フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ 増補新版世界を信じるためのメソッド

  • ミツイパブリッシング (2019年12月10日発売)
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本 ・本 (192ページ) / ISBN・EAN: 9784907364137

作品紹介・あらすじ

映画「FAKE」や新作「i-新聞記者ドキュメント-」でメディアの本質を暴露し続ける著者が、ポスト真実の時代にますます必須のメディア・リテラシーを中学生向けにかみ砕いて綴る。「よりみちパン!セ」シリーズ『世界を信じるためのメソッド』に、SNSの影響など今日的話題を加筆。親子でフェイクニュースに強くなれる1冊。

感想・レビュー・書評

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  • ドキュメンタリー映画監督、作家の著者が、小中学生に向けて「メディア・リテラシーを身につけることは、いま自分たちが生きるこの世界を良くすることだよ」と語りかける。
    内容も語りかける口調もかなり良いのだが、やっぱり初版が2006年のものを改筆していったもののため、インターネットのことがほぼ書かれていない。今の子供たちに勧めるにはインターネットやSNS情報がもっと多いほうがいいなあ、同じような本はないだろうか。

    ●メディア・リテラシーとは?
    メディアは情報を伝える手段。リテラシーは「識字」。メディアを批判的に読み解く、とか、主体的に受け取るというような意味。情報をそのまま信じ込まずに、いろいろな視点から考えたり、分析して取り入れること。
    正しい世界観を持つためには、メディア・リテラシーを身につけよう。

    ●メディアが正しいとは限らない。メディアの流す情報自体がプロパガンダや思い込みを誘発させる場合もあるし、メディアも商売なので売れるために煽ることもあるし、メディア発信者が騙されて間違えた情報を流してしまうこともある。
    メディアには人を動かし、世界を変え、悪くすれば人を殺す力もある。メディア・リテラシーとは自分たち自身のために必要なもの。正しくメディアを見たり聞いたり読んだりすることは、この世界について正しく見てそこから自分で考えるということ。

    ●メディア発信者が正しい情報を流したとしても、流し方、順番によって受け取り方は異なってくる。「AだけどB」という内容を出したら、受け取りてはBの印象を強く持つ。
    事実を伝えても、背景の映像や、音楽により、受け取り手の印象が変わることもある。

    ●テレビ局や新聞社が、刺激的な情報の伝え方をするのは、そのほうが視聴者が増えて商売になるという面がある。
    自分たちが有意義な情報を求めれば、メディアもそのような方向になる。

    ●メディアでいう「中立性」とは「AとBの中間」ということだが、そもそもそのAとBの概念が人によって違う。

    ●「カメラで映像を伝える」ことは情報が伝わりやすいが、それは「カメラが撮らなかったものはなかったことになる」でもあるんだよ。

    ●真実は一つではない。人の数だけある。一つのものが全く違う面を持つこともある。世界は多面性で多重的で多層的なんだから、自分の信じたいことで周りを固めるのではなく、いろいろな情報を多角的に考えて判断材料にしよう。
    その有益な情報に触れることが、自分たちで、自分たちの生きるこの世界を良くする第一歩だ!

  • スマホやパソコンが蔓延る現代社会。
    そんな時代に生きる自分達が問われるのはメディア・リテラシー、ということでこちらの本を読んでみました。
    子ども向けに書かれている本なので優しい言葉が多く、理解しやすい。
    なぜ遠い国のことを知らなければいけないのか、情報を知る際のメディアとは、批判的なニュースの読み解き方。
    様々な視点でメディアとの付き合い方を教えてくれる。

    普段何気なく見ているテレビやネットニュースも、その媒体を構成する人や団体の意識が否応なく入り込む。
    著者は「中立」で公正な位置を目指すのを否定しないと著書で述べている(が、自分としては幻想・理想にすぎないと思う。実際視聴率が重要視され、本質的な矛盾を抱えたままである。)
    著書の中では松本サリン事件を例に、誤報や冤罪についても触れていた。
    冤罪が生まれた時、メディアが悪いと断罪するのは簡単だが、囃し立てる我々視聴者・一般市民もまた加害者となりうるのかもしれない。
    視聴者やスポンサーに配慮せざるを得ないテレビ媒体は、偏向報道が顕著だろうな。
    ただ漠然と情報を受け取るのではなく、多面的に物事を見たり別の媒体から情報を得たりと意識を変えることが必要だろう。

    この本を読んでつくづく思うのは、「正しさ」とはなんだろうということ。
    罪を犯した者は人生の全てが悪人だったのではない。
    かといって犯した罪については同情の余地がないものもある。
    それを裁判で裁くのだが、法のあり方、モラルについても時代によってアップデートしていくべきであるし、実際に変わっていっている。
    全てが流動的で、人が正しさを盲目的に信じることへの怖さを感じた。
    だからこそ、思考停止して簡単な結論に飛びつく(メディアに踊らされる)のではなく、批判的に多面的に物事を捉えることが必要となるのだろう。

  • 現政権や東京のコイケ知事、大阪の維新が支持されているのは、パフォーマンスとフェイクの所為なんだと思う。若い人に読んで貰いたい、、、

    【新刊情報】森達也『フェイクニュースがあふれる 世界に生きる君たちへ』12月上旬刊行予定
    https://mitsui-publishing.com/newrelease/fakenews

    フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ 増補新版世界を信じるためのメソッド | ミツイパブリッシング
    https://mitsui-publishing.com/product/fakenews

  • 学齢期の子ども向けの本です。
    しかし、この内容は大人であってもハッとするもの。
    毎日眺めているニュースを、ただぼんやり見ているだけでは気づくことができない、ニュースの嘘…。

    実は、報道側が捏造しようと思っていなくても、報道というのは嘘が混じってしまう。
    それはなぜかというと、ニュースも人が作るから…。

    カメラを向けたり、写真を撮ったり、写されているものしか見ていないと、映されていないものを無かったことにしてしまう。
    ニュースの特性を知らないと、最悪の場合、人の命を奪うことになる。
    メディアによって戦争を扇動された過去を持つ私たち。
    その戦争を引き起こしたのは私たち自身でもある。
    メディアが私たちの求める報道をしていることを忘れてはいけないと、強く思いました。
    今を生きる誰もが読んでほしい。

    語りかける口調も心地よく、学ぶことの多い本です。

  • ◆万人向きのメディア・リテラシーの入門書

    「メディアは人だ。だから間違える」「キミが知らないメディアの仕組み」
    「真実はひとつじゃない」など、メディアの大切さ、その付き合い方・使い方を、
    やさしくわかりやすく指南してくれます。

    2006年発行と少し古い本なので、SNSの問題には触れられていませんが、
    それ以前の大前提として、メディアというもののあり方を教えてくれる、
    入門書としては、いまや(早くも?)古典的名著と言えるかもしれません
    (調べてみたら、その後、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』のタイトルで、
    SNSの影響など今日的話題を加筆した増補新版が、別な出版社から出ていました)。

    著者は話題作・問題作を多数生み出して来た映像作家。
    執筆活動も旺盛で、ノンフィクションやエッセイ集を中心に単著約50冊。

    本書は、学校でも家でも学べない、中高生が知りたい、寄り道的で、
    しかしリアルで大切な知恵を満載した『よりみちパン!セ』というシリーズの1冊。
    著者も、他に『いのちの食べかた』という本を書いています。
    大人が読んでも気づきのあるシリーズです。

    100冊以上ある本シリーズは、版元が理論社から、イースト・プレスに変わり、
    いまは新曜社から出ています。
    ユニークなライン・ナップが多いため、全部ではありませんが、
    絶版にならず版元が行き詰まっても、他の版元に引き継がれているのです。


  • 内容はマスメディアの実情を踏まえて、ニュースをどのようにみていけばよいのか、書かれている。
    歴史も踏まえて、書かれているので、大変素晴らしいです。
    正直、答えがない書き方してるので、違和感がある人はあるかもしれないです。
    こども向けに書かれているので字体も読みやすく、読みやすいようになってます。
    読んで、改めてメディアの見方や問題点などを認識するようになりました。

  • フェイクニュースをよく聞くようになったので読んだもの。ドキュメンタリー映画などの監督として知られる著者によるメディアリテラシー、ジャーナリズムについて考える本。ニュースはどのようにして作られているのか、その中に隠されている意図とは。中高生向けでやさしく書かれていてわかりやすい。

  • 世の中、特にネットの世界にあふれるフェイクニュース そしてそのフェイクニュースに右往左往される多くの人々や生み出す連中。その理由とか心理を学びたいなぁと思って読んだけど、ちょっと方向性が違った。

    ニュースを作り出すのは人間で、間違いもあるし方よりもある。だからニュースをうのみにするんじゃなくって咀嚼しましょうね、という話。具体例とか上げながら説明しているのでわかりやすかった。子供に読ませるといいかもしれない。

  • わかりやすさには落とし穴があります 視点が限られるからです「物事は、どこから見るかで全然違う。なぜなら世の中の現象は全て多面的だからだ。多面的というのは、面が多くあること。つまり一つの事実にも、いろんな側面があるということ」
    子どもにもわかりやすいようにルビが振ってあります。
    メディアの人でも理解出来るから、取材に行く前に読まれることをおすすめします。

  • 『すべての情報には、必ず誰かの視点が入っている』メディアの作り方を通して、メディアを疑う事の重要性が見えてくる。

    カメラマンが映した部分、映していない部分。映像や資料の出し方、出す順番で印象が変わってくる事にハッとされられた。

    NDC 361.4

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著者プロフィール

森 達也(もり・たつや) 広島県呉市生まれ。映画監督。作家。テレビ番組制作会社を経て独立。1998年、オウム真理教を描いたドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。佐村河内守のゴーストライター問題を追った16年の映画『FAKE』、東京新聞の記者・望月衣塑子を密着取材した19年の映画『i―新聞記者ドキュメント―』が話題に。10年に刊行した『A3』で講談社ノンフィクション賞。著書に、『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『ご臨終メディア』(集英社)、『死刑』(朝日出版社)、『神さまってなに?』(河出書房新社)、『虐殺のスイッチ』(ちくま文庫)、『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』(ミツイパブリッシング)、『U 相模原に現れた世界の憂鬱な断面』(講談社現代新書)、『千代田区一番一号のラビリンス』(現代書館)、『増補版 悪役レスラーは笑う』(岩波現代文庫)、『集団に流されず個人として活きるには』(ちくまプリマー選書)、『歯車にならないためのレッスン』(青土社)、『COVID‐19』(論創社)など多数。編著に『定点観測 新型コロナウイルスと私たちの社会』シリーズ(論創社)など。
2023年9月1日、関東大震災の5日後に千葉県の福田村で起きた行商団9人の虐殺事件をテーマにした映画『福田村事件』が公開。

「2024年 『ガザ虐殺を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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