70年代シティ・ポップ・クロニクル (ele-king books)
- Pヴァイン (2015年8月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784907276362
感想・レビュー・書評
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インターネットのない70年代の日本で、どのように「洋楽」が聴かれていたのか。その様子が垣間見える「まえがき」だけでも一読の価値はあるかと。限られた情報量で、誤解を含む独自解釈で海外の音楽を取り入れて自分たちの音楽を作ろうと試みた音楽家たちの当時の闘いの記録が、1人のリスナーの目線で丁寧に綴られていて脳内に70年代の音楽風景が広がる。
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2020/12/5購入
2021/1/8読了 -
70年代の邦楽ロックを中心としたディスクガイド。
正直、この時代は洋楽は聴いたが邦楽は全然知らなかった。言っちゃ悪いがダサいイメージが先行しすぎて、聴く気にすらならなかったからだ。
自分もギターを弾いているが、この界隈にまで目を向けられるレベルのプレイヤーではない。
本書はいくつかのアルバムと、それがどのような経緯で作成されたかの概略、関連するディスクの紹介がなされている。
今は便利なもんで実際に曲を流しながら読み進めたが、細野晴臣すら名前しか知らないっていうレベルの自分にとってはこうもこの年代のシーンが刺激的で先進性があったもんかと驚いた。
今やってることが完全に焼き直しだと思わされるような曲、アルバムも多々である。なんではっぴぃえんどが神格化されているのかも充分にわかった。定型にはまっている今のロックミュージシャンの大半が過去の遺産で食ってるだけかもしれんと思わなくもない。
なんだかんだ今でも生き残ってるミュージシャンは若いときからすごい。
あくまで本書はピックアップされた作品は著者の個人的な意向によるところが大きいから(いくらなんでもはっぴぃえんどのメンバーの名前が出すぎである)、ここにない中にも当たり前だが自分が知らないだけで名盤はいくらでもあるのだろう。
本のタイトルから想像した内容とはだいぶ違ったが(人によっては肩透かしもいいところだろうが)、視野が広がった感じはあるのでまたこの辺のことは掘り下げていきたい。 -
シティポップのお勉強、第一弾。
ド素人には、この本が一番わかりやすかった。入門編。小難しくなく、今でこそ音楽評論家である萩原少年が、若き日に鳥肌が立つほど高揚した音楽体験を、熱さめやらぬ口調で教えてくれる。知らない名前ばかりなので、ノートにメモしながら、音源を確認しながら読み進めていくうちに、同じような名前が何度も出てくることに気づく。
細野晴臣、大滝詠一らはっぴいえんど、からのティンパン系への流れ、センセーショナルなユーミンの登場。バックコーラスをつとめていた山下達郎や矢野顕子らシュガーベイブ…。
どれどれと聞いてみると、これがまた、かっこいい。
今聞いても全く古びない、歌謡曲でもフォークでもない、ロックの要素をふんだんに取り入れたポップミュージック。シティには、やっぱりシティの良さがある。時代と共に変化してきたトーキョーの街の文化を、もっと知りたいと思った。
また、作者がこれらの音楽が大好きなのが伝わってくるのが良い。気取った評論や下世話な裏話よりも、大好きな音楽のどこが良くてどこがカッコイイか、目をキラキラさせて語っている人の話は、聞いていておもしろい。
渋谷にある名曲喫茶ライオンの隣りにあるロック喫茶が、そんな音楽青年たちの青春のたまり場だったとは。
いつかいつか、誰かに連れて行ってもらいたい。
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はっぴいえんどが本盤で作り上げた“風街”の風景とは、そういったものだ。ある種の諦観のもと、渦中にあることを拒絶する心の在り方と、高度経済成長の掛け声のもと、もう現実には失われてしまったノスタルジックな東京の情景。この、屈折に満ちたアイロニカルな穏やかさが、“シラケ”気分蔓延以降大きく変わろうとしていた時代の気分の鮮やかさに先取りしていた。(風街ろまん)
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この時期注目を集めるようになった新しい日本のポップ・ミュージックに関しては、送り手と受け手両者が、確実に何か変わりつつある“場”の空気を共有しているという実感があった。前述したような“肌触り”をベースに、自分の言葉を自分のメロディに乗せて表現する日本人アーティストたち。彼らは“場”を共有していた聞き手たちと微妙な目配せを交わしながら、あの時代ならではの誤解や屈折すら味方につけ、少しずつではあったが、マジカルな名盤をひとつ、またひとつと生み出していったのだ。