小林多喜二蟹工船

著者 :
  • 金曜日
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605446

感想・レビュー・書評

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  • 文字通り殺されていく過酷な労働環境を表すエピソードを物語としてよく描けていると思う。そして、労働者が団結することの大切さ、希望を分からせてくれる。悪の根源がすべて資本家、ロシア=共産主義=善、北海道の労働環境が他地域(内地)と切り離されて極悪だとする等単純化がひどいが、私は無視して読めた。時代を考えると反資本主義・反軍隊・反戦・反天皇制等全体的にとても挑戦的だと思う。よく出版できたと思う。もっと長く生きていられたらと思わせる作品。

  • 小林多喜二(1903年〜1933年)という29歳で亡くなった作家が1929年に書いた作品。この作品がプロレタリア文学として注目を集める一方で、特別高等警察から目をつけられる。そして多喜二は1933年、特別高等警察による拷問を受けて亡くなってしまう。

    当時の労働環境を色濃く映したプロレタリア文学。漁船でも工場でもない蟹工船(かにこうせん)は、航海法も、労働法も適用されない。そのような中で過酷な労働環境を虐げられてきた。

    なんと恐ろしい時代か。叙述もおどろおどろしい。
    ストライキを企だて演説する場面のみ、気持ちよかった。しかし失敗に終わる…。

    資本主義か共産主義かで揺れ動いていた時代を知ることができる一冊。

  • 土、ああ野麦峠と並ぶ「三大明治鬼畜労働」の一角(自分調べ)。やっぱ明治プロレタリアート文学は最高だ。生きてるって感じがする。
    最も有名なプロレタリアート作品と思うが、地獄度は他の二つに比べ意外と低い。
    オホーツク海に浮かぶ地獄の蟹工船の中で、特権階級へとぶつける思いがムクムク育っていく過程が面白い。

  • あまりにも有名な作品だが、今まで読んだことがなかった。
    資本主義の下、過酷な労働を強いられている人々。
    名のある者が主人公ではなく、集団を題材に描かれたこの作品は、息の詰まるほど劣悪な労働環境であったことを知らしめている。
    対立的に描かれる浅川もまた、歯車の一部であったに過ぎないことが最後に描かれ、どの時代も労働者階級の構図は変わらないと感じさせられる。

  • プロレタリア派の文学者であるだけに、興味を持ちにくかったが、彼の作品を読んでみると人間の生々しさが感じられ、リアルな背景を想像しやすくさせてくれる書き方がすごいと思った。

  • 教科書では名前とともに非常に有名な作家だが、実際には、恥ずかしながら初めて読む。

    以前 National Geographic で蟹取漁(船)のドキュメンタリーを見たことがあり、その荒波下での漁の苛酷さを知っていたためか、非常に頭の中で映像化し易い文章であった。

    浅川の残虐さ、非人道的扱いについて憤慨するも、それ以上に、船夫にしろ、漁夫にしろ、弾圧を受けているものが何故抵抗しないのだろうか?多勢に無勢は皆も分かっているのだから、それを武器に戦わないのだろうか?と思ってしまう。

    不慣れなスト・交渉のため、幹部が連れて行かれてしまったが、その後再度のストは成功。虎の威を借りていた狐は、資本家から解雇という説明文で終わる。落ち着くところに落ち着いたので、何となく安心はするが、作品としては、その後どうなったかについては読者の想像にまかせておいても良かったようにも思う。

  • こんなに有名な(?)、重要な本を今まできちんと読んでなかつたことに気づいた。
    言葉の使ひ方に特徴があり、始めのページを開いた時に一瞬、舊字体・舊仮名かと錯覚した。
    これからまた何度となく読み返すことになるだらう。

  • 『蟹工船』1929

    雨宮処凛氏の解説、野崎六助氏の解題付きの金曜日版。

    プロレタリア文学といわれる小林多喜二の代表作。蟹工船での凄まじい現状、資本主義の残酷さを肌で感じることのできたような気がした。

  • 青空文庫

  • 言い回しは昔のままだけど、内容はいまに通じるところがたくさんあった。
    赤化運動ね。

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著者プロフィール

1903年秋田県生まれ。小樽高商を卒業後、拓銀に勤務。志賀直哉に傾倒してリアリズムの手法を学び、28年『一九二八年三月一五日』を、29年『蟹工船』を発表してプロレタリア文学の旗手として注目される。1933年2月20日、特高警察に逮捕され、築地警察署内で拷問により獄中死。

「2008年 『蟹工船・党生活者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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