙な男たち、軍隊スタイルの生活、女性のレンズを通した支配的な「ゲットー」の負の感情(都会的であり、囲舎じみてもいた)、すべての年齢層にある人たち、分別のない若い女の子から年老いたおばあちゃんまで、すべての人たちが一緒になって様々なレベルの忍耐の中に放り込まれているのだ。

    ・私はというと、今住んでいる世界と、戻りたいと願う世界との間に捉われているような気分だった。収監されることに折り合いをつけられない人たちが、刑務所のスタッフや他の囚人との軋轢に苦しむ姿を見た。他の囚人たちと合わせることができない人たちは、常に衝突のさ中にいた。貧困しか知らない人生で自暴自棄になり、権威に怒りをぶちまける若い女性や、下の階級だと思っていた人たちとの生活にとまどっていた中流階級の女性などだ。私は、彼女らはすべて、必要以上に不幸せな生き方を選んでいると思っていた。
    しかし一方で、刑務所暮らしを楽しんでいる人たちもいた。まるで外の世界を忘れてしまったかのように見えた。中の生活になじみ、合わせようとはしても、毎日、いつ何時でも家に戻る準備はできているものだ。それはたやすいことではない。実際のところ、刑務所とそこに住む人たちが思考を埋め尽くしてしまい、ほんの数カ月も経てば、自由がどんなものなのか思い出すことが難しくなる。未来を思い描くより、刑務所がどれだけ悲惨な場所か、多くの時間を費やして考えることになる。刑務所のシステム内での日々の作業は、自由な市民として塀の外に出た時の人生がどうなるのかという関心を、受刑者たちから根こそぎ奪い取るのだ。これが収監にまつわる悲惨な真実のひとつであり、恐怖、葛藤、そして刑務所内の生活への関心が、「本当の世界」を頭の中から外へ追いやるという現実なのだ。これが多くの受刑者を外の世界に戻りにくくさせている。

  • ふむ

  • ドラマも見てみたい

  • 11年前の若気の至りがもとで13か月収監された女性の手記。アメリカ社会に空気のように当たり前にある人種差別、テレビ番組や日用品といった習俗、刑務所で手に入るもので作るケーキ、個性的な仲間たち・・・ブロンドの知的階級にあるこのあたしが?という感覚ももろ出しだし、見ず知らずの黒人女囚が本を借りに来た時の恐れの感情に自己嫌悪に陥ったり、いやなやつをクソ呼ばわりしたり、とかなり率直。スラングをできるだけ再現した翻訳にも助けられ面白く読んだ。

    しかし、誰が決めたのか知らないが、幼く無知でトラブルを求める女の子がすぐに収監されていたらここまでの観察眼は持ちえず高いレベルの理解もなかっただろう。罪を犯したその時でなくあえて11年後、一応外観上更生していた彼女に刑を科したことで、心から気づきを得て大きく成長し、その果実を社会に還元させることもできたわけだ。
    過去の罪を蒸し返すことの是非もあろうが、犯罪の質によっては刑罰の在り方のひとつといえるかもしれない。

    P150 女だけの暮らしには、それが上流であっても下流であっても、一定の条件がある。[中略]親密な仲間意識と楽しい日の下品なジョーク、そして芝居がかったドラマとおせっかいと、悪い日の意地悪なゴシップだ。

    P161 刑務所とは、人生から去ってしまう人、そして自分のイマジネーションを満たしてくれる人との出会いに満ちている。

    P270 ようやくわかった。麻薬密売に手を染めた過去の自分をいつしか冷ややかな目で見るようになったのは、政府が私から自由を奪ったせいでもなく、弁護士に払う報酬のせいで膨れ上がった借金のせいでもなく、恋人と一緒にいられないムショ暮らしのせいでもなかった。私のようにドラッグを売りさばく側の人間のせいで道を誤って刑務所に送られた人々と知り合い、一緒に時を過ごし、話し、働いたからだ。

  • パイパー以外の個性豊かなキャラクターがみんな魅力的。ドラマはまだ観てません。

  • ドラマ鑑賞中なので原作も。相関図ありがたい!

  • 難しい内容ではないのに、日本語訳が読みづらく、読み終えるまでに時間がかかった。

  • ドラマ化されたものは見てません。
    読み終わった後で、Netflixのページを見て、現在シーズン6を配信中と知ってビックリ。人気あるんだなぁ。
    総集編をチラ見しましたが、本よりドラマの方がおもしろそう。

    本の方は、おもしろくなかったわけじゃないけれど、冗長でした。もっとシンプルにおもしろく、かつ、もっと深く書くことだってできたんじゃ?と思う。プロの作家との力量の差を感じた。

    ついでに言うと、日本語訳も、すごくムラがある訳で、最初の方は特に違和感なかったのに、8章「ビッチに思い知らせてやる」に入ると突然、意味不明の文章、ちぐはぐな接続詞、前後のつながりの不自然さが目立つ文章が続いて、読んでいてすごくイラ立った。
    これまでとは別人が訳したのか?と思うほど。
    その後は、また、普通になったけど、最後のあとがきで、「事情により、最後まで訳せなかった」というようなことが書いてあったので、そのあたりのことが絡んでいるのだろうか。8章だけ、誰も推敲しなかったとか?
    明らかに、あの章だけは不自然なほどにおかしいと思う。

    内容については、女性同士の恋愛関係がすでに日本よりずっとずっと普通に浸透していることにちょっと驚いた。我ながら「今さらそこに驚く?」という感じだけど。

    あと、著者が出所間近になって、JAY-Zの「99 problems」のミュージックビデオを見て「ブルックリンに住んだこともないくせに、ホームシックのような感情を抱いた」と書いていたが、あとでそのビデオを実際に見て、え?と思った。
    お嬢様育ちの女性がこれを見てホームシック??と。
    精神的にかなり切迫していたのかなぁ。
    確かに、シカゴに移送されてからは、彼女の犯した罪のレベルに比して待遇がひど過ぎる、と感じずにはいられなかった。

    刑務所内のいくつかのシステム(特に更生プログラム)と、貧困が人生にもたらすものついては、著者が書いている通り、理不尽という言葉に尽きるけれど、どちらも改善は困難だと思う理由ばかりが頭に浮かんできて、読んでいて切なかった。

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