はじめてのマルクス

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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605927

作品紹介・あらすじ

成果至上主義に疲れ切っている社会人、仕事にやりがいを見つけられない公務員、将来が不安でたまらない学生が急激に増えている。なぜこういう状態になっているかを、わかりやすく解き明かす。師弟対談が読み解く『資本論』。

感想・レビュー・書評

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  • おそらくそこまでマル経がわかるものではないかなと。物の価値とかは考えさせられたかなと思いました。

  • 読みにくい。沢山の人名が出てくるが、それが誰でその人が何故引用されているのか分からない私にはチンプンカンプン。

    なんとなくお互いがマウント取り合っているバトル的なやり取りにも思えて、書物としての価値は低い様に感じてしまう。

  •  読了。最初の前書きからしてパンチが効いてた。特に後半は人名や団体名の列挙で全然わからなかったんだけど、ダラダラ読めて楽しかった。佐藤氏は難しいんだけど、結構論が一貫していて読みやすいんだよね。毎回彼が「読むべき人」として挙げる人名も同じだし(柄谷行人等)。本単体でわからなくとも読み続けることに意義があるというか。「わかりやすい一枚絵」でなくて、「よくわからない細部に陰影をつけていくと気づくと浮かび上がっている絵画」みたいな感じ。
    =====================
    P170
    ①「株式には株式のイデオロギーがある」、「カネを払って商品を買うということ自体がイデオロギーだ」という点。(略)資本主義の中で生活していると、カネを払ってモノを買うということは、空気や水の存在のように当たり前だと思うのではないか。しかし、この関係=交換関係は人間社会にとって普遍的関係ではなく、これこそ特殊な関係(歴史形態的関係)なのだ。だからこの関係を当たり前(普遍的)と思うことはイデオロギーなのだ。(略)株式を持つだけで利得(配当)が得られるのは当然だ、というところにまで高まっている。(略)マルクスがこれを「物神性」の最高携帯だといっているが、これを「物神性」ととらえず当然視することは明らかに資本家的イデオロギーそのものなのである。(略)

    ②この点との関係で、特に強調したいのは「労働力の商品化」の無理という点である。(略)(労働力を売る、ということは)自分の労働力を自分で使わない(使えない)で他人に使われる、他人の指示に従って労働しなければならない、つまり他人に支配されるということである。それをおかしいことと思わず、当たり前と思ってしまっているのではないか。それを反省し、批判的な目でとらえてほしい。
     そして労働力をなぜ商品として売らなければならないのか。それは労働者が自分の労働力を使うのに必要な生産手段(土地、原材料、機械設備等)を持っていない、奪われているからである。そして労働者が生産手段を奪われたのは暴力によってである。利潤追求・拡大動機の下、国家権力と結託して直接の生産者であった農民・手工業者から土地・生産手段が、暴力的に奪われた。これが、資本が労働力を商品として買い、労働・生産過程を包摂・支配することになった特殊歴史的条件であった。これを資本の本源的蓄積という。この特殊歴史的条件は、資本が労働・生産過程という社会存立・発展根拠、本来の価値形成・増殖根拠を包摂・支配する条件として、今日においても繰り返されている。
     労働力の商品化の克服は、他人に自らの労働力の使用をゆだねるものではなく、自らの意志と欲求によって自ら労働力を使用するということ、労働・生産活動の主体となることである。そのためには、資本と国家に奪われた生産手段を取り戻すこと、いつでも生産手段を自分自身で使いうる社会的条件を作り、確保することによる、のである。
    ③(略)
     利潤、地代を資本還元して成立する擬制資本は、資本の理念の具体化携帯であり、その対局には労働力の徹底した物化がある、ということであるとともに、賃金の資本還元による労働力の擬制資本家は、資本家の究極の観念でありながら、絶対に現実具体化されない。人間をモノにして売買の対象にするということは、資本による社会関係の、労働者支配の完成であるけれども、労働者が文字通りロボットになってしまえば価値増殖根拠も解体するー労働者=人間は絶対にモノそのものにはならない。資本の理念が具体化される対局として、労働力商品化自体の本来の無理が明示されるのである。




    P4
    私は、世界と日本の現実を知るため『資本論』の重要性は、一層高まっていると考えている。それは、1991年1月12日にソ連が崩壊したことと関係している。ソ連崩壊まで、日本を含む西側資本主義国では、「社会主義革命をいかに阻止するか」ということが、国家指導部にとっての最重要課題だった。それだから、国家が経済に介入して、雇用政策や社会保障制作を通じて、労働者を保護した。資本家も、労働者からの搾取と収奪を強めて社会主義革命を惹起するよりは、利潤を少し減らすことにはなるが、体制としての資本主義を維持することを優先すべきだと考えた。その結果、資本主義の下でも福祉政策が可能になった。

    P12
     労働力を商品化して、完全に「物」の用よう支配することが、本来的には不可能であるにもかかわらず、資本は労働力を「物」のように使おうとするのである。       

    P22
    鎌倉:(資本主義の問題点は)要するに「カネ」か「命」かという論点です。

    鎌倉:帝国主義戦争では、搾取されている労働者が戦争にかり出されて殺されるわけです。労働者、民衆を殺さなければ維持できないような資本主義です。だから、そのような資本主義は終わりにしなければいけない。

    P29
    鎌倉:彼ら(新自由主義)が自由の保障というのは、労働者を自由に使うこと、それから領土の支配も自由、さらに国家を自由に操作できること、そこまで現実に行っています。(略)(TPPでは)日本の国家がどうなろうと多国籍資本が儲かればそれでいいということになります。それが現代資本主義の特徴。だけどそれでは国家の破滅になります。(略)国家の国民統合には国民から税金を取らなければならない。しかし、国民から税金を徴収して巨大資本に分配する、それが国家の基本的な機能になる。まさ国家の指摘、資本家的、そういう性格ばかり出てきている(略)。
    佐藤:極端にいえば税金を払わない奴は殺してやれ、という話になってくるわけです。(略)脱税の取り締まりには警察は出てこない、権力の中心である、まさに政治犯罪の摘発を本業とする地検特捜部が出てくるのが特徴的なんですよね。(野村幸代氏が脱税で検察に捕まった話をあげて)何で両方とも警察に逮捕された経験がなくて検察だけに逮捕されるという得難い経験をするのか。そうするとやはり税というところ、これが国家の本質に関わるんです。税が国家の論理に埋め込まれているから特捜部が出てくるんです。(略)事件がないところに事件を作る技術があってこその特捜部の価値があるのです。だから税というのは面白いですよ。

    <価値・富の源泉はどこにあるのか?>
    P56
    鎌倉:スミスまでの経済学ではお金によってしか商品を買えませんから、商品の価値の大本はカネだと思っていた。これが重商主義ですね。
     ところがスミスは貨幣の大本は労働だととらえた。貨幣を払ってモノを買う関係の基盤にあるのは、労働という犠牲(コスト)を払って生活に必要なモノをつくることだと。だから「労働」は本源的購買貨幣だといったわけです。(略)これが労働価値説の基本になる。
    佐藤:スミスは労働力の商品化という考え方ができてないですからね。

    P64
    鎌倉:2000年以降は大企業の利潤は急速に拡大しましたけど、その課程で(略)増えた(雇用)は非正規雇用だけ。賃金は上がったかというと、ずっと下がりっぱなし。1998年以降、賃金支払総額がずっと下がっています。それで労働分配率も下落傾向という状況です。
     ですから、実体経済拡大の方向にカネは回らない。結局だぶついたカネが実体経済から遊離した株式・証券市場に回って、再び投機・バブルを引き起こす。その下で、人間の生活ー労働力の再生産ーがかち合いされるということになりつつある、ということです。

    P68
    鎌倉:日本共産党もそうなんだけど、もう1回健全な資本主義に戻して市民社会を実現して、その上でないと社会主義にならないと考える人たちがいます。株価至上主義の擬制資本が跋扈している社会を、産業資本が中心にもう一度戻せるようにと考えている。
    佐藤:その産業資本の一つが、たとえばトリウム原発とかになってくるわけですよね。(略)だから日本共産党は、原理的に原発と決別できなかった。

    P70
    佐藤:国鉄民営化の課程で本来団結しなければいけない国労(国労)、動労(国鉄動力車労働組合)、全施労(全国鉄施設労働組合)、全動労(全国鉄道力車労働組合)

    P73
    佐藤:自己実現なんていうのは、労働力が商品化されている体制の下ではないんですよね。あえていえば、資本家の自己実現はある。しかし、労働者の自己実現は絶対にないんですよ。(「個性を発揮しよう」なんて無理で)『聖書』を売って利潤を得る人が、利潤があがらなければ、翌日からウォトカを売ってもかまわないわけです。『資本論』の冒頭にあるようになにを売ってもかまわないわけです、利潤があがれば。

    P76
    鎌倉:モノとモノとの関係を通さないと人間関係を結べないというのは、絶対に普遍的な関係ではありません。それは特殊な関係なのです。

    P81
    佐藤:純粋な新自由主義を日本で定着させていったのは、竹中さんとか中谷巌さんではなくて、証券屋さんですよ。

    P108
    佐藤:分配によって問題を解決しようとしても、労働者に分配するモノはないんです。分配は資本家の間の話なんです。要するに、分配の問題で問題は解決できると考えるのは間違いで、それはあくまで賃金論の枠組みで解決しなければならないわけです。

    P112
    佐藤:新自由主義批判によって労働価値説や労働の哲学自体を否定して非舞う方向に行くことを非常におそれています。労働価値説を否定すると、「何かどこかから降ってこないかな」というような発想になってしまう。あるいは国家に期待する。橋下徹さんのような人がリーダーになれば、危篤検疫の上にあぐらをかいている大阪市役所の職員の富を持ってきて分配してくれるのではないかという発想になってきます。
    鎌倉:それは危険ですね。

    <どうすれば人権を守れるのか>
    P113
    佐藤:協同組合的なところの農場で作っているモノがあるとしたら、少し高いけどそこで買うとか。経済合理性に反する行為をあえてすることです。

    P138
    鎌倉:(恐慌が資本の矛盾を解決するが、)それなのに依然として(協賛主義者は)恐慌から資本主義の崩壊へ、という捉え方があります。(略)しかし、恐慌自体から死には至らないんですよ。(略)
    佐藤:(略)そこで恐慌のところから革命へという形でいかないと、やはりレーゾンテートルが崩れると思っているんです。でも、そうなると不和さんは逆に社会主義の可能性を信じていないということになります。

    P84
    右翼思想
     フランス革命の議場があって、議長席からみて右側にいる人たち、理性には限界があると考え、宗教や伝統の力、王様を尊重するという人たち、その人たちが右翼です。それに対して、理性を全面的に信頼して人間の力で何でもできるんだ、世の中を理想的に人間が組み立てることができるという人たちは左側に座っていた。その人たちが左翼なんですよね。「大和ごころ入門 P83」

  • むずい。知らないこと多すぎて悲しくなってくる。

  • 元外務省の佐藤と、佐藤が高校生の頃に勉強会で教わったという埼玉大学鎌倉教授の対談。鎌倉は1934年生まれ。

    佐藤の前書きは、いまこそ高まる『資本論』の重要性。1から7章のタイトルは、資本主義は命を奪う、まやかしの金融工学、価値は労働から生まれる、新自由主義者は頭が悪い、ソ連はなぜ崩壊したのか、マルクス経済学の重要性、『資本論』をどうよむか。

    鎌倉のあとがきは、資本の支配を終わらせるために。
    金融工学というのがまやかしだという点には、理屈はわからないなりに、直感的に同感だ。あとがきで対談の過不足を振り返っているのが面白い。

    それにしても、やはり資本論はむつかしそうだ、興味はあるが、自分には時間とらないほうが良いかも。

  • 佐藤優氏とその恩師の鎌倉氏の対談。
    正直分からない。社青同やら、その時代の活動家だったのであれば分かるかもしれないが、初読者には分からない話ばかりだった。
    佐藤氏の思想が匂ってきて、正直きつい。

  • 途中で挫折。

  • マルクス主義に関する対談
    「資本論」の読み方や書かれた背景などの詳説
    資本主義の限界、また労働力の商品化をいかに避けるか
    『労働力を商品として他人(資本家)に売るーーそれは自分の労働力を自分で使わない(使えない)で他人に使われる、他人の指示に従って労働しなければならない、つまり他人に支配されるということである。[中略]それは労働者が自分の労働力を使うのに必要な生産手段(土地、原材料、機械設備等)を持っていない、奪われているからである。』(あとがきより)

  • 【由来】
    ・佐高信との対談本(「世界と闘う『読書術』」)で言及されてて、調べてみたら意外と早く借りられることが分かったので、という感じ。

    【期待したもの】
    ・マルクスを読んだことがない。何となく把握しておく必要がありそうな気がしてきたので、その扉となってくれることを期待した。

    【ノート】
    ・「資本論」を実は読んだことがない。そんな自分にとって、資本論が今日、どのようなポジションにあるのかを対談形式で分かりやすく示してくれる良書だった。「資本論」への興味も喚起された。

    ・かつてソ連が西側陣営の対立軸として存在していた時は、資本側も、革命だけはイヤなので「譲歩」して自重していたが、今はそのタガが外れている状態。最近だと、イスラムの世界が対立軸としての存在感を増してきているということになるのだろう。

    ・「協同組合的なところの農場でつくっているものがあるとしたら、少し高いけど、それを買うとか。経済合理性に反する行為をあえてすること(P113)」が変革につながるという辺りは分かりやすかった。例えば安くておいしいコメが入ってきても、高くても国産のコメを買うというようなことで、今の資本主義社会の因果関係によって記述される歯車のような存在で在りたくなければ、その因果律に従わないということも必要だろう。ちなみに、これは岩波ジュニア新書の「動物を守りたい君へ」でも提唱されていた。それは資本主義がどうこうという話ではなくて環境保護という視点からではあったが、それでも根っこにあるものは共通している。

    ・188ページで読了に2時間。巻末の参考文献リストはあんまり充実したものでない。ただ、岩波の軽座学小辞典や哲学小辞典の存在を思い出させてくれたことが収穫。ちなみにブックオフで調べたら、ビックリするほど安かった。<a href="http://goo.gl/qdC6uu" target="_blank">哲学小辞典</a> <a href="http://goo.gl/Y4w6oT" target="_blank">経済学小辞典</a>

  • 佐藤優は、金日成や黒田寛一まで読んでいる。
    ほかにも、多数、本を読んでいる。 とにかくすごい人物である。
    鎌倉孝夫は、その佐藤優が高校時代に資本論を教えた先生である。
    あまりにも、両人のハイレベルな対談に私は、ついていけませんでした。 最後のほうの新左翼の歴史のような部分は、貴重な話ではないか。

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著者プロフィール

1934年東京に生まれる。1961年東京大学大学院経済学研究科博士課程を修了。埼玉大学・東日本国際大学名誉教授。経済学博士。

主な著書 
『資本論体系の方法』(日本評論社、1970年)
『スタグフレーション』(河出書房新社、1981年)
『国家論のブロブレマティク』(社会評論社、1990年)
『資本主義の経済理論』(有斐閣、1996年)
『世界経済危機の構造』(長周新聞社、1998年)
『究極の擬制経済』(長周新聞社、1999年)
『株価至上主義経済』(御茶の水書房、2005年)
『“擬制”経済下の人間・人間関係の破壊』(長周新聞社、2008年)
『「資本論」で読む金融・経済危機』(時潮社、2009年)
『資本主義の国家破綻』(長周新聞社、2011年)
『帝国主義支配を平和だという倒錯』(社会評論社、2015年)

「2017年 『トランプ政権で進む戦争の危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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