闇を泳ぐ 全盲スイマー、自分を超えて世界に挑む。

著者 :
  • ミライカナイ
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本棚登録 : 77
感想 : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907333225

感想・レビュー・書評

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  • 強い人やな。
    すごい努力して金メダルとってるのが伝わった。
    良いことばかりでなく、挫折や苦悩も乗り越えてやってきてるんだなと感心した。
    障害をもってるからと見てまうけど、みんなその世界で生きてるからそれが普通で、下にみたり、不憫に思うのは他人の勝手な評価やねんな。
    誰に対してもそう。
    たとえ子供でもどうしようもない人でも、人それぞれ一生懸命生きてるから、否定せずに認めてあげないといけない。
    たくさん考えさせられた。

    あとがきは今まで見た本の中でも、群を抜いて素晴らしい。このあとがきを越えることなんてないと思えるくらい心に響いた

  • 金髪のバティー教授は、「彼は「チャレンジ・パーソン」よ」と、僕に紹介した。僕は、意味が分からず「彼は、何にチャレンジしているのか?」と、聞くと、一瞬、沈黙が訪れた。教授室の窓から赤く色づいたメープルリーフが揺れていた。「彼は何事にもチャンレジしている」と、彼女は微笑んだ。

    2004年の出来ごとだ。僕はカナダのトロントに留学していて、一緒に医学教育のワークショップをやってくれる仲間を探していた。教授秘書が、彼を連れてきた。彼は、電動車いすに乗り、僕に握手を求めてきた。僕は、慌てて左手を差し出した。この時、身体に障がいがある人を「challenged person」と言う呼び方もあることを初めて知った。紹介された彼は、右半身麻痺があるようだったが、すべてにおいて積極的な挑戦的な人であった。
    挑戦する人、それが木村敬一だ。全盲スイマー、東京パラオリンピック金メダリスト。幼少期に7度の手術をしたが全盲になるが、まったく性格は変わらず元気で明るい子。6才から寮生活、負けず嫌いで、イアン・ソープにあこがれて水泳にのめり込む。

    12才で単身、上京し、水泳部に入るが、やんちゃな学校生活が始まる。失礼だが、本当に笑えるエピソード満載だ。視覚障害児の寮生達が、夜中に寮を抜け出す! 危ない、危ない、腹をかかえて笑った。高校の夏休みには、白杖をつく木村と同じく視覚障害の親友ふたりで、ローカル線を乗り継ぎ福島に旅行に行く…、さてさて、どんな展開になるか…と、本を読んでゆく。大学時代の初恋のようなエピソードも…。やばい、面白すぎて、ネタばらしになるから、これ以上書かない(笑)。

    人には武器が必要だと思い、自分の武器を増やしていくことが生きていくことだと思う彼。水泳は、そんな「武器」の一つと、木村は言う。でも、僕は、思う。木村敬一の最大の武器は、水泳ではなく「Challengeし続ける姿勢」だと思う。アスリートとして、早期に注目されたが、過大な期待と重圧に苦悩し、ボロボロとなる。金メダル候補となるが、北京、ロンドン、リオでは逃し、単身アメリカへ。ライバル、友人、サポーター、そして、新型コロナウイルス…。

    この本は、2021年の8月に発売されたので、彼が再起して金メダルを取ったという話は出てこない。つまり、成功物語、自慢話のストーリーではない。『闇を泳ぐ』意味は読み進むと納得できる。皆が寝静まった深夜、僕は読み終えた。最後の数ページ、泣きながら読んだ。窓の外には、漆黒の闇に、長崎の夜景が輝いていた。

  • パラリンピックで大活躍した木村さん、まじめでストイックな感じでしょ?でしょ?

  • 木村さんらしさが詰まった素敵な一冊。

  • 最の高。どんな思い出にも必ずトホホエピソードを絡めてくるから、電車で読んでいて笑ってしまうもマスクで助かった。見えるとか見えないとか関係なく、チャレンジし続ける気持ちが大事なんだと

  • 幼少期のところでは、とてもポジティブな人だなと思ったけど、
    ロンドン→リオ、とその後は、きつかったって書いてあって(計り知れない努力をしてるアスリートにとっては当たり前なのかもしれないけど)4年間かけて目指してきたものを手に入れることができない苦悩は計り知れないなとか、自分もこれからの人生長い期間かけて努力しても手に入れられないものがあった時、木村さんみたいに強くいられるかなと疑問に思った。
    アメリカに行くのに明確な根拠はみつからなくて、でも環境は変えたくて、っていうのが少し自分に重なって面白かった、自分なんてしょぼいけども。
    ビザの話も語学学校あるある〜と思いながら読んでた(笑)

  • 読んだきっかけは、日経新聞で紹介されてたのと、TVのトーク番組で見て面白い人だなぁと思ったことがきっかけ。

    内容は主に、木村さんの人生を振り返っていく自伝。

    読んでいくと、全盲という障害があるからと言って特別なことがある訳でもなく、普通の人と同じように生活し、同じような事を考えてるんだなぁと思った。
    (実際にはそうじゃないかもしれない。でもそう思わせるくらい、本当に普通の日常をおくられてた)

    私自身もスポーツをやっており、競技に対する考え方や悩み等について共感する点もあり、凄く身近に感じられた。


    読んだ後に熱くなる、やる気が出るというより、何だかホッとする気持ちにさせてくれる本でした。

  • 明るく度胸があり素直な著者の人柄が伝わる。
    タイトルだけ聞くと「大変な苦労をしたってことかな」と思うが、それは「闇」にネガティブなイメージを晴眼者が持っているからで(「闇に葬る」「闇市場」「闇取引」など「闇」のつく言葉にポジティブなものはほとんどない)、全盲の人にとっては闇が普通、暗くも怖くもない、希望に満ちた世界なのだ、と著者は書いている。
    だとすると当然このタイトルの意味も違ってくる。
    暗い中を不安と恐怖にさいなまれながら泳ぐのではなく、温かくて居心地のいい場所で希望を抱きながら進むということ。
    そういう発想の転換ができるのも良いと思う。
    著者の木村さんが気負わない人である上、障害を苦にすることもなく全体に明るい雰囲気はあるものの、不眠症に苦しめられたり、アメリカで言葉も通じない中で悪戦苦闘したりと苦労もあった。しかし、それでもチャレンジして克服していく姿は、勇気を与えると思う。
    著者がまだ若いので、これからもいろいろなことがあると思うが、また書いてくれるといいなと思う。
    視覚障害のある人の水泳が、晴眼者の水泳とどう違うのかも初めて知った。泳ぐこと自体は同じなのだから同じだろうと思っていたが、コースロープに手が当たる感覚を頼りに泳ぐとか、「タッパー」と呼ばれる人がターン地点とゴール地点にいて距離を知らせてくれる、など。
    タッパーがいないと水を掻く回数を数えて壁までの距離を考えながら泳ぐ(ためタイムは落ちる)が、数え間違うと壁に激突したり突き指したりしてしまう。全力で泳ぐためにはタッパーが必要だが、タッパーが下手だとタップしそこねてやはり壁に激突してしまう。マラソンの伴走も大変そうだが、タッパーにも大きな責任がある。

    『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』の白鳥さんも言っていたけど、木村さんも「目が見えるようになりたいか」という問いにNOと答えている。
    外国に行っても相手の身振り手ぶりや表情がわからないと、会話力だけの勝負になるというハンデはあるが、逆に相手がどんな人種だろうと年齢だろうと見た目だろうと、自分と合う人と仲良くなれるのはいいな、と思うし、それだけ見える人は偏見を持ちやすいということを忘れてはいけないなと思う。

  • 全盲のスイマー、木村敬一さんの自伝小説。
    目の病気で何度も手術を繰り返すが、2歳で全盲となり、4歳から水泳を始める。
    6歳から寮生活、中学は東京の盲学校、地元の学校では、世間が広がらないというお父さんが決断した。
    高校、大学と進学し、すでに水泳選手として活躍していたが
    更なる飛躍を目指して拠点をアメリカに移す。
    とんとん拍子に進み、サクセスストーリーのようだが、とんでもない。
    彼は目が見えないのだ。
    トラブルや、事故を数え上げたらきりがないだろうが、持ち物の紛失(盗難も含め)は多々、電車のホームからの転落や、遮断機の中で電車の通過を待っていたなど、命に関わることも。
    でも彼は明るい、前向きだ。
    手を差し伸べてくれる周りの人たちにも恵まれている。それも彼の人徳だと思う。
    生きていく上での「武器」のひとつである水泳に向き合う姿勢もまじめすぎて読んでいて苦しくなるほど。
    「銀や銅のメダルをいくつとっても意味がない」オリンピックにも届かない人が聞いたら、怒りそうなことを言うが、彼にはそう言えるだけの、積み重ねてきたものがある。その自負が言わせる。納得できる。


    最後にお母さんからの手紙が綴られています。
    6歳から親元を離れて行った子供を思う気持ち・・・
    母親の切ない気持ち。
    もうたまりません。

  • 金髪のバティー教授は、「彼は「チャレンジ・パーソン」よ」と、僕に紹介した。僕は、意味が分からず「彼は、何にチャレンジしているのか?」と、聞くと、一瞬、沈黙が訪れた。教授室の窓から赤く色づいたメープルリーフが揺れていた。「彼は何事にもチャンレジしている」と、彼女は微笑んだ。

    2004年の出来ごとだ。僕はカナダのトロントに留学していて、一緒に医学教育のワークショップをやってくれる仲間を探していた。教授秘書が、彼を連れてきた。彼は、電動車いすに乗り、僕に握手を求めてきた。僕は、慌てて左手を差し出した。この時、身体に障がいがある人を「challenged person」と言う呼び方もあることを初めて知った。紹介された彼は、右半身麻痺があるようだったが、すべてにおいて積極的な挑戦的な人であった。
    挑戦する人、それが木村敬一だ。全盲スイマー、東京パラオリンピック金メダリスト。幼少期に7度の手術をしたが全盲になるが、まったく性格は変わらず元気で明るい子。6才から寮生活、負けず嫌いで、イアン・ソープにあこがれて水泳にのめり込む。

    12才で単身、上京し、水泳部に入るが、やんちゃな学校生活が始まる。失礼だが、本当に笑えるエピソード満載だ。視覚障害児の寮生達が、夜中に寮を抜け出す! 危ない、危ない、腹をかかえて笑った。高校の夏休みには、白杖をつく木村と同じく視覚障害の親友ふたりで、ローカル線を乗り継ぎ福島に旅行に行く…、さてさて、どんな展開になるか…と、本を読んでゆく。大学時代の初恋のようなエピソードも…。やばい、面白すぎて、ネタばらしになるから、これ以上書かない(笑)。

    人には武器が必要だと思い、自分の武器を増やしていくことが生きていくことだと思う彼。水泳は、そんな「武器」の一つと、木村は言う。でも、僕は、思う。木村敬一の最大の武器は、水泳ではなく「Challengeし続ける姿勢」だと思う。アスリートとして、早期に注目されたが、過大な期待と重圧に苦悩し、ボロボロとなる。金メダル候補となるが、北京、ロンドン、リオでは逃し、単身アメリカへ。ライバル、友人、サポーター、そして、新型コロナウイルス…。

    この本は、2021年の8月に発売されたので、彼が再起して金メダルを取ったという話は出てこない。つまり、成功物語、自慢話のストーリーではない。『闇を泳ぐ』意味は読み進むと納得できる。皆が寝静まった深夜、僕は読み終えた。最後の数ページ、泣きながら読んだ。窓の外には、漆黒の闇に、長崎の夜景が輝いていた。

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