キッズライクアス

  • サウザンブックス社
4.22
  • (5)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 51
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909125217

作品紹介・あらすじ

自分は自分のままでいい
自閉症スペクトラム障害の男の子の自立の物語。


ロサンゼルスの「特別な学校」に通う、自閉症スペクトラム障害の高校生のマーティンは、映画監督である母親の仕事について行き、フランスの田舎町で夏休みを過ごすことになる。
そこで通う初めての「普通の高校」で、フランス人の女の子に電撃的に恋に落ちる。
愛読書であるプルーストの『失われた時を求めて』と結びつけて、取り巻く世界を解釈する特徴があるマーティン。
恋に落ちた彼女も、周りにいる「普通の友達」も、プルーストの物語の中から見た「空想」の一つだったはずなのに、次第に、彼はそれが空想ではなく、生身の人間であることに気づきはじめてしまう。
彼にとって衝撃的な気づきと葛藤の先に見出していく答えとは。
障害の有無は関係なく、誰もが感じる人間関係の難しさや殻を破ることへの勇気が強く優しく描かれていく。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  自閉症スペクトラム障害(ASD)のアメリカ青年が母の仕事でフランスの学校に短期転校しそこで恋に落ちる。

     ASDの人たちの独特の感覚と小説の表現が不思議なシナジーを起こしている。ASDの特性と文学表現の境が見えなくなるような感じ。
     こういった感覚は小説全体のテーマでもある。キッズライクアス(私達の様な子ども)とそうでない普通の(?)子どもの違いはあるのか。努力して普通を目指してそこを埋める? 僕たちは僕たちだと肯定する? どっちも分かるようなそれだけでは違うような。。。。
     さらにストーリーの中では他にも様々な感覚の差異が出てくる。フランスとアメリカの差異。ある種の有名人とそれに群がるモス(蛾)の様な人達の差異、フィクションと現実の差異、恋をする相手に自分の理想を重ねることはある種の病理と違うのか。。。
     様々な差異が混ざりその境が分からなくなる。その読書体験がとても大事なものの様に感じた。

     この本はクラウドファンディングで翻訳版が生まれたのか。色んな人が色んな想いを抱ける本だと思う。こんないい本をよく日本に持ってきてくれた。感謝。 

  • 自閉症の高校生マーティンの一人称でつづる物語。すごくよかった。

    母が仕事で1か月間フランスに滞在するので、姉ともども同行することになり、マーティンは現地で「普通の」学校に通うことになる(アメリカでは療育センターに通っていた)。

    その学校でめぐりあった思いがけぬ恋。新しい友人たちとの理解と誤解、衝突。
    いつもとちがうものや、不規則なものが苦手で、こだわりの強いマーティンの心情や感性が、繊細な表現でつづられていて、実在感がリアルに伝わってくる。

    自閉症というのははたして「治療」すべきものなのか。「僕らは僕らとして生きることしかできない 変えさせようとするのはやめて欲しい」とマーティンは考える。

    たしかにそう。だいいち、自閉症でない「普通(定型発達)」の人たちだって、互いに理解しあえなかったり、衝突を繰りかえしたりしている。自閉症のマーティンは、たしかに、人の感情を推し量るのが苦手かもしれないけれど、その分余計に深く考えている。彼が、何度も傷つきながらもあきらめずに、人々と関わりを持とうとする姿は尊い。

       **********

    でも、養育センターで教わったさまざまな技術(人の表情から感情を推し量る方法とか)や、両親の教え――たとえばマーティンが幼いとき、両親が根気よくキャッチボールを教えたり水泳を習わせたりしたこと――も、マーティンにはたしかに役立っている。もちろん、13歳のとき父から『失われた時を求めて』をもらって、それが愛読書になり、周囲の世界を理解する足場になったことも。だから「治療」はできないし、またその必要はなくても、周囲の世界とある程度うまく関わっていくためのいろんな方法は学んでいけるのだろう。マーティン自身、友人たちとわだかまりを解いた場面で「療育センターでの訓練が、新しい世界でうまく応用できたようだった」と感じている。(とはいっても、またそのあとに別のショックを受けることになるのだけど。山あり谷あり。逃げずに立ちむかうマーティンはえらい。)

    両親をはじめ、周囲の大人たちがみんな不完全でもがいているのもいい。だって大人って、ほんとにそうだから。父はマーティンに対してすごく愛情深いし、理解も深いけれど、たぶん社会的な現実の把握が甘くて、破綻をまねいている。母親は有名な映画監督で、仕事での評価は高いし、マーティンへの愛情ももちろん深いけれど、自分の理想型に息子をはめたがっているところがまだあって、ちょくちょく的外れなことを言う。愛情だけでもだめだし、理解が深ければそれでいいというものでもない。答えの出ない世界だからしょうがない。でも、ふたりともマーティンと正面から向きあっているから、そういう不完全さのなかからもマーティンは自分なりにいろんなものを吸収しているのだろう。そう思うとなんか泣けてくる。

    わたし自身は発達障害の家族がいるわけではないのだけど、ひきこもりの息子と、メンタル不調の息子をかかえて、どういうふうに向きあっていけばいいのかと日々悩んでいるので、いろんなところが刺さってきて、かんたんにはまとめられない本だった。Kindleで買ったので、折りに触れてまた参照します。

  • 自閉スペクトラムの10代男子本人視点での物語。
    慣れない土地、初めての同世代の子たち、周囲の状況とずれてしまう、話していると周りがいきなり怒りだす…と、毎日ハラハラで、理不尽だらけなのが実感できる。
    その中でも、思春期ならではの異性との出会いがあり、衝突があり、離れてまた近づき…、
    誰だって、自分のコアを変える必要はない、それぞれ多少違うのが当たり前で、周りとぶつかりながら自分の世界を広げていければいいな、と思える本。

  • 傑作
    物語を通じて一人の心情を追い痛み伴う青春はあれど誰も排除しない切なく美しい物語

    他者を理解するのは難しいけれど尊重して距離を保つ生き方をするフランスの少女
    自分がどう生きたいかを模索する主人公との恋の物語
    読んでよかった。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

ニューヨーク在住の作家。ニューヨーク大学にてフランス文学を専攻し、19世紀のフランス流行文学の研究で博士号取得。学位取得後にフランスに留学し、パリで数年間を過ごす。デビュー作は『Lessons in French』で、Oprah.comの編集者選書に取り上げられた。『キッズライクアス』(原題:kids like Us)は著者が手がけた初のヤングアダルト小説。

「2020年 『キッズライクアス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

林真紀の作品

ツイートする
×