松尾潔のメロウな日々

著者 :
制作 : 山下 達郎 
  • スペースシャワーネットワーク
4.23
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本棚登録 : 88
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907435035

作品紹介・あらすじ

EXILE、平井堅、CHEMISTRY、久保田利伸、JUJU、鈴木雅之らを手掛けたプロデューサー、松尾"KC"潔。そんな彼の初・音楽書は、R&B愛に任せて疾走した熱き日々‐1990s‐を振り返り、本場アメリカ産ブラック・ミュージックの真髄について説くもの。真摯な音楽論にして貴重な90年代現場証言集、最高にして最強のR&B書。

感想・レビュー・書評

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  • 先に『メロウな季節』を読んでいた。出版はこちらが先。"FOREWORD"は山下達郎。『季節』と違い、こちらは読みやすい。

    山下の文章は、シンガーというより、研究家っぽい。

    さて本文の内容だが、R&Bに興味のある人にはたまらない。情報の羅列ではなく、著者の想い、情念が綴られているからだ。

    KUBOTAもEXILEもいいんだけど、黒人と比べると聴き劣りする。私感だが、KUBOTAも英語で歌うとワンテンポ遅れが出て、グルーブが死ぬ。

    日本人を応援したい気はあるが、どうせ同じリスニング時間を消費するなら、あえて日本人を聴くメリットを感じない。正直、そう思ってしまう。

    かといって、本場のR&Bに詳しいわけでもなく。むしろ無知である。そんな情報ギャップを埋める、初心者の入り口として。

  • 2020/4/29購入

  • 松尾KC潔といえば日本におけるブラック・ミュージックの大家だ。
    90年から2000年までは文筆家として、以降はプロデューサー、コンポーザーとして日本におけるブラック・ミュージックを牽引してきた。

    ブラック・ミュージック。ソウルやR&B、ヒップ・ホップなどと細分化できるそれはしかし、こと松尾潔が取り上げるものに関してはそういった名称よりもブラック・ミュージックと呼びたい気分だ。

    リッチでゴージャスで何よりメロウな音楽。その佇まいは程よく鍛えあげられた身体に上等なTシャツをタイトに着こなした装丁の著者像が何より端的に現している。


    自分は主にブラック・ミュージックとカテゴライズされる音楽を聴いてきたが、松尾潔が取り上げるようなアーバンでメロウな音楽が苦手だった。ベイビーフェイスやRケリーも積極的には聴いてこなかったし、ディアンジェロ『Voodoo』は時代を代表する名盤だと思うが、おそらく聴きどころは松尾氏とは違うだろう。

    だからこそ『bmr』誌に連載されたコラムをまとめた本書は非常に興味深く読めた。

    山下達郎も同好の士/師と称える卓越した耳と慧眼はEXILE「Ti Amo」のレコード大賞受賞を持って実績を持って証明された。




    <blockquote>いまプロデューサーとして10代や20代の歌手と向き合って話すと、「直裁的な描写」と「リアルな表現」を同義と思い込む子たちが多いのを痛感する。たしかにラップのように単語数が多ければ写実性や具体性は高まるだろう。しかしそれは国語の話であり、音楽の話ではない。歌そして歌詞は絵画的表現を追求すべきで、写真を目指すものでもなかろう。(P.26)</blockquote>

    <blockquote>感動というのは筋肉と同じで、時間を掛けずに手に入れたものはすぐになくしてしまう。ながい時間を掛けて育むに値する感動の記憶こそが、音楽を聴き続ける悦びなのだとぼくは考える。反芻ほど楽しいっものはない。と年上の恋人に言われたのは向田邦子だったか。(P.26)</blockquote>

    <blockquote>ぼくが作詞家として取材を受ける際、よく話すテーマのひとつに「現代とは、孤独そのものより"孤独になることへの恐怖"が肥大化している時代」がある。とくにラブソングをつくるときはそのことを強く意識する。(P.48)</blockquote>

    こういった視点をもっていることが、単なるブラック・ミュージック愛好家ではなく優れたプロデューサーとしての資質が現れた部分といえるだろう。

    <blockquote>ジェームズ・ブラウン「ファンキーとは幸せであるということを別の表現に置き換えたものです。L.O.O.S.E.解き放つこと、ゆったりすること、自由なんです。仕事や学校に行くときはファンキーじゃいけませんけどね」(P.134)</blockquote>

    もちろん、こういったブラック・ミュージック・ファンにこそ楽しめる逸話も充分に散りばめられている。

    <blockquote>成功とはつまり、分かちあうことです。あなたがやっとの思いで沼から陸に這い上がることが出来ても、それはまだ成功と呼べません。陸に上がったら後ろをふり向いて、まだ沼であえいでいるものに手を差し伸べてご覧なさい。そのひとを陸に引き上げたとき、初めてそれを成功と呼ぶのです」(P.134)</blockquote>

    著者が直接インタビューできた(これは非常に稀なこと)ジェームズ・ブラウンがいみじくもこう語ったように、著者はこれから周りに手を差し伸べるのだろう。そういった態度が後書きからも伺われ、著者のソウルもゴージャスでリッチだなと思わされた。

  • ラジオの軽いノリしか知らなかったので文章の上手さに驚いた。そして内容もすごい。傑作。

  • ライター上がりのクリエイターは大成しないというジンクス・定説を覆し、平井堅やエグザイル、JUJUといった売れっ子一流アーティストをヒットに導いた敏腕プロデューサーによる愛の詰まった一冊。

    コラムもライナーノーツもとにかくR&Bやアーティストに対する愛に満ち溢れている。自分はまだまだこのジャンルに通じていないので、これを助けに気になった音楽をどんどん聴いていきたい。

  • 90年代R&Bにたいする溢れる音楽的な興味は置いておくとして、若いときから最前線の現場に関わり続けてきたこと。これこそ松尾さんのいまのポジションを築いたものだと思った。

  •  今や作詞家・プロデューサーとして高名な松尾さんだが、bmr のライターさんとして見ていた時期が長いので、どうしてもそういう目で見てしまう。しかし、意外なことに音楽だけの本の執筆は今回がはじめてとのこと。

     前半は連載時に読んでいたものがほとんどだったけれども、まとめて読むと、この人の人並み外れた行動力には驚嘆せざるを得ない。何事かをなしとげるためにはことを起こさなければならないのだけれど、松尾さんは何かを達成する資質を過剰なほどに持ち合わせていたんだなあと、今さらながら恐れ入りました。

     同世代感バリバリの話たち(特に後半のライナーノーツ)を読んでいると、ちょっとタイムスリップしたような気分にもなれる、本当にメロウな一冊でした。

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