沖縄/草の声・根の意思

  • 世織書房 (2006年9月10日発売)
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  • 本 ・本
  • / ISBN・EAN: 9784906388875

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  • 沖縄在住小説家・目取真俊が琉球新報、沖縄タイムスに寄せた発言を中心にまとめた時評集。巻末には掌編小説6篇も同時収録されている。辺見庸に「まるで生きのいい蔦」と評される彼の言葉は、地を這うようにして、いつのまにか浮ついた言葉しか発することのできなくなっていた私の足をすくい取った。

    —「こと」が終わってから書くのではなく、
      「こと」が起こっているさなかに、
      あるいはその前に書くことを大切にしたかった。(本書後書き)

    「こと」のさなかに行動すること、思考すること。これがどんなに困難なことであるのかは、言わずもがなでしょう。「こと」のさなかに自分が投げ込まれているのだと自覚することからして難しいのだから。この人はこともなげに難なくそれをやってのける。

  • 1990年代後半から2001年5月までの目取真俊の時事評論と6篇の掌篇小説がまとめて読める一冊。
    2000年は特に、サミットについての記述が目立つ。
    2000年4月から沖縄に住み始めた私にとって、沖縄サミットはなにがなんだかわからないうちに頭の上を通りすぎた台風のようなものだった。戒厳令状態に確かな反発を感じながら、胸にわだかまるものを言葉にすることはできなかった。
    今、あらためてその年をふりかえり、自分があまりにも大きな状況を見過ごしてしまったことに愕然とする。
    そして、もっとも素直に心に落ちてくるのは1999年7月3日に「琉球新報」に掲載された「記録された声」という文章だ。コザ暴動の映像に触れながら、他者の体験を<記憶>として継承することの可能性について述べられている。他者の声、他者の体験から生じる意味を考えることが、今、確実に必要な営みなのだと思う。

  • 1999年から2001年までのエッセイと、掌編小説が数編、掲載された本だ。
    今から10年ほど前、この頃から日本が急激に右に傾いてきたのだということが再確認できる。政権が変わって、少しはそのスピードが緩んだのかもしれないが、油断はできないと思う。
    しかし、14年前から普天間基地の移設のことで大きな問題になっていたことを知らなかった自分は、かなり恥ずかしい。

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著者プロフィール

1960年、沖縄県今帰仁村生まれ。琉球大学法文学部卒。
1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞。
著書:(小説)『目取真俊短篇小説選集』全3巻〔第1巻『魚群記』、第2巻『赤い椰子の葉』、第3巻『面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)』〕、『眼の奥の森』、『虹の鳥』、『平和通りと名付けられた街を歩いて』(以上、影書房)、『風音』(リトルモア)、『群蝶の木』、『魂込め』(以上、朝日新聞社)、『水滴』(文藝春秋)ほか。
(評論集)『ヤンバルの深き森と海より』(影書房)、『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送出版協会)、『沖縄/地を読む 時を見る』、『沖縄/草の声・根の意志』(以上、世織書房)ほか。
(共著)『沖縄と国家』(角川新書、辺見庸との共著)ほか。
ブログ「海鳴りの島から」:http://blog.goo.ne.jp/awamori777

「2023年 『魂魄の道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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