愛国者の憂鬱

制作 : 長嶋 りかこ(ブックデザイン) 
  • 金曜日
3.64
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本棚登録 : 135
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784906605958

作品紹介・あらすじ

教授、右翼と何の密談ですか?脱原発、天皇制、音楽の起源-。世間がアベノミクスに浮かれ、レイシズムの言葉が飛び交う中、危機感に駆られた2人が緊急会合!10時間にわたり思いを語り尽くした。

感想・レビュー・書評

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  • 左翼の教授と右翼一水会代表という異例の組み合わせの対談だが、全く違和感が無い。その訳は二人とも真の愛国者(この本では愛国とは自国愛のこととして使われており、他国憎になるから使うのが難しいとされ、もっともだと思うが)だからだろう。日本を愛するのであれば原発反対は当たり前の結論である。また、最近の偏狭的ナショナリズム傾向に警鐘を鳴らし、この愚かな行為がどれほど惨めな行為でもあるかを諭す。今でもYMOを聞き、天皇とこの国土を愛しく思う私としては、実に的を射た本である。くだらない反韓だか嫌中だかの本を読んで、自己満足に陥り溜飲を下げている読者とその著者には是非とも読んでもらいたいものである。

  • 右翼、左翼と名称は知ってても、ピンとこないくらいに疎い私だが『愛国者の憂鬱』なんて、題名は好奇心がそそられる。鈴木邦男、坂本龍一互いに名前や活動は知っていたもののある日反原発の国会前の運動で言葉を交わすことに.初めての対談に加え二度目の対談。『君が代』から世界の音楽の成り立ちや国民性、宗教の関係。右翼、左翼と言えども十把一絡げにしてしまいやすい日本人の国民性の怖さ。世界中でマスコミについて信用度合いが大きな日本人の今の声のあり方とネットの関係性.編集者として小田実を輩出させ、多くの知識人との交流のあった坂本龍一の父.子ども時代から見聞きした坂本龍一の考え方への影響や鈴木邦男との意外な共通点.多岐にわたる対談は怪しげな題名に偏見さえ抱かなければ非常に興味つきない話題の数々。テンポよく進む会話を楽しんで頂きたい。

  • ふ~ん、、、

    金曜日のPR
    「脱原発から、「日の丸・君が代」、ヘイトスピーチ、天皇制、三島由紀夫、高橋和巳、小田実などなど
    文豪をはじめ、音楽の起源まで語り尽くす。
    “至近距離で見た鈴木さんの目の、なんと穏やかなこと。
    もう少しで仙人になってしまいそうな目です。
    こんな優しい目をした人にあった記憶がありません。"坂本龍一
    “坂本さんのお父さんの一亀さんは多くの作家を見いだし、育て、多くの作品を作った。
    でも、この世に生み出した最大の作品は「坂本龍一」だと思う。"鈴木邦男
    出版社からのコメント
    坂本龍一の「日本への思い」があふれ出た。
    「世界のサカモト」と新右翼の理論派が激突! 二人には大きな接点があった・・・」
    鈴木邦男をぶっとばせ!
    http://kunyon.com/index.html

  • 坂本龍一が父と父から受けた影響についてここまで率直に語っていることは他にないのでは?

  • 愛国の憂鬱 坂本龍一 鈴木邦男 金曜日

    共感できる部分も多々あるけれど
    根幹のところがズレているので
    共鳴するわけにはいかない
    反発する気はないが
    全体があって部分がある的な
    及び腰には道を譲る以上に
    同調することはできない
    社会とは個々人の意思があって
    それを踏まえた上で
    家族があり友人があり
    地域が広がりながら地球全体へと
    段々抽象的な関係になって行くべきで
    大が小を力尽くで
    支配搾取させてはいけない
    この関係を利己心によって
    踏み外してしまうと
    自ら恐怖政治に陥ってしまうことになる
    つまり
    天皇だの王だの神を頭に据えることで
    安全圏を作ってしまうと
    腰がひけてしまい自滅すると言うことだ

    大自然の森や大木の成り立ちを見れば
    一目瞭然である
    根や幹は花や枝葉を支えているのであって
    決して搾取支配することはないのである

  • 2015.7記。

    坂本龍一と鈴木邦男。「国土を守りたいから反原発」の一点において成立している対談本。賛成・反対の立場を問わず、原発論としてはほとんど目新しい議論はなく、率直に言って退屈だった。だが、例えば幕末・明治の混乱期、日の丸を掲げて菊のご紋の皇軍と戦ったのは賊軍のはずの会津藩士だったとか(さすが「八重の桜」の坂本さん)、「君が代」には当初何種類も旋律の案があって、とくに英国人の考えた讃美歌風のバージョンが美しい、とかいったエピソードがむしろ興味深かった。

  • 右か左か片足ではなく両足で立ち自分の重心のありかを意識しながら話をしている。勿論、政治的な局面ではなんらかの意思表明が必要になり重心よりも結論が前に出がち。妥協的態度では失うばかりかもしれない。そのような態度は慎めというかもしれない。しかし、相手の帰結のベースにあるものに本当に双方了解可能な感覚はないのか率直に話してみることは大切だ。こういう時に、弁論術などの術や駆け引きを持ち込むことなく相互に耳を傾け合うことは大事だと思う。そのことをやってみせるリスクを負ってこういう対談に臨んだ姿勢は見習うに値する。

  • ぼくは鈴木邦男さんという人を知らなかったですが、本書のあまたの発言から、教養があり自分の言葉があり、激しい感情に流されたりせずに、冷静に、理知的に考えることのできる人だという印象を持ちました。一方の坂本龍一さんも、話し相手を得たりといった体で、いつも以上に普段着に感じられる深みのある博識さと、聡明な思考のありさまをみせてくれる。坂本さんは高校生の時に学生運動をやってたこともある人なので、右翼の鈴木さんとは、必然的に左翼や右翼の話題になるのがおおかったです。その他、鈴木さんの興味に応えるかたちで、坂本さんは音楽の起源についてや、アラブ音楽に関する雑学話や、自身が出演された『ラストエンペラー』の撮影秘話などを話している。途中、各々の若いころのルーツをしるにつけ、そのめちゃくちゃさになんともコイツらけしからんやつらだ、なんて思ってしまった。でも、若い時なんてそんなもんなんですよね、多くの人が。そういうところを隠したり否定しつくしたりせずに、受け入れて今ってものがあるっていう感覚が良かった。

  • 対談集
    バリバリのウヨクのはずなのに、サヨクの人とも、とても話の合う鈴木邦男さんに興味があって、図書館の本棚で見つけ借りる。
    怖いはずの人なのに、今はとてもとてもいい人に思える。
     
    坂本さんの復活、待ち望んでいます。

  • 音楽家・坂本龍一と右翼・鈴木邦男の対談。脱原発、日の丸君が代、憲法、生い立ち、音楽等について語る。鈴木邦男は右翼の代表的な人物だが、現状の愛国主義には違和感を感じているらしい。よくある話として、日本の体制について批判すると、すぐに「愛国心は無いのか」という方向へ議論がすり替えられ、また、ネットに過激な意見を書き込むネット右翼のような人達が増えたことを憂慮している。例えば、大阪の女子中学生が在日韓国人の方達を批判するビデオを世界中に流されて不快感を感じているし、安部首相の積極的平和主義も言葉と行動が正反対で、この強引なやり方を心配している。この風潮は、今後の日本の目指す方向性が国民で共有されていないことに起因していると考えているようだ。
    この本を読んで、愛国心について考えさせられた。以前、知人に尖閣問題で意見したら「愛国心が無いね」と指摘されたことがあり、愛国心とは何か考えたことがある。愛国心とは、この国に住んで良かったという純粋な気持ちから芽生えるものであり、他人や国から強制されるものではない。国民の経済負担を増やし、他国との対立感情を煽るような政府の政策では、国民に愛国心を求めるのは難しいと思う。

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著者プロフィール

さかもと・りゅういち:1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京藝術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、細野晴臣、髙橋幸宏とともにYMOを結成し、シンセサイザーを駆使したポップ・ミュージックの世界を切り開いた。83年の散開後は、ソロ・ミュージシャンとして最新オリジナル・アルバムの『async』(2017)まで無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasyo」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。「東北ユースオーケストラ」など音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動もおこなっている。2006年に「音楽の共有地」を目指す音楽レーベル「commmons」を設立、08年にスコラ・シリーズをスタートさせている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)など著書も多い。

「2021年 『vol.18 ピアノへの旅(コモンズ: スコラ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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