大西郷という虚像

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  • 悟空出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908117213

感想・レビュー・書評

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  • 福沢諭吉は言った。「西郷の罪は不学に在り」
    ・度量が偏狭で協調性がなく、一度敵とみた者はとことん憎む
    ・粘着性をもち、好戦的で常に独走する
    ・死の商人グラバーと手を組み、密貿易で長州に武器を渡す
    ・江戸でテロ集団赤報隊に無実の人々を殺させ、騒乱を創り出す
    ・グランドビジョンもなく討幕に突き進む

    という表紙裏の文言が全てを物語っている。
    結局、大義もなく恨みだけで幕府を倒したけど、新政権連中の金銭欲と権力闘争の汚さが許せなくて仲違いして、負けを覚悟で再度政権とケンカしたって事になるのかと。
    龍馬と双璧をなす人気偉人をここまでこき下ろすのも勇気がいるだろうが、その内容についてはそれなりの説得力がある。内容的には、西郷ってのは頭は悪くてケンカ好きの乱暴者だけど、面倒見がよくて多少の正義感はあって、カネや権力には興味がない清廉さはある。という他の維新要人に比べればマシな人という賛辞?に結果的にはなっているような。
    歴史とは表面的には人間の行動記録に過ぎないが、人をその行動に駆り立てた本性がどういうものであったかを洞察する事を重要視する著者の歴史へのアプローチは性格および動機に焦点を当てるものであり、単なる資料分析に留まらない説得力がある。
    でも、そこにフォーカスしてしまうと「結局、人間なんてどうしようもない生き物」という結論ばかりで、結果ニヒリズムになってしまうのだが、それも歴史として直視する必要があるのかなとは思う。
    過去2作と比べて気負いもなく、3部作の中ではイチバンよいです。著者の論調に慣れただけなのかもしれないですが。

  • 明治維新、そしてそれを成し遂げた西郷隆盛の実態を描いている。僕たちが習ってきた明治史観は明治政府によって作られた部分が多い。それを一つずつ丁寧に説明している。作者は最後にこう書いて終わっている。
    「そして、私たちは、長州を核とする勝者の言に従いその後の時代を「近代」と呼び、今日の行き詰まりを迎えているのである」

  • 2018年4月15日読了・

    この本に書かれていることが全て真実だというつもりがないが、歴史の常識として歴史を残す側の人間は勝者であることがほとんどで、且つ勝者に都合の悪いことは書かれず、勝者の都合の良いことだけが歴史として残される。

    今の日本では資料至上主義が幅を利かせており、資料に残っていないものは歴史の真実として認められない傾向が強く、今私たちが教えられている歴史が本当の真実であったかは、全て鵜呑みにし内容が良い。

    特に明治維新のゴタゴタは岩倉具視という、ゴロツキ公家と三条実美という、一度朝敵になったにもかかわらず復活を遂げる往生際の悪い奴が維新を起こした様に教えられるが(三条実美はあまり出てこないが)事実は歴史の教科書とは大きく違うこと。

    今更だが、岩倉具視と伊藤博文が紙幣の肖像になっていることを子供の頃は何の疑いも持っていなかったが、今となってはマジで「勝てば官軍」なんだなぁと思います。

  • 維新三傑として盲目的に賛美される西郷に関しては、確かに再考の余地があると考える。

    殆どの維新志士に共通してそうだが、国家としてのグランドビジョンを持たず、三百年前の関ヶ原の恨みを晴らすべくテロ行為を繰り返し、倒幕に突き進んだ、ただのチンピラ集団であった。

    維新後、岩倉使節団という名の観光旅行の一団が海外視察に赴く。逆に言えば、それまでは欧米文化の何たるか、国家の有り様を学んでいなかったのだ。
    なぜ今年も大河ドラマは幕末なのか。
    きっと西郷を賛美するような内容になるのだろう。飽き飽きだ。

  • 「明治維新という過ち」に次いで読んだ。
    人口に膾炙する西郷隆盛像に否を唱えんとするタイトルだが、本書を読んでも「虚像が暴かれる」ことはなく、これまで漠と抱いていたイメージと大差ない印象を受けた。
    一方で「~過ち」同様、歴史を違う視点で見ようとしている点は面白く、この手の本をまた読んでみたいと思わせる。また前作ほどには過激な表現がない分、読み易く、共感できる点も多かった。

  • 大河ドラマ「西郷どん」放送開始前に読み終えておきたかったので、年末年始に読む。
    前二作との重複が多い。出版社が違っているからか、同じフレーズが再利用されている箇所がかなりある。著者自身が左様に釈明しているのでその点は許容範囲か。
    タイトル程、西郷隆盛のイメージが一変するようなエピソードなり、再解釈は無かったような気がする。
    司馬遼太郎の「翔ぶが如く」を読んだ時の理解不能感は未だ変わらず。複雑な人格なんだろうなと思う。

  • 幕末・維新とは何だったのか、長州と薩摩との関係や違いとは?
    この間の時代に英雄視された西郷とはどういう人間だったか、西郷以外にも大久保、木戸、伊藤達は?
    今まで教わってきた歴史観、英雄像が変わる。

  • 内容の大半は「過ち」とかぶる。

    薩長の人には申し訳ないが、「明治維新は関ヶ原の恨みを果たしたい薩長の詐略を尽くしたクーデターであり、倒幕後のビジョンは全くなかった。
    江戸城開放後の会津戦争は賊軍だった長州の私戦であり全く必要なかった」等々、著者の主張には力強い説得力がある。

    伊藤、井上の汚職の始末に追われる木戸など、歴史上の偉人として崇めるより、よほど親近感がある。それでいいのかとは思うが。

  • 明治維新は存在しない、テロである。西郷隆盛という虚像だ。原田伊織はまだまだ読んでみたい。

  • 週刊誌みたいな雑記録

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著者プロフィール

原田伊織(はらだ・いおり)
作家。京都伏見生まれ。大阪外国語大学卒。2005年私小説『夏が逝く瞬間(とき)』(河出書房新社)で作家デビュー。『明治維新という過ち』(毎日ワンズ)が歴史書としては異例の大ヒット作となり、出版界に明治維新ブームの火をつけた。「明治維新三部作」として、『明治維新という過ち』『列強の侵略を防いだ幕臣たち』『虚像の西郷隆盛 虚構の明治150年』(共に講談社文庫)がある。その他の著書に『官賊に恭順せず 新撰組土方歳三という生き方』(KADOKAWA)、『明治維新 司馬史観という過ち』(悟空出版)、『消された「徳川近代」明治日本の欺瞞』(小学館)、『日本人が知らされてこなかった江戸』『知ってはいけない明治維新の真実』(共にSB新書)など。雑誌「時空旅人」に『語り継がれなかった徳川近代』を連載中。

「2021年 『昭和という過ち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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