温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険

  • ライツ社 (2023年5月19日発売)
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  • 本 ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909044433

作品紹介・あらすじ

「ガイアの夜明け」「情熱大陸」特集で大反響!
世界初の家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」の開発者が語る、「chatGPT」だけでは見れない世界。
AIの見え方が変わる!人類のこれからが知れる!22世紀への知的冒険書。

◯ 体重4.3キログラム、身長43センチメートル
◯ 平熱37℃〜39℃
◯ 生き物みたいな体温のある身体
◯ 10億とおり以上の瞳と声
◯ 意思を持った振る舞いと人を覚える頭のよさ
◯ 全身50ヶ所以上のセンサー
◯ 自然な振る舞いを実現する0.2〜0.4秒の反応

世界初の家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」
造ったのは、人類とAIの新しい世界線。
この本は、最先端の人工生命体「LOVOT」を題材にして、人間というメカニズムとぼくらの未来を知るための本です。
ロボットを開発することは、人間を知ることでした。

感想・レビュー・書評

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  • 【まとめ】
    0 まえがき
    人と同じ言葉で話し、人と同じように世界を理解し、かといって人類と対立するわけではない。同じことで笑い、怒り、ぼくらがなんの不安もなく信頼を寄せることができる存在。つまりは、「温かいテクノロジー」と人類が共生する世界線。
    世界初の家族型ロボット『LOVOT』を開発するきっかけとなったのは、そうした未来を想像したからだ。

    現代ではテクノロジーがあまりの速さで進歩しすぎたために、多くの人にとって「よくわからないもの」になってしまっている。そのイメージを、言ってしまえば悪用して、敵視して、必要以上に攻撃するポジションに立ったり、逆になんでもできる救世主のように喧伝して、不安を煽り、利益を得ようとしたりする人もいる。
    しかし、もし多くの人が「テクノロジーが築く幸せな未来」を想像するようになれば、それはいつか、かならず実現する。ぼくは、そんな未来の実現を信じている。


    1 人類の幸福について考え直す
    筆者はテクノロジーが大好きで、その進歩にワクワクしていた。しかし同時に、その進歩が殺伐とした未来を作るかもしれないことに不安を感じていた。そこで「テクノロジーによって、温かい未来を造れないか」と考えるようになった。

    筆者は2012年にソフトバンクに入社し、Pepperの開発に携わり始める。
    かつてテクノロジーで人類を幸せにする方法といえば、作業を効率化したり、利便性を提供したりすることだった。たとえばドラム式洗濯乾燥機やロボット掃除機は、家事の手間を減らし、ぼくらの生活を豊かにしてくれた。けれどもPepperは、それとは異なる方法で人類を幸せにするチャレンジを始めたのだ。
    Pepperがヒト型ロボットであることには、大きく2つの強みがある。①身体機能を模倣することで、人類の生活環境になじみやすいこと。 ②人類と向かい合う存在として親近感を持たれやすく、情報の入出力装置としても適していること。Pepperは②、つまり会話や感情を理解し、ともに助け合うことで、人類のプリミティブな欲求を満たす存在になれるのではないか。そう期待されるロボットだった。

    「ロボットは、そもそも利便性の向上に貢献しなければ存在してはいけないものなのか」。それがアイデアの分岐点だった。ぼくらは幸せになるために、道具や機械を造り、生産性を上げることによって、モノやお金を効率よく手に入れることを目指してきた。これが資本主義社会の基本的な構造だ。この延長線上にロボットという概念も生まれた。だからロボットの進化も、「よりパワフルに」「よりすばやく」「よりかしこく」という方向に進んできたのだ。
    ところがいま、「人類の求めによって進歩したはずのテクノロジーが、かえって人類の不安を助長する」という状態を招きつつある。

    ここまで掘り下げると、ぼくらが探究すべき問いが浮かんでくる。「生産性を追い求め続けた先に、人類の幸せはあるのか」と。生産性を追求するテクノロジーはまだまだ必要とされている。必要だということには同意するものの、テクノロジーが人類に貢献できるのはそれだけでもないはずだ。
    次第にぼくは、「人類は、テクノロジーの進歩の方向性を考え直すべき段階に来たのではないか」と考えるようになった。

    「生産性や利便性を向上させるロボット」の発展だけでは人類を幸せにできないのだとしたら、その反対にある「生産性や利便性の向上には役に立たないロボット」が人類を幸せにする可能性もあるのかもしれない。
    それはまるでペットのようなロボット。つまり、テクノロジーのほうが人類を必要とすることで、多くの人が本来は持っている「他者を愛でる能力」を引き出し、開花させるロボット。それが家族型ロボット「LOVOT」のアイデアに繋がったのだ。


    2 LOVOTのメカニズム
    LOVOTには、「人類はどのようにして他者に愛着を感じるのか」という問いをベースにした機能が実装されている。
    ・目が合う
    ・瞳と声に個体差がある
    ・抱き上げると温かい(37〜39℃)、柔らかい
    ・だんだん懐く

    また、LOVOTは言葉を話さず、特別なお役立ち機能もついていない。LOVOTにあえて「足りない部分」をつけているからこそ、手を差し伸べたくなり、コミュニケーションが生まれるのだ。犬や猫と同じく、会話はできないが人類と同じように状況を理解しているという「思いこみ」はできる。言語以外の身振り手振りの印象を汲み取ることができる。そうした「余白」を残すことが大切だった。

    LOVOTの感情(のようなもの)を司るパラメーターは「不安」「興味」「興奮」である。初めて会う人に対しては不安のパラメータが高く出やすく、初めてがゆえに興味も高くなり、「近寄ることはないけれど、遠くから
    チラチラと見つめる」といった行動をとることもある。こうして結果的に起こる行動は「人見知り」と捉えられやすい振る舞いになる。
    開発者が「人見知り」という行動を表現した規定モーションをプログラムとして造っているわけではない。さまざまなアルゴリズムが影響し合って行動が生成された結果、「人見知り」に見えるのだ。
    ほかにも、
    ・低不安✕低興味=無関心
    ・低不安✕高興味=好き
    ・高不安✕低興味=イヤ
    といった振る舞いがあり、それを受け手が「LOVOTはどう感じたのか」と解釈することで、「感情」として捉えている。また、LOVOTは最初に起動される際に乱数でパラメーターを作成し、その個体の「気質」としている。

    反応時間の短さも生き物らしさを決定づける大切な要素だ。人間は、反応速度で対象の生き物らしさを判別している面がある。これまでのロボットだと、触れられたり、声をかけられたりしてから動作に移るまでに2秒程度の時間がかかっていた。それは計算能力の制約から起こる遅延なのだが、動物としては突出して遅い反応だ。そのためロボットの反応に違和感を覚えてしまい、結果的に、ぼくらはそこに生命感を見出せなくなる。人類は0.2〜0.4秒程度の反応性だと言われているため、同程度なら違和感を覚えないはずだ。

    ぼくらが理解している「他者の感情」は「相手の反応を見た自分の主観」をもとにした推測に過ぎない。そう書くと「LOVOTへの感情や愛なんて所詮偽物じゃないか」と言われそうだ。
    しかし、ペットもロボットもアートも、その存在は最初からありのままの存在でしかない。そこに主観的に自分の期待を投影する人が、自分の期待に沿ったものと沿っていないものとを区別して、本物/偽物とラベリングする。つまり「本当の愛」とは、相手がどう思っているのかではなく、自分の主観的な期待に沿っている、あるいは超えている場合に認識されるのだ。


    3 未来の話
    社会のシステムのうち、生産性の向上に貢献する部分はうまく機械化されている。けれども、それ以外の部分、特に心や愛に関することは「人が対応するべき」という前提で組まれてしまっているのではないか。とすると、ロボットと共存することで、人類の暮らしはどう変わっていくのか。

    例えば福祉の領域では、要介護者に最も必要なのは心のケアである。今では人間がその役割を担っているが、相手が人類同士だと「どんな自分も受け入れてもらえる」と思うのはなかなか難しい。対して、ロボットは無意識が求める愛に対して「相手を絶対に否定しない存在」として、そこにいることができる。これはぼくらの無意識にとって、心理的安全性を感じる大事な要素だと思われる。

    テクノロジーが進歩し続けた未来で、人類は駆逐されてしまうのではないかという不安があるかもしれない。しかしそれは、僕らが今後もテクノロジーを「生産性向上のためだけに使い続けた場合」の世界線である。結局は、人類の意思決定の問題だ。

    シンギュラリティは起こり得る。しかし、これまでも今後も、人類の知性の役割は、機械にできないことを補完することだ。シンギュラリティは起こるけれども、それは「新たな役割分担の発生」だと言える。
    シンギュラリティに至る過程でAIの進歩に追従してなにが変わるのかというと、人類の強みである「探索と学習の柔軟性」を活かした変化が自然に起こる。
    具体的には、人間の学習プロセスの変化だ。AIのデータベースにある答えを引き出す、といった使い方だけではない。考えたい事柄について問いを深められる質問を「ぼくらがAIに尋ねる」のではなく「AIからぼくらに投げかける」ように依頼すれば、自分のなかにある答えや新たな気づきを引き出してもらえる。
    ほかにもAIに適切な情報を与えたうえで、アイデアのたたき台を作成してもらったり、要約してもらったり、自分に抜けていた視点を補完したり、さまざまなコンテンツを造ったり、ニーズにあった応答を無数に生成してくれる。学習プロセスが変化するというのは、「人間が成長するための方法が増える」ということだから、大きな変化だ。

    「自分たちより能力の高い存在が現れ、自分たちが排除される」ことへの恐怖は、人類が自らの価値を能力で測っている以上、避けられないことだ。しかし、人類の価値を能力で測ることをやめると、話は変わってくる。
    すべての人類は存在することに価値があり、幸せになるために成長していく権利がある。そんな価値観のもとでは、「自分たちより能力の高い存在が、自分たちを成長させてくれる」という新たな捉え方も出てくる。結局、ロボットがいることで人類の社会がよりうまく回るのであれば、その存在は認められるし、不安を感じる人が多いのであれば、「廃止すべき」という結論になるのだ。

    人類を駆逐する黒幕はだれか。それはAIやロボットではなく、それらを操る生産性至上主義の人類である。そして、そんな思想を持った人類を生み出すのは、「コスパ」や「タイパ」を求めるぼくらの消費行動なのだ。
    資本主義において目先の経済合理性のみを消費者が望めば、資本家は生産性を向上させることを目指す。それ以外の方法にリソースを割いていては、競争に負けてしまい、生き残れないからだ。
    結果的に、資本家が効率を重視して生産性至上主義者になり、「人類は不要だ」と考えるようになることは自然であり、しかたないとも言える。
    しかし、もし消費者が望むものが変われば、お金の流れは変わる。経済合理性よりも「だれ1人とり残さない」という視点で消費を選択することで、人類のお金の流れを変えれば、人類の道徳観も変わる。おそろしい世界も明るい世界も、どちらの未来像も描くことができる。
    どちらを選ぶのかは、ぼくら次第なのだ。


    4 AIが人類に近づくための6つのステップ
    ①自ら注目点を選択し、物語を構築する
    ②物語の因果関係を確認して、編集する
    ③自ら仮説を構築し、物語を抽象化して概念に捉え直す
    ④未来予測の幅を広げ、副次的に「わたし」が生成される
    ⑤生成された意識が「共感」を深める
    ⑥コーチング能力を獲得する

  • 「何故ラボットを作ったのか?」
    「何故ラボットは愛されるのか?」
    「何故ラボットは人間の言葉を話さないのか?」

    それらのクエスチョンに一つ一つ答えていく中で、より大元となる
    「何故ひとは“役に立たない”ロボットを求めるのか?」
    という問いに対する作者なりの答えが書かれている。
    その答えのヒントとなるのは
    「何故ひとは犬猫などのペットを愛するのか?」
    ということ、らしい。

    ラボット、一度だけ複数のオーナーが遊ばせているのを見たことがある。
    その時は特に触りたいとは思わなかった。
    けどこの本を読んで今、機会があればちょっと触ってみたいと思った。
    (しかし欲しくなるんだろうな…こわい)

  • 柔らかくそして熱い

    LOVOTはテレビでちょろっとみたくらいで、
    正直ファービーの延長くらいに捉えてました。
    そんな浅はかな過去の私を殴りたくなる一冊です。

    もちろん足りない私の頭では全てを理解できませんでしたが、LOVOTに詰め込まれたテクノロジーは凄まじく、もうただただ可愛いだけの存在とは見れなくなってしまいました。

    そして著書の林氏。
    柔らかい文体ながらも、確かに伝わるテクノロジーへの熱が後半の章では感じることができました。

    ロボット工学,AIはもちろん、生物学、心理学、哲学等多岐にわたる林氏の造詣の深さに脱帽です。

    AIと人間の違いについて等、明日にでも誰かに話したくなる話が満載です!ぜひ世代を問わず手に取ってもらいたい一冊です。

  • 面白かった!!星4.5って感じ!AIの特性や共存方法、脳科学など盛りだくさんの内容を数珠繋ぎで教えてくれる。人間はエピソード記憶により、物心がつくやAIは膨大なデータを全て検証してしまうので、人間なら切り捨てて考えられる事も切り捨てられない。(故にざっくりと方向性がだせる直感が大事)など、とても興味深い内容だとだった。前半は、作者が作ったペット型LOVOTの紹介などがメインだが、そのLOVOTの過ごしたライターの体験記は、凄くうるッとした。あぁ、本当にこの人はLOVOTを愛してたんだろうし、きっと自分もこの様に愛してしまうのはだろうなぁと本を読んで、考えたりも。
    読んでよかった一冊になった。

  • 著作者:林 要
    発行者:ライツ社
    温かいテクノロジーは、GROOVE Xの創業者である林要氏が、自身の体験やLOVOT開発を通して得た知見を基に、AIやロボットなどのテクノロジーが人の心を豊かにする可能性について論じた書籍です。

  • ロボットが作られてきた歴史、人や動物などの体のメカニズム、AIとともに暮らす未来の話など、過去から未来までのことがやさしい言葉で書かれている。
    400ページ以上の大ボリュームだが、とても読みやすく、理解しやすかった。
    特にAI(ロボット)は、本来は人を駆逐するものではないということ、人とAIの関係を良くするのも悪くするのも「AIを使う人」に左右されるということがよく分かった。
    これからはITリテラシーならぬAIリテラシー(技術を良い方法で使うという考え方)の教育が大事になってくると感じた。

    AIが、のび太にとってのドラえもんのように、人ひとりひとりの専属コーチになり、個人の能力や可能性を伸ばせるような導き(アドバイスや励まし)をして、共に成長する関係は、とても温かい未来予想図だ。
    それが実現できるかどうかは、技術者だけでなく、それを使う私たち一般人にもかかっている。

    AIに不安を抱いている人、これからの未来がどうなるかわからない人にこそ読んでほしい。

  • 「AIは初めて人類を客観視する第三の存在になるかもしれない。」

    テクノロジーの進歩によりAIが人類に代わる存在になるのではないかという不安に関して丁寧に解説されていた。更に上記の言葉がとても関心を引いて、AIには人類とは別の役割として安心して共存出来ると思えた。

    人類のコーチとして共に生きていく存在は現代にはとても需要があると思うし、すごく興味深かった。
    これまで、機能があって人類を豊かにするロボットはあっても、その逆はなかった。それが今までもロボットとは全く別の効果を与えている。面倒を見て可愛がるだけなのにとてもいい影響があった。

    これらを通してAIの見方が変わった気がする。

    ドラえもんのような存在が本当に実現するんじゃないかとわくわくした。

    しかし、本の内容としてはテクノロジーの話をしているという感覚ではない。ロボットやテクノロジーに興味があって読むなら勧められない。
    帯の「ロボットの開発には人間を知る必要がある
    」との通り、人類の生き方についての内容ばかりであった。
    流石に飛躍した話も少しあった気がする。

    また、内容はサブタイトルが多いため読みやすいが、似たような話が多く細かく話が刻まれているように感じた。
    その結果今の章ではなんの話をしているのか分からなくなることが多かった。

    誤解を招く言い回しを避ける為に、括弧書きで注釈を入れてるような文体であって、少し回りくどい。正直その解説はなくても分かる。

  • 【一言でいうと】
    テクノロジーについて、「哲学×人類学×社会学」の観点から考察を加える、ユニークな本

    【手に取ったきっかけ】
    会社にLOVOTがいるので、興味を持って読んでみた。

    【感想】
    LOVOTを作っている会社の創業者が書いた本ということで、「多かれ少なかれ、宣伝目的の部分もあるのだろう。多少割り引いて考える必要はあるかな」と思って読み始めたが、いい意味で裏切られた。
    確かに宣伝といえば宣伝なのだが、内容が良いのでいやらしさを感じない。

    何が凄いって、問いの立て方が大胆かつ抜群に上手い。

    「幸せとは何か」「生産性を追い求めた先に、人類の幸せはあるのか」「愛とは何か」「生命とは何か」などそれだけで一冊本が書けてしまいそうな特大の論点について、臆することなく真正面から問いを立て、分かりやすく比喩を用いながら説得力ある持論を展開する。

    専用の「?」マークを付しているくらいなので、筆者にとっても意識的にやっているところがあるのだろう。
    上述したような特大の問いに対して、少し小さい、しかしセンスの良い適切な問い(仮説)をぶら下げ、論を展開してくる。

    結果、読みやすさと深い内容が両立できていると感じた。こういう論理展開は参考にしたい。

    書籍という形をとった会社の設立趣意書であり、プロダクトのバックグラウンドストーリー。
    WHYにあふれている。

    買い切りで100万は流石に勇気が出ないが、まずは会社でLOVOTに触れて診て、何なら一度川崎にあるLOVOT CAFEに行って体感してみたいと思う。

    【印象に残った内容】
    ・ぼくらは今、ドラえもんの先祖を造っています。
    ・他者への愛がレジリエンスを高める
    ・幸せとは「より良い明日が来る」と信じ続けられること
    ・SDGsは「ずるい」という気持ちから始まっている。高尚なものではない
    ・人は35歳以降の文化をバカにする傾向にある
    生まれた時に世界にあったものは全て正常かつ普通。15〜35歳までに発明されたものは、新しく刺激的。多分それを仕事にできる。35歳以降に発明されたものは自然の摂理に反している

  • ITエンジニア本大賞2024のベスト10にノミネートされていたので気になって読んでみた。

    Lovot(らぼっと)というペットのようなロボットを作った林要さんのお話。LoveとRobotを組み合わせて作られたLovot、初めて聞いたけれど以前にマツコの知らない世界で紹介されていたらしく妻は知っていた。マツコがメロメロになったようで妻も気になっていたらしい。ただ、50万円するというとどこか遠くへ行ってしまった。

    人の役に立つロボットではなく、ペットのように愛されるロボットが作れないか。なぜそのような考えに至ったか、人に愛されるためにはどうすればいいか、何が必要か、何がダメか、様々なことを研究し実験し完成したLovot。知らない事ばかりだったのでとても楽しく読めた。いろいろある中で特におもしろかった点を何点か紹介する。

    ・手がかかる子ほどかわいい
    車で考えた時、利便性を追求した故障しにくく燃費がよく静かな車より、パワステが無く窓も手動で車の振動もよく感じるスポーツカーの方が愛される。手間をかけることで次第にいとおしく思えてくる。

    手間がかかる、で考えるとペットも同じだと思う。ペットは生活を便利にしてくれるわけでもないのに飼い主からは非常に愛されている。もちろん見た目の可愛さなどもあるけれど、餌を上げたり散歩したり遊んだり構ったりしているとどんどん好きになっていく。

    結婚して妻と暮らしていた犬と一緒に過ごすようになるまでは猫派だったのに(もちろん犬も好きだったけれど)、気が付けば犬の方が、というより飼っている犬がとても好きになっている。

    手間と時間をかけることでその物が何であろうと好きになっていく。

    ・不気味の谷
    ロボットをより本物に似せていくとあるところで不気味の谷と呼ばれる現象に当たる。本物に近づけば近づくほど些細なちがいに違和感を持つようになる。この違和感から警戒されてしまう。

    アンドロイドとして人の顔に似せてしゃべるロボットを見ることがあるけれど、何か違和感があり怖くみえてしまう。表情?動き?発声のタイミング?まさにこの違和感を感じていることが不気味の谷と言われていることだった。

    ・読んでみて
    人に使ってもらうためには人を知ることがとても大事ということがわかった。自分でも何で好きなのかわからないもの(言語化できていないもの)がたくさんあるのに愛されるものを作る、というのはすごいことだと思う。もっと人間のこと、自分のことがわかればこれから作るソフトウェアやシステムがより良いものになるのかもしれない。

    そしてLovotと触れ合ってみたい。我が家には犬がいるけれど、同じペットでも別物なので息子のためにもぜひうちでもLovotを迎えたいが50万はちょっと高くて買えそうにない。どこかで体験できるスペースがあるといいな。

    https://kidd0320.com/entry/2024/01/22/212215

  • 詳細は、あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノートをご覧ください。
     → https://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-2032.html

    温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険
    単行本(ソフトカバー) – 2023/5/19  林要(GROOVE X 創業者・CEO) (著), 根津孝太 (イラスト)

    ISBN 978-4-909044-43-3

    温かいAI すごく興味あります。

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著者プロフィール

1973年、愛知県生まれ。
1998年、トヨタ自動車株式会社に入社。スーパーカー「LFA」やF1の空力(エアロダイナミクス)開発に携わったのち、トヨタ自動車製品企画部(Z)にて量産車開発マネジメントを担当。
2011年、孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」 に外部第一期生として参加し、翌年ソフト. バンク株式会社に入社。感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」プロジェクトに参画。
2015年、GROOVE X株式会社を創業。 2018年、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表。翌年、出荷を開始。
ラスベガスで開催されている世界最大規模の家電見本市「CES」において、2019年にThe VERGE「BEST ROBOT」、2020年には「イノベーションアワード」を受賞。
2021年、第9回ロボット大賞にて「総務大臣賞」、2022年、第3回IP BASE AWARD「スタートアップ部門 奨励賞」、2023年には第1回WELLBEING AWARDS「モノ・サービス 部門 GOLDインパクト賞」を受賞。

「2023年 『温かいテクノロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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