大千世界の生き物たち

  • 架空社
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (71ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906268627

感想・レビュー・書評

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  • 誰かに何かを説明するのは難しい。相手が相応の経験を積んだ大人であっても、難しい。ましてそれが子供に対してとなると、これはもう本当に途方に暮れるしかない。

    なぜ大人が子供に説明するのが難しいかといえば、見ている世界が違うからだ。大人の世界は差異と分節に満ちて整然としている。論理や倫理で説明され、構造化された世界だ。しかし、子供は違う。子供が生きるのは謎と混沌が支配する世界だ。目が眩むほどカラフルなカオスが充満した、不条理の世界だ。

    しかし、だからといって相互理解が不可能かといえば、全然そんなことはない。だって大人はみんな、子供だった。必要ならば立ち止まり、かつての自分を振り返って、身を屈めて語りかけることが出来る人を、僕は大人だと思っている。

    そう考えると、スズキコージは決して大人ではない。少なくとも、大人としてこの本を書いたわけではないことは確かである。一人の少年が、世界という謎、生活という混沌の中を自分の足だけで立とうとした時、歩こうと決めた時、この本は生まれたのだ。

    彼が不可解や不思議に出会い、疑問を抱くその時に、砂糖菓子とミルクの匂いを振り撒きながら、遥か第三千世界から生き物たちがやってくる。その「答え」としてやってくる。

    近代以降、合理主義の嵐が吹き荒れて、科学が世界を説明する時代が訪れた。宗教は希釈され漂白されて地上に降りてきた。自然は解読されるべき書物になった。哲学的理論神はカントにその首を斬り落とされ、産業革命を通してミネルバのフクロウは燃料や歯車へと姿を変えていった。やがて、合理主義は世界を飲み込んだ。世界は科学に恥じ入り、屈服した。そして、科学によって説明される部分だけが「有用」とされ、世界を名乗る資格を与えられることになった。

    しかし、この近代合理主義というやつは、骨の髄までつくづく大人の都合の産物なのだ。思考の癖とも言えるかもしれない。だが、子供は違う。科学は子供を作れない。子供を生み出すのはいつだって世界だ。だから、子供の疑問は常に世界の方を向いている。合理主義の裏側へと、科学の闇へと向いている。

    子供はその裏や闇がどれだけの広さと遠さをもっているのかを知っている。そして本当は、かつて子供だった大人も、それを知っている。無限や永遠を湛える大千世界の存在を確かに感覚している。だからこの本を、枕元で微睡む自分の子供に読み聞かせたりもするのだ。

    スズキコージは、子供と大人を行ったり来たりしながら、絵を描き、文を書く。それは彼が、大千世界がその間に広がっている事を深く理解しているからだ。カオスとロゴスの隙間、裂け目、その深淵だけが大千世界へ通じる入り口であり、そこに住む生き物たちを招聘する為の唯一の扉であることを知っているからだ。

    子供は説明されることで、説明することを覚えていく。分節と綜合を理解してゆく。大人は説明を試みることで、既知の解体を経験する。過去が別の次元へとズレてゆくのを感覚する。これは、子供が大人になるための本だ。そして、大人が子供に戻るための本だ。

  • (aliceさんおすすめ)

  • 本嫌いの次男もこれは読み聞かせると喜んだ?!

    もちろん本好きの長男も好きだった

  • スズキコージが架空の生き物を次々と描き出す。

    いろんな自然現象はこの生き物のせいでおきているのか!
    そんな気になってしまう。

    絵はモノクロだが迫力満点。解説も美味!

  • 子どものブッククラブの本。
    架空の世界の架空の生き物たちがこれでもかこれでもかと出てくる、図鑑風の絵本。
    ベタな駄洒落、独特の描き込まれた粘着質(?)の絵、幻覚すれすれのかっ飛んだイマジネーション。様々な生き物たちは、どれも、不気味だけれど、どこか愛嬌があり、そして哀愁が漂う。
    好き嫌いは別として、一度見たら忘れられないキョーレツな印象がある。ところどころ解説の日本語がアヤしいのもまた、この作品世界とマッチしていると言えなくもない。

    このブッククラブの担当者さんの中に、著者のファンがいるようで、実はこの著者の本は2冊目。1冊目は『やまのディスコ』という絵本だったが、こちらもなかなかキョーレツ。
    個人的には、ストーリーがあった『やまの・・・』よりも、本書の方が著者の持ち味が生きている感じがする。次々に不思議な生き物たちを生み出す著者の空想(妄想?)力に、読者も否応なく引きずり込まれ、ついついあらぬ生き物たちが見えてくるような気がしてしまう。
    怪作。

    *「三千世界の烏を殺し・・・」という都々逸は落語で聞いたことがあるが、「三千世界」も「大千世界」も「三千大千世界」の略語で、千個の世界の三乗=10億の世界が集まったものを指す、仏教用語であるらしい。それじゃ架空の世界のものではなく、本当に10億の世界のどこかにいるのかもしれない、このヘンな生き物たち(^^;)。

  • あやかしとも、妖怪とも、モンスターと言う言葉とも合わない
    この世界にいる人じゃない"生き物"たち。
    筆者"ぼく"が子供のころから目にしてきた、
    (けれども慌てて見ようととするとふっと消えるらしい)
    人じゃない不思議な生き物たちを紹介した図鑑。

    子供向け(?)の月刊誌に連載されていたこともあり、
    「絵本」とカテゴライズしていいのかと思うけど
    不思議も毒も滑稽も夢もゴチャゴチャに詰め込み過ぎて
    子供には整理出来ないんじゃないかという程に濃厚。

    一体一体、摩訶不思議な生き物たちを
    ベタは使わない細かな線のみでみっちり表現したモノクロの挿絵と
    "ぼく"の彼らと接触時の体験談を交え生態紹介しています。

    あまりの"得体の知れなさ"に時に恐怖を覚える程の
    奇しげな生き物たちは、愛らしくもあり、どこか滑稽です。

    メリーゴーランドに住み着く母性愛溢れる「マワリル」や
    眠る人に夢を与える粉を撒く「ゼネファンタンケル」、
    縁日では自らの顔からはがしたお面を売り「マスカン」など
    単に「奇妙」な紹介図鑑で終わらせず、
    どこか愛惜が香る逸話を盛り込むのがたまりません。

    惜しいのは、挿絵がカラーでないこと。
    モノクロの線画も味がありますが、
    表紙に描かれ生き物(ゼネファンタンケル)の
    ゴッテリと濃密な色調を見ればそう悔やむはず。

  • おかねもちになったら買います…

    おかねもち詳細
    風の向きで潮騒が聞こえる縁側があって猫も犬も飼えるおうちと精神的余裕ができたとき、好きなお茶をのみながら午後、寝転がりながら読みたい。

  • 以前,「大千世界の仲間たち」という書名で売られていた(絶版)ものの再版。


    ちっちゃい子によっては,怖いと感じるかもしれないが,絵といい,不思議な生き物の不思議な生態といい,コージスキン独特の世界に引き込まれる。

  • 空想力豊かな子供の頃に見ることをお勧めしますが、大人になってからも、なぜだか時々ページをめくってしまいます。
    不思議が生き物たちがたくさん現われる不思議な絵本です。

  • これはまあ、なんというか・・・。
    賛否両論、好き嫌いのわかれる本だと思います。
    「フミキリン」(踏み切りの役目をしているキリン←首が長くて、遠くからでも汽車を発見できるから)
    「ラッパア」(これにとりつかれると、本人の意思に関係なく声が大きくなってしまうらしい)
    等、不思議な生き物たちが続々登場する絵本(これは絵本なのか?)です。
    個人的には、スズキコージさん大好き☆です。

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著者プロフィール

スズキ コージ
1948年、静岡県生まれの絵本作家。本名、鈴木康司。1987年に「エンソくん きしゃにのる」(福音館書店)で小学館絵画賞、1988年「ガラスめだまときんのつののやぎ」(福音館書店)&1989年「やまのディスコ」(架空社)で絵本にっぽん賞、2004年「 おばけドライブ」(ビリケン出版)で 第35回講談社出版文化賞絵本賞を受賞、2007年 浜松市、浜松ゆかりの芸術家受賞、2008年、「旅ねずみ」(金の星社)で第22回赤い鳥さし絵賞を受賞。2009年「ブラッキンダー」(イーストプレス)で第14回日本絵本賞大賞を受賞。2017年、「ドームがたり」(玉川大学出版部)で第6回JBBY賞受賞、翌年同作で第23回日本絵本賞をそれぞれ受賞。
創作絵本、画集、マンガ、映画や演劇のポスター、舞台装置や衣装、店の看板やマッチ箱、壁画など、その才能は止まるところを知らず、多くのファンを持つ。

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