具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

著者 :
  • dZERO
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感想 : 346
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  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907623104

作品紹介・あらすじ

永遠にかみ合わない議論、罵(ののし)り合う人と人。
その根底にあるのは「具体=わかりやすさ」の弊害と、「抽象=知性」の危機。
動物にはない人間の知性を支える頭脳的活動を「具体」と「抽象」という視点から読み解きます。

具体的言説と抽象的言説のズレを新進気鋭の漫画家・一秒さんの四コマ漫画で表現しています。

感想・レビュー・書評

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  • こんなにも具体と抽象について考えたことはなかった。

    読み始めは眠くてしょうがなかったが、後半一気に読んでしまった。前半を寝ながら読んだ反省もあり、珍しく立て続けに二度読みした。濃い内容のわりにボリュームが少なく、各章に4コマ漫画もあって、二周さらっと読めるくらい、読みやすかった。

    初めの方に書かれているように確かに、「具体」はわかりやすいゆえに、わかりにくい(とされる)「抽象」より、より良いという風潮がある。私もそのように思っていなかっただろうか、と自問するところから始まった。

    人間は物事を「抽象化」して、知能を高め、学問を発展させてきた。その最たるものが言語だとのこと。ほーーーーー!という感じだった。
    また、具体しか見ない人は抽象の世界にいる人のことが見えない。ここによくコミュニケーションのずれが生じる、と。ほほーーーーーー!ですよ。
    仕事やプロジェクトを例にとると、上流の仕事は抽象の世界で決定し、下流におりていくにつれ、より具体の世界で実行・実施されることになる。説明されれば全くその通りで、何でこんなことも知らず(考えず)に、何年も働いていたんだと恥じ入ってしまった。だから、上司と部下がそれぞれ抽象と具体の視点で話すとギャップが生じることになり、そこに苦しんでいる人は多いのだなぁ・・・ただし、頭で理解しても具体と抽象は相対的であることがまた、難しい。つまり私が抽象と思ったことを他人も抽象と思うかといわれれば、そうではないということ。

    大切なことのひとつは、「具体と抽象」に切り分けて考えるということ。例えば、上司の指示がコロコロ変わると考える部下は具体レベルでしか発言を捉えられていない。抽象レベルで見ると実は上司の方針が一致していることがある。

    そして一番大切なことは、抽象と具体の往復の行き来で物事を見て考えることが大事だということ。どちらか一方でも十分ではないということ。

    自分を顧みると、特に仕事においては具体の世界にいるような気がした。それは今現在の業務内容、立ち位置や、それこそ、上の方針が見えにくいことにも起因するのだろうが、具体ばかりを求めて、「木を見て森を見ず」、「本末転倒」になってはいけないと身につまされた。抽象の考え方は今後、自分が仕事をしていく上での大きな意味を持つものとなった。

    良い法則(抽象)はよりたくさんのこと(具体)に流用できる。これこそが抽象化の最大のメリット。「一を聞いて十を知る」抽象がより良いということ。そんな文言から、そういえば、とふと思う。
    「絵本」、特に長く読み継がれている「絵本」って抽象的なものが多くないだろうか。つまり、どのように捉えるかは読み手によって違って、直接的な教訓を示さない。最近は内容がとても直接的で具体的な絵本(というより一種の教科書のような本)が多くて、なんとなく興ざめだなと思っていたのだが、これって私の心が絵本に抽象の世界を求めていたのだろうか。(全然関係なかったらすごく恥ずかしいけど)

    評判通り、読んでよかったと素直に思える本だった。

  • 自分自身の昔からの課題を克服すべく手に取った本。具体と抽象を行き来を使い分ける、特に物事を抽象化して捉え、聞き手の状況と期待する反応に応じて具体化に変換させる必要性には理解できた。しかし、まだ自分にはどのタイミングで、どのようやな効果を得たいのかが明確になっていないため、日常の会話するや仕事の中で全然使えていないように思う。何らかのトレーニングを重ねてあ今の社会で有益なマネジメントスキルを身につけたい。

  • 数年前に読んだのですが、自分の抽象化能力にまたもや課題を感じて読んでみました。が...再読した自分をめちゃくちゃ褒めたいです!!すごくためになりました。

    以前読んだ時は、構造は分かったが実践がワカラン。と思ってしまいましたが、最近読んだ本やエッセイと関連づけられたことで、以前よりは解像度高く理解できました。

    先日よんだ「エッセイストのように生きる」では、「物事を分かるまで見つめ続ける」という考え方が書かれていました。
    わかるまで見つめ続けることで本質が分かり、自分らしい表現が見えてくるとのことです。

    具体と抽象も同じようなプロセスで、具体を理解してわかるまで見つめれば、本質が見えて抽象化しやすくなるのでしょう。

    多くの物事の本質が見えてきたら、他の事象でも「あ、これ前に考えたアレに似てるな」と思える日が来るからこそ、抽象化が上手い人、というのがいるのかもしれません。

    最近リリーフランキーさんの本を読んでいても同じようなことを思いました。具体について本質を理解しているからこそ、非常に抽象的表現が上手い。

    仕事のために読み始めたのですが、本をより楽しく読むために大事な知識だなと感じ、とても興奮しました。
    関連本をいろいろ読んでみたいと思います。

  • 大学の頃に先輩からいただいた本。
    頂いたときは知らない本であったが,読んでみると物事の考え方をイラストを交えながら紹介している。様々な場面において抽象・具体の考え方が載っており上手く使いこなすことが重要であると感じた。

  • この本は本当に目から鱗がぽーろぽろでした。
    今まで感じていた違和感はこれだったのかあ!!と膝を打ちまくって痛いほどでした。思考の整理や考え方のロジックについてまともに考えたことのなかった私にとって、この本は革命的でした。すっきり感が半端ではない。そして4コマ付きで分かりやすすぎる!人との会話にかみ合わなさや違和感を感じたことがある方には全員にプレゼントしたくらいです。

    最近著者の細谷功さんの新書も出たので即購入しました。楽しみです!

  • 6/29
    具体と抽象、すごく読んで勉強になった!
    自分が普段考えていることは抽象的だから、説明が難しく、他者に理解されないんだと気づきました。
    どちらの視点も持って世界を理解したいです。

  • 頭が良くなる世界の入口に入った気分。
    自分はクイズが好きでYou Tubeでクイズ王の動画を見たりするが、確かに思考が早い人は具体と抽象の世界を行き来するスピードが早いのだなと感じる。
    また、「抽象的な視点で物を見ている人は、一貫した理念の基で臨機応変な判断を下すので、同じような事態に対応する時にまるで真逆の判断を下すことがある」というようなことが書いてあり、同じような逸話があったな、、と釈迦の対機説法を思い出した。
    悟りを開いた釈迦のもとにたくさんの人がアドバイスを求めて相談に行くが、二人の人間に同じ悩みを相談されたときに、ひとりひとり真逆のアドバイスをすることがあったという。
    これは、相談者の能力や置かれている状況を加味して助言をしたかららしい。
    つまり釈迦は「人をいい方に導く」という抽象的な理念に基づいてアドバイスを与えるので、傍から見ると全く同じ悩みに真逆の助言をしているように見えても、実は一貫した考えから最適解を出しているということになる。
    確かにこれが出来るようになると、いちいち目の前のことに右往左往することなく、その場に応じて一番いい判断を下せるようになる。
    仕事にもクイズにも活かせる、いい本を読んだ。

  • 段々気づいていなかった部分の話になり引き込まれた。
    噛み合わない議論を始めとする日常のあれこれは、具体と抽象のズレによって生じる。
    見えてない世界の人は異星人に見えるというのは自分が見えている世界が狭いあまり感じてしまうもので、最近考えている自責の話にも通じていた。
    一度では理解しきれない部分もあったので、また見返したい。

  • サクッと1時間ほどで読めます。

    具体と抽象について、20のレベルに分けて平易に説明してくれる構成でした。各レベルには四コマ漫画や図もついていて、より平易な説明に一役買ってるなという印象です。
    当たり前のこと言ってるな、という部分もあるけれど、「それも具体と抽象の話になるのか!」と学びを得る部分もあり、総じて面白かったです。

    3つの気づき
    ・よく「◯◯は抽象的すぎる」のような議論を聞くけど、そもそも言葉を扱ってる時点で人間はかなり抽象思考をする生き物
    ・抽象化のレベルが合っていないと会話が成り立たない
    ・具体は誰にでも見えるが、抽象度が上がるほど見えてる人は少なくなる

  • 冒頭に、「わかりやすさの時代」にどう生きるか? というなぞかけがありました。
    140頁弱で、絵本のようなスキマだらけで、四コマ漫画付きのビジネス書です。

    ・本書の目的は、この「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え、「市民権をとりもどす」ことです。

    ・具象  抽象
    直接目に見える   直接目に見えない
     実体と直結    実体と一見乖離
    1つ1つ個別対応 分類してまとめて対応
     解釈の自由度低い 解釈の自由度高い
     応用利かない   応用利く
     事務家の世界   学者の世界

    ・抽象化とは、枝葉を切り捨て、幹を見ること
    ・抽象化とは、複数の事象間に法則を見つける「パターン認識」の能力
    ・バラバラに扱うのが具体とすれば、関係性や、構造としてまとめて扱うのが抽象
    ・数学とは、抽象化の対象を論理のみで説明するもの、哲学は人間の思考や感情など論理だけで説明できないものも扱うもの
    ・具体か抽象かの尺度が相対的であり、「上下」で階層構造を築いています
    ・「永遠の議論」の大部分は、どのレベルの話をしているかという視点が抜けたままで進むため、永遠にかみ合わない
    ・抽象概念は受取る人によって好きなように解釈できる
    ・上流:抽象から下流:具体へ移行していくに伴い、仕事をスムースに進めるために必要な観点が変わっていきます
    ・価値観の違いでは、質の上流、量の下流という視点もあります。
    ・上流発想では、全体の統一感やつながりを重視し、下流発想では、個別の使い勝手や、部分的な見た目が重要視されます。
    ・抽象とは、量はすくなければ少ないほどよく、シンプルであればあるほどよい。
    ・複雑で分厚い本が具体であれば、シンプルに研ぎ澄まされて紙一枚が抽象
    ・アナロジーとは類推のことで、異なる世界と世界のあいだに類似点を見つけて理解したり、新しいアイデアを発想するための思考法
    ・抽象の一人歩き というバイアス パターンや関係性がないのにそれを求めてしまうこと
    ・最も理想なのは、具体レベルと抽象レベルを階層化させて、つながった目標になっていること
    ・抽象化というのは、わかる人にしかわからない
    ・「見えている」側に立った時、「見えていない」相手にどのように対処すべきか
    ・抽象化というツールは、一度手にしたらなかなか手放せず、元にもどることは難しい性質があります。
    ・状況と相手に応じて、ほどよい抽象度でコミュニケーションをする。「抽象的だからわかりにくい」ともに「具体的すぎてわかりにくい」もある
    ・「見えていない人」から見ると「見えている人」は「訳のわからないことをいっている宇宙人」としか見えない

    結論は、次かと。
    ・結局重要なのは、「抽象化」と、「具体化」をセットで考えることです。これらは一つだけでは機能せず、必ずセットになって機能します。福沢諭吉は、「高尚な理は卑近の所にあり」といっています。

    目次は以下です。

    はじめに
    序章 抽象化なくして生きられない
    第1章 数と言葉 人間の頭はどこがすごいのか 
    第2章 デフォルメ すぐれた物まねや似顔絵とは
    第3章 精神世界と物理世界 言葉には二つずつ意味がある
    第4章 法則とパターン認識 一を聞いて十を知る
    第5章 関係性の構造 図解の目的は何か
    第6章 往復運動 たとえ話の成否は何で決まるか
    第7章 相対的 「おにぎり」は具体か抽象か
    第8章 本質 議論がかみ合わないのはなぜか
    第9章 自由度 「原作」を読むか、「映画」で見るか
    第10章 価値観 「上流」と「下流」は世界が違う
    第11章 質と量 「分厚い資料」か「一枚の図」か
    第12章 二者択一と二項対立 そういうことを言っているんじゃない?
    第13章 ベクトル 哲学、理念、コンセプトの役割は
    第14章 アナロジー 「パクリ」と「アイデア」の違い
    第15章 階層 かいつまんで話せるのはなぜか
    第16章 バイアス 「本末転倒」が起こるメカニズム
    第17章 理想と現実 実行に必要なのは何か
    第18章 マジックミラー 「下」からは「上」は見えない
    第19章 一方通行 一度手にしたら放せない
    第20章 共通と相違 抽象化と妨げるものは何か
    終章 抽象化だけでは生きにくい
    おわりに

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著者プロフィール

細谷功(ほそや・いさお):1964年生まれ。ビジネスコンサルタント、著述家。問題発見・解決や思考力に関する講演や研修を国内外で実施。『仕事に生かす地頭力』(ちくま文庫)、『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』(共に東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)、『思考力の地図』(KADOKAWA)等著書多数。

「2023年 『やわらかい頭の作り方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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