ヒトはなぜ戦争をするのか: アインシュタインとフロイトの往復書簡

  • 花風社
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  • Amazon.co.jp ・本 (119ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907725211

作品紹介・あらすじ

ナチズムの嵐に消えた世紀の戦争論!世紀の変わり目の今、日本に甦る!一九三二年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」とりあげた問題は、戦争。相手は、フロイトだった。

感想・レビュー・書評

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  • この本に、2人の巨人の名前を見て、怪獣大決戦のような空中戦を期待した。結果として、少しアテが外れた気持ちになった。

    興味深い話もあるが、アインシュタインは「世紀の天才物理学者」として戦争をなくすことを議論しているのではない。むしろ、素朴に一人の人として、このテーマをフロイトに投げかけている。その謙虚さと、ある種の切実さにこそ心打たれるものがあった。フロイトの答えは、「専門外のことはわからない」と正直に答えているのが大筋だと思う。

    自分の中の天才崇拝をよそに、2人の天才はもう少し地に足をつけていた。

  • ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡
    (和書)2009年10月02日 13:48
    2000 花風社 アルバート アインシュタイン, ジグムント フロイト, Albert Einstein, Sigmund Freud, 浅見 昇吾, 養老 孟司, 養老 孟司


    アインシュタインの言うこととフロイトの言うことは、良く解る。なぜなら柄谷行人の「世界共和国へ」が戦争という悲惨を通してしか形成されえないだろういう予想とが一致するからである。

    国際連合・国際連盟・世界共和国という理念が一般化するには戦争は避けて通れないらしい。そこに理想郷があるわけではないと思うがだがしかし奇蹟・希望も見出せるのだと思う。

  • (2016.03.29読了)(2016.03.27借入)
    副題「アインシュタインとフロイトの往復書簡」
    2016年1月にEテレで「100分de平和論」という番組が放映されました。後半だけ見たのですが、その中で4冊の本が紹介されていました。
    フロイト著、「ヒトはなぜ戦争をするのか?」(斎藤環)
    ブローデル著、「歴史入門」(水野和夫)
    井原西鶴著、「日本永代蔵」(田中優子)
    ヴォルテール著、「寛容論」(高橋源一郎)

    フロイトの本は、文庫本も出ているのですが、単行本が図書館にあったので借りてきました。
    副題にもあるようにアインシュタインの問いにフロイトが答えるという往復書簡になっていますので、その部分だけだと50ページほどのものです。
    アインシュタインの問いは、下記のものです。
    「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」
    一つの方法は、「すべての国家が一致協力して、一つの機関を創りあげればよいのです。この機関に国家間の問題についての立法と司法の権限を与え、国際的な紛争が生じたときには、この機関に解決を委ねるのです。」さらに、この司法機関には権力が必要です。
    平和が実現できていないのは、人間の心自体に問題があるのかもしれません。
    権力欲、破壊への衝動、等が考えられます。

    フロイトの答えは、以下のようです。
    人と人の間の利害の対立、これは基本的に暴力によって解決されるものです。
    社会が発展していくにつれて、暴力による支配から、法(権利)による支配へと変わっていったのです。
    (多くの弱い人間が結集し、一人の権力者の強大な力に対抗したに違いありません。)
    法律を守らせるには、法にのっとった暴力を行使できる機関を定めなければならない
    戦争は大きな単位の社会を生みだし、強大な中央集権的な権力を作り上げることができるのです。中央集権的な権力で暴力を管理させ、そのことで新たな戦争を二度と引き起こさせないようにできるのです。
    社会を一つにまとめるには、二つのものが必要だ。暴力が一つ、メンバーの間の感情の結びつき(一体化ないし帰属意識)がもう一つのものです。
    人間の衝動は二種類ある。エロス的衝動と破壊し殺害しようとする衝動です。愛と憎しみということです。
    エロス的衝動が「生への衝動」をあらわすのなら、破壊への衝動は「死への衝動」と呼ぶことができます。
    結論「人間から攻撃的な性質を取り除くなど、できそうにもない!」
    人間は指導者と従属する人間に別れます。
    人類の圧倒的大多数は、指導者に従う側の人間なのです。
    優れた指導層をつくるための努力をこれまで以上に重ねていかねばならないのです。
    文化が発展していくと、人類が消滅する危険性があります。なぜなら、文化の発展のために、人間の性的な機能が様々な形でそこなわれてきているからです。

    【目次】
    フロイトへの手紙(アルバート・アインシュタイン)
    アインシュタインへの手紙(ジグムント・フロイト)
    アインシュタイン生涯と戦争
    フロイト生涯と戦争
    解説・脳と戦争(養老孟司)
    付録・戦争の世紀(小田謙爾)
    編訳者あとがき ナチズムの嵐に消えた世紀の戦争論(浅見昇吾)

    ☆関連図書(既読)
    「精神分析入門 上」フロイト著・豊川昇訳、新潮文庫、1956.06.10
    「精神分析入門 下」フロイト著・豊川昇訳、新潮文庫、1956.06.15
    「物理学はいかに創られたか 上」アインシュタイン、インフェルト、岩波新書、1939.10.30
    「物理学はいかに創られたか 下」アインシュタイン、インフェルト、岩波新書、1940.01.30
    「相対性理論」アインシュタイン著・内山龍雄訳、岩波文庫、1988.11.16
    「アインシュタインの発想」小野健一著、講談社現代新書、1981.06.20
    「未知への旅立ち」アインシュタイン著・金子務編訳、小学館ライブラリー、1991.08.01
    「アインシュタイン伝」矢野健太郎著、新潮文庫、1997.06.01
    「アインシュタインの夢」アラン・ライトマン著・浅倉久志訳、ハヤカワ文庫、2002.04.30
    「唯脳論」養老孟司著、青土社、1989.09.25
    「解剖学教室へようこそ」養老孟司著、筑摩書房、1993.06.25
    「考えるヒト」養老孟司著、筑摩書房、1996.07.10
    「解剖学個人授業」養老孟司・南伸坊著、新潮文庫、2001.04.01
    「虫眼とアニ眼」養老孟司・宮崎駿著、徳間書店、2002.07.31
    「バカの壁」養老孟司著、新潮新書、2003.04.10
    (2016年4月9日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    ナチズムの嵐に消えた世紀の戦争論!世紀の変わり目の今、日本に甦る!一九三二年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」とりあげた問題は、戦争。相手は、フロイトだった。

  • タイトルのキャッチーさと、おまけに養老さんも解説を寄せてるとあって、急いで読んでみましたが、ちょっと拍子抜けのあっさりテイストな内容でした。フロイトの返信に、彼の研究がどういうものなのかをわかりやすく説明してくれているくだりが少しだけあってそこがちょっと興味深かった。

  • 国際連盟から意見交換をするように提案されたアインシュタインが選んだテーマは「ヒトはなぜ戦争をするのか」。そして意見交換の相手として選んだのが、精神分析学の権威、フロイトである。本書はその往復書簡が収められている。
    20世紀の天才・アインシュタインは、世界政府のような人間の心をうまく制御する仕組みを作れば、戦争を回避できるのではないかと考える。しかし、それは理想論かもしれない。では、戦争を生み出す人間の心を制御するにはどうすれば良いのか。こういった観点から、フロイトに書簡を送る。
    人間の心を究めたフロイトの答えは、「文化を発展させること」。文化の発展に伴って人間の心を改革すれば、戦争を回避できる時代が来るに違いない。フロイトはそう答える。
    しかし、ではどうやって人間の心を改革すれば良いのかという点については、その方途を示していない。その意味で、フロイトはアインシュタインの問いに答えきっていないように思える。

  • 1932年、国際連盟がアインシュタインに依頼した「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わして下さい」とりあげた問題は戦争、相手はフロイトだった。ちょうどナチス時代、二人はユダヤ人、だからこそ本気で考えていたテーマだろう。

    こういう本を読みたかった、と思い、いろんなページで深く考えさせられた。ずっとなぜ人間は戦争を繰り返すんだろう、人間誰もがが陥りやすい心理状況があり、そこに問題があるのではないかと思っていたから。また読む前は、戦争は悲しいけど、人間の普遍的な問題で、なくならないとあきらめてたけど、二人の考えを聞いて、みんながそれを願い、二人の意見を参考にして頑張れば、戦争の終焉を迎えられるんじゃないかと、明るい未来が見えた気がした。

    アインシュタインとフロイトの時代に、こんなに深く戦争について考えられていたのに、いまだに戦争をくりかえし、悩んでることに驚き残念に思う。時空を超えて二人の会話を聞けたようで、ほんといい経験ができたと思った。アインシュタインは最も大事だと思う問題に戦争をあげ、みんなの平和を考えてたんだなと思うと、ますます素敵な人だと思う。

  • 少数の権力欲をもった人たちと、金銭的な利益をおうグループが たくさんの国民をうごかし自己の欲望の道具にしている。 インテリも暗示にかかりやすく、破壊への衝動がそれを加速させる。 そもそも破壊への衝動は自分の身を守るための 本能的な機能のひとつで誰もがもっているのだからだ。 愛・エロスと同じベクトル上にあるのだろうか?

  • アインシュタインとフロイトの往復書簡。
    しかも、内容は「戦争はなぜ起こるのか」というもの。
    二人の名前と内容を聞くだけで、心が踊るような、そんな気持ちになってしまいました。

    内容については読んでもらえば、ということでおいておくとして(薄いのですぐ読めます)、一番気になったのは、なぜこのような本が今まで世に出てこなかったのか、というところでした。
    勘のいい人ならすぐに分かると思うのですが、二人ともユダヤ人の血統を持ち、
    そして第一次、二次世界大戦の時代に生きています。
    この往復書簡が交わされたのは、ちょうど二つの世界大戦の狭間の時代でした。

    想像するに難くないのが、「なぜ戦争をするのか」というタイトルの本を書いている途中に戦争が起こってしまい、しかも迫害される側のユダヤ人の書いたものということで
    うやむやになってしまっていたのではないでしょうか。
    その意味では悲劇の書とも言えるかと思います。

    それにしても、二人ともあの迫害を生き延びてきただけあり、先見の明は流石です。
    ただ、解説で養老孟司先生も書いていますが、二人の温度差があるのは、詮索を避けるためにわざとなのか、知らずにそうなってしまったのか、は非常に気になるところでした。(本当のところは知る由も有りませんが)。

  • 1932年、国際連盟が、物理学者アインシュタインに対し、「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼した。
    アインシュタインは、「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」というテーマを選び、意見交換の相手として、精神分析学者フロイトを選んだ。


    往復書簡と言うからには、フロイトの返事に対するアインシュタインからのさらなる返事、またこれに対するフロイトの返事・・・・を期待する。
    ただ、本書では、アインシュタインからフロイトへ、フロイトからアインシュタインへの各1通の手紙が収録されているのみで、ちょっと予想外れではあった。

    もっとも、フロイトがこのテーマを論ずるに当たり、持論であるエロスとタナトスに言及しないはずはなく、それを(当代一流の学者であるとはいえ)精神分析に明るくないアインシュタインにどのように説明するかには興味があった。そして、その説明は、たしかに分かりやすかった。

    本書はドイツでナチスが急速に実権を掌握していく時代背景の中、いずれもその分野の第一人者として活躍していた学者であり、しかもユダヤ人であった両名が、戦争をどのように観察していたかを知る資料でもあるだろう。

  • 天才的物理学者アインシュタインと精神分析学者フロイトの興味深い往復書簡。解説は養老孟司さん。
    1932年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見交換したい相手と書簡を交わしてください。」取り上げた問題は、戦争。相手はフロイトだった。
    アインシュタインは疑問を突きつけた。「人間を戦争というくびきから解き放つために、今何ができるのか?」
    それに対しフロイトは答える。人間の衝動には保持し統一しようとする衝動(愛)と破壊し殺害しようとする衝動(憎)が存在する。人間の破壊衝動はなくなることはないだろう。しかし、文化の発展とともに人間は本能的な衝動から解放されてきた。つまり、「文化の発展を促せば、戦争の終焉に向けて歩みだすことができる!」
    人間と戦争、考え得る中でも最も重要な問題を考えるきっかけを与えてくれる本だと思います。

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