雨に呼ぶ声

著者 :
  • アストラハウス
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本棚登録 : 53
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784908184017

作品紹介・あらすじ

●カフカなど海外文学の影響を受けて、夢と現実、常識と非常識、正気と狂気、さらには生と死の境界を超越して人の世の不確実性を描き、そのあたらしさと実験性をもって、中国文壇で「先鋒派」と呼ばれた余華。ノーベル文学賞の候補として常にその名が挙げられる余華の、先鋒派時代の最後を締めくくる作品にして、はじめての長篇。ファンのあいだで長く邦訳が待たれていた幻の名作。

●(帯:推薦文より)善人がひとりも出てこないのに、しみじみ泣けるのはなぜだろう。残酷なのにあたたかい。余華の語りは名人芸だ。(by中島京子)

●(翻訳者の解説より)キーワードは「回想」「虚構」「記憶」「過去」だろうか。虚構の人物に作者の魂が乗り移り、時間と空間を超越したところに不思議なリアリティーが生まれた。それが読者の心に響くから、この長篇第一作に支持が集まるのだろう。(by飯塚 容)

● (中国国内の論評より) すぐれた「心の自伝」である『雨に呼ぶ声』は、虚心坦懐に幼年時代の怪しい行動と心の秘密をすべて記述している。これは、とても正直な人生の告白である。初めての戦慄、拙劣な欲望、身の置きどころを失った少年、奇妙な幻想、拒絶できない恐怖、理由のない罪悪感……狂乱に満ちた少年の心理が余すところなく描かれている(by陳 暁明)

●(物語の概要)1960〜70年代の中国。主人公の幼児期から青年期までの記憶を辿る物語。 
 主人公 孫光林(スン・グアンリン) は南門(ナンメン)という貧しい村に三人兄弟の次男として生まれ、六歳で、町に住む子どものいない夫婦のもとへ養子に出される。幼少期を町で過ごし、十二歳のとき、養父の死によってふたたび村に戻ってくるが、この間の不在が、彼を実家の家族から孤立させてしまう。そのため、主人公は、思春期を孤独で内省的な少年として過ごし、成長していくことになる。
 全編、主人公のモノローグ。綾なす糸のようにとりとめなく記憶の表出を交錯させつつ、物語は秩序なく紡がれていく。周囲の人々が繰り広げるなまなましい憎悪、暴力、嫉妬、性愛……。主人公自身の幼児期の記憶、性の目覚め、自分につながる家族の歴史……。
 プリミティブで、情動のままに生きるエネルギッシュな周囲の人々。それらが巻き起こす、ろくでもなく、凄絶で、真摯で、ときにばかばかしく、哀れで、ユーモラスで、そして愛すべき事件の数々。ある人はあっけなく、ある人はしぶとく死んでいく。まさにそれが人生であるというかのように。

感想・レビュー・書評

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  • 少し前の中国の農村の人々の生き様が少年の目を通して書かれている。国民性なのか共産党政権のせいか、あまりにも精一杯で体当たりで驚くばかりだった。素晴らしい本だと思うが、温かい気持ちにはなれなかったので星三つ。

  • 余華3冊目
    辛い ちょっと飽きたこの人

  • 他が良すぎて

  • お気に入りの小説家余華の比較的古い作品。
    翻訳がでたので読んでみた。
    兄弟や活きるの方が完成度は高いが。余華らしさは随所にみられる。
    主人公にふりかかる理不尽なできごと、決して高潔とは言えない登場人物達、そして日常の喜び、恐れ、青春の戦慄き、著者。余華の実体験に基づく様々な思い出がパッチワークのように結晶化した作品といったところか。
    小説の筋は盛り上がりがあるわkではなく、どちらかというと退屈な小説ではなるが、随所随所でみられる気のきいた表現、思いがけない展開、どうしようもない親族など余華の要素はいっぱいつまっている。
    そして、なんといっても中国っぽい。

  • 途中で挫折

  • 貧しさゆえの理不尽,貧乏の連鎖や大人の身勝手さ,子供なりの知恵や思い,そして友情などが時系列を無視して思いの向かうところをあっちこっちと彷徨うように描き出されている.凍った父親の死体を質屋に入れようとして,そのあと死体を武器に暴れるというエピソードには度肝を抜かれた.中国の農村の貧しさが立ち上ってくるとともに子供の生き生きとした様子もあって頑張れと応援したくなる.訳もいいのだと思いますが面白かったです.

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著者プロフィール

1960年中国浙江省杭州生まれ。両親の職場の病院内で、人の死を身近に感じながら育つ。幼少期に文化大革命を経験。89年には文学創作を学んでいた北京で天安門事件に遭遇した。80年代中頃から実験的手法による中短篇作品で「先鋒派」作家の一人として注目を浴び、91年『雨に呼ぶ声』(アストラハウス)で長篇デビュー。92年発表の『活きる』(中央公論新社)が張芸謀(チャン・イーモウ)監督により映画化されて話題を呼ぶ。本作『兄弟』は中国で05年に上巻、06年に下巻が発表され、またたくまにベストセラーとなった。他の長篇作品に95年『血を売る男』、17年『死者たちの七日間』(いずれも河出書房新社)、21年『文城』(未邦訳)がある。グランザネ・カブール賞(イタリア)、フランス芸術文化勲章「シュヴァリエ」受賞。作品は全世界で2000万部以上、40以上の言語に翻訳されており、ノーベル賞関係者が中国で必ず面会する作家のひとり。

「2021年 『兄弟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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