世界が決壊するまえに言葉を紡ぐ

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605781

感想・レビュー・書評

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  • 秋葉原の加藤の事件、そして3.11。いま、批評に、思想に、なにより言葉に何ができるのか、何を伝え得るのかを真摯に語り合い、向き合う対話編。一つは完全に忘れ去られ、もう一つからは二年経とうとしているいま、読んでよかった。

  • 【概要】
    北海道大学准教授 中島岳志さんと4人の方々の対談集。

    中島さんは秋葉原事件の詳細、犯人である加藤智大のディティールにまで肉薄した著書を記した方。(この本は読んでいません)
    その、秋葉原事件の犯人である加藤智大の人物像、誰にでもある彼との共通点、事件を起こすに至った経緯、感情などを追跡することで、現れてきた今の時代の生きにくさや彼が事件を起こすに至ってしまった原因、我々はこの事件とどのように関わっていけばいいのかについて詳細な考察をしている。
    その内容をもとに、4名の(おそらく中島さんがこの事件を題材に語りたかった人物)方々と対談を繰り広げる。

    第1章 星野智幸 可能性の文学

    第2章 大澤信亮 自己と対峙する批評

    第3章 重松清 じっくりと染みこむような言葉を

    第4章 開沼博 福島のエージェンシー


    【感想】
    ないよりもまず、このタイトルにぐっと胸をつかまれる。
    世界は決壊しているのか、あるいはすでに決壊してしまっているのか…。

    ルソーの外的自己と内的自己に壁がない「未開人」への憧れ

  • 現実のいろいろなあらわれを、わかりやすく物語ることで消費してしまうのでなく、丁寧に現実と向き合い、そこから見えてくるものから言葉を紡いでいこうとする姿勢。
    流れの中で自分の立ち位置をきちんと見据えることの大切さを教えられる。

  • 著者である中島岳志さんが近年取り組んだ「秋葉原事件」を巡る考察を基調とした4つの対談が収められている一冊です。

    世間では小手先の論理だけで何の糧にもならない言説が氾濫している。
    そのようなある種の反射神経がものをいう言説が大勢を占める中、本当に大切な問いは棄却されていく。
    今こそ「届く言葉」が必要だ

    …冒頭で中島さんはこのように語ります。

    この本は広く一般に☆5と評価されうる本ではないであろうことは断っておきます。ある人にとっては、BOOKOFFの105円棚に置かれた啓蒙本ほどの価値もないかもしれません。しかしながら、それでも、「自己の固有性」、「透明な共同体」への妄執、「言葉の限界」に対する絶望…加藤智大(※秋葉原事件の犯人)が抱えた問題を、まさに今―程度こそあれ―自己の切実な問題として同様に内抱している人は少なくないはずです。

    そういった人に対談の一言一言は表層を透過して心の芯にまで「届く」と思う。加藤の絶望を超えて以降自分の言葉を紡いでいくための気づき、勇気が得られると思う。…少なくとも私はそうでした。

    今、読むからこそ意味がある一冊だと感じています。『世界が決壊するまえに言葉を紡ぐ』という表題は中島さんの世相に対する切迫感とそれに向き合うにあたっての強い決意のあらわれであると私は捉えました。

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著者プロフィール

1975年大阪府生まれ。大阪外国語大学卒業。京都大学大学院博士課程修了。京都大学人文科学研究所研修員、ハーバード大学南アジア研究所研究員、北海道大学公共政策大学院准教授を経て、現在は東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は南アジア地域研究、近代日本政治思想。2005年『中村屋のボース』で大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞大賞受賞。著書に『ナショナリズムと宗教』『インドの時代』『パール判事』『朝日平吾の鬱屈』『秋葉原事件』『「リベラル保守」宣言』『血盟団事件』『岩波茂雄』『アジア主義』『下中彌三郎』『親鸞と日本主義』『保守と立憲』などがある。『報道ステーション』のコメンテーター等、メディアへの出演も多数。

「2018年 『保守のヒント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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