- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784906681396
感想・レビュー・書評
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世界観が独特で、この本は理解するんじゃなくて感じるままに読む本だと思い読み進めたけど、何度も寝落ちして読むのに時間がかかったな。
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決して明るくない状況も軽快に語ることで、こんなにも救われる。どちらかというと「失敗」している人たちのほとんど大きな成功のない物語なんだけど、絶望し切らず生きる方へ踏み止まる。それぞれの章のタイトルも文章もユーモアあふれていて、ウィットにとんでいて、なんだ結構人生って面白いじゃんと。各章のタイトル、フォントが平野甲賀さん!!よき。
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こんな斬新な表現方法を私は今まで知らなかった。
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韓国文学の短編集。
どうしようもなくままならない、どこか気だるくて、けっして良くはない日常からも、ほんのりとした希望を漂わせるような話が多い。
するすると、ものすごくありえない描写が、しかもなんの変哲もない風を装って、次から次へとはらはらと舞い込んでくる。ので、勢いに付いていくのが難しくて、読んでいて割と辛かった。このスタイルに乗っかるには、私にはぬるいアルコールが必要だったんじゃないだろうか。ついつい素面で読み切ったけれど。
幻想文学と読んでもいいくらい奇想天外な話が続いていたけれど、最後に収録されている作品は地に足がついていて読みやすく、とても刺さった。 -
読み初めはなんてアホらしい表現なんだ?と思いました。大人の知識と子供の想像力が混ざったような文章。
読み進めるとポップな表現の中にズシンとくるような物語。正直自分も深刻な出来事を自分でも頭の中でくだらない表現に置き換えて消化しようとすることがありますがそれと似てい流ような気がします。
特にたぬきの話が周りに起こっていた出来事とリンクしてモヤモヤしました。いきなり落とされたような気分でした。
この本で何か得られるものは無いですが、この本から現代の韓国を感じ取ることはできたと思います。
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声出して笑えるところもたくさんあって面白いのだけど、熾烈な資本主義社会のなかで生きる人々とともに暮らすような短編集だった。
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文学
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第1回の翻訳大賞受賞も納得。内容自体も良いが、韓国の現代小説が日本で紹介された意義も大きい。訳者が後書きで書いているが「韓国には日本の本のコーナーがあるが日本では韓国の本は読まれていない。」翻訳本自体に人気がないが、その小さい市場も英語、主に米国文学に偏っている。
韓国文学というと、朝鮮戦争などの歴史や文化を背負っているイメージがある。米国文学のポール・ユーンの「かつては岸」であっても、移民だからなおさらルーツにこだわったのかもしれないが、韓国という国に色濃く言及している。
本書は現代小説として普遍的だ。韓国は背景の一部にすぎない。表題作のカステラで、両親やアメリカを放り込んだ冷蔵庫にキムチも入っている、という扱いだ。その点が村上春樹に共通している。(レビューに「村上春樹に似ている」というコメントが散見される。私は小説として似ているとは思わないがハルキチルドレンではあろう。)ユーモアの効いた奇想系の短編集で、日本でも中国でも米国でも、国を問わず楽しく読まれるだろう。しかも、サラリーマンの窮屈な人間関係や殺人的な満員電車などのテーマは、欧米より日本でより実感を持って読まれるのではないか。作家が取り上げる底辺で喘ぐ若者たちが住む社会は、閉塞感が増す現代の日本とよく似ている。
日本版のボーナストラック「朝の門」は、粗さもあるがリアリズムの手法で書かれた迫力のある一作。次作以降も日本で翻訳されるよう期待している。 -
妙なファンタジーである。初期の春樹に似てるなという印象。カンガルー日和を思い出した。タヌキとかキリンとか、動物はなんのメタファーだろうか。カステラに象徴される、ふわふわしたナンセンスさ。その中に仕込まれる現代韓国のリアリズム。
韓国が舞台である本を読んだのは初めてだ。登場人物は進学しても就職に困っている普通の青年であったり、だらだらとした人間関係を続けたり、世界や時代を飛び越えたり。ああ、兵役があって、メンタルが変わって戻ってきたりするんだなとか。ベトナムのボートピープルが吉祥寺のスワンボートに出現する日も近い。
お隣の国のそういう現状を知る機会はなかなかない。ダイオウイカって流行ってるのか、アイヴァス『黄金時代』にも出てきたな。
最後の一作『朝の門』の集団自殺にあぶれた青年の置いてけぼり感は毛色が違うがたしかに出来のいい短編。賞をとったこの一作は原書にはなく日本だけのボーナストラック。
翻訳大賞授賞式で日本人の翻訳者が「日本に一番近い外国文学です」と熱弁をふるっていたのが印象的。そういえばこの表紙には翻訳者の名前が載っていない。
一部の人々による差別が当然のように目の当たりにする昨今、彼らの本がなぜ読まれなかったのか、このタイミングでの翻訳大賞の受賞はそんな日本の現状を打破したいという願いもあることだろう。