太陽のない街

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  • 金曜日
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605491

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  • 「いつクビにされるんだ?」「一斉馘首はいつだ?」
    「あんな安い給料でこき使われたうえ、簡単にクビになんかされてたまるか!」
    「俺たちだって生きていかなきゃならねぇんだ!」

    昭和初期、巨大印刷会社の労働者たちが暮らす貧民窟、一日中太陽の光がささない陰気な山陰の街、その名も「太陽のない街」は、労働争議に沸き返っていた。住民のほとんどが勤務している印刷会社が、労働者の一斉解雇を決意し、彼らの生存の道が絶たれたからだった。

    「太陽のない街」の労働者たちは闘いの旗を掲げた。自らが、家族が生きるために。丁々発止の議論を重ねた。アジビラを刷り、街頭で撒いた。警官隊とぶつかり合った。そして先の見えない闘いに疲れ、大企業にはかなわないと悟り、戦列を離れる者も現れた…。

    本作は、労働者階級の暮らしの惨状や彼らの闘争を描いた文学、いわゆる「プロレタリア文学」の名作として、小林多喜二の『蟹工船』と並んで称される作品のひとつである。しかし本作には『蟹工船』とは異なる結末が待ち受けているのだが、それは読んでのお楽しみ。おそらく現実はそんなものだったのだろう。

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    TEA-OPACはこちら→
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00540791

  • 共同印刷の黒歴史を知っておこうとプロレタリア文学というものを初めて手に取ってみた。ドキュメンタリーでも小説でもなく目まぐるしく場面が移るので背景やコンテクストがつかめずすっと入っていけないのだが、山と山に挟まれた谷底、天皇が見ることのない日のあたらない千川どぶ周辺に生きる、インテリジェンスによる解釈を通さない人間の粗野な言葉、エネルギーが印象的だった。

    P273 プロレタリア文学を読むことは、貧困のカタログの中からサイズのあう品物を探すことではない。こういう「場所としての言葉」を生き直すことである。そしてその言葉が殺された歴史を生きることである。

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