中村哲 思索と行動 「ペシャワール会報」現地活動報告集成 1983~2001 (上)
- ペシャワール会 (2023年6月15日発売)


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本 ・本 (432ページ) / ISBN・EAN: 9784907902346
作品紹介・あらすじ
病・貧富・戦乱… 世界の不条理に挑む 長い旅が始まった。 1984年、パキスタン北西部の古都ペシャワールのハンセン病院に赴任した中村哲医師。ソ連軍撤退と国際援助ラッシュの狂騒を尻目に、内戦下のアフガン、そしてパキスタン最奥部の無医村へ。寄る辺なき患者達に希望の灯を届けるべく苦闘し続けた実践の軌跡。 ※中村哲医師から日本の支援者に向けて送られた37年間の活動報告を集めた決定版!(上下巻/下巻は’24年春刊)
感想・レビュー・書評
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2024年4月読了。
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読売新聞2024726掲載 評者:岡美穂子(東京大学史料編纂所特殊史料部門准教授,南蛮文化,キリシタン史,etc)
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2段組で400ページを超えるなかなかの大著でかつ、上巻です。
なので、読み通せるかという躊躇がありましたが、タイトルの通り、中村哲さんがその時に応じて、何を思い、何を感じ、どのように考え、何を成したかが、つぶさにわかる書物で、中村哲さんのことを詳しく知るにはこれ以上のものはないと思います。
今まで数々の自己啓発本を手にしてきましたが、今まで読んだどの自己啓発本よりも豊かな読書体験であり、多くの学びがありました。
戦争、宗教、民族、自然環境などの外部要因や人々の無理解、身勝手な政治、人の業に発する理不尽に幾度となく苛まれても、目標を見据えて常に第一線で行動を重ねてこられたからこその言葉には、圧倒的な力があります。
中村哲さんの文章に自分自身の過去・現在・未来が揺さぶられるような感覚をうけながら読み進めました。
「しかし、厳しい自然の掟に唯々として従う者の、この「迷信」を、笑おうとは思わなかった。死にかけた赤子の一瞬の笑みに感謝をする世界がある。シロップ一サジのささやかな「治療」が恵みである世界がある。死ぬことが神意ならば、生きていること自体が、与えられた恵みなのだ。」p.313
「考えれば確かに暗いことは多いが、我々に誠ある限り恐れるものは何もない、と柄にもなく感情にふけった。そして理屈ぬきの善意で支えられてきた自分を幸せだと思った。
一九八八年度も難問は限りなかろうが、努力ある限り困難はある。祈りは見える力として現実化してのみ活路がある。支える会とて同様である。組織や事業が自己目的化してその防衛・保全が目標となった瞬間から自由とナイーヴさは失われる。本来の素朴な正義感や思いやりを理屈の中で変質させてはいけない。『それぞれのペシャワール』へ向けて良心の実弾をぶち込め。そうして支え合いの中に身を失う事によって得る恵みのいかに大きいかを知らねばならぬ。これが一九八七年度の結論である」p.124 -
時にエッセイ風もあり、書簡風もあり、事業のレポートもある。さまざまな文体は、書こうとする内容に合わせたものであるが、中村先生は見事な”作家”と思う(本を多読された為か)。
時にクスッと笑えるところもある。でも特に、PMSの大再編からは、ほとんどそういう文はなくなった。このあたり数年は大旱魃やアメリカの空爆など、日本にいたんじゃわからない(そのあたりは先生も指摘されている)困難さが、改めて認識された。
本書に収められた終号(70号)に記された先生の言葉には戦慄を覚えるが、人間が憎しみや怨みを捨てられないなら、当然そうなる。”文明”とともに、それは受け継がれてきたのだ。
本書はほとんど、先生の文章のみで構成されているので、出来事の内容が急に飛ぶ感じがあるところもある。編集部には、ご苦労ではあるけど、補足をもう少し補充してほしい。
いつか、先生が引退されたら、本書のような会報をまとめた書籍が出版されることを望んでいた。まさか、こんなに早く実現してしまうとは思いもよらなかった。
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中村哲さんが成されてきたことに改めて感動しました。本の最後にある中村哲さんの言葉は重い。
2024年7月現在、イスラエルがパレスチナに対して行っているジェノサイドを思うに付け、哲さんの言葉がずしりずしりと心に突き刺さる。 -
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