アル・シャーと時の終わり -目覚めしマハーバーラタの半神たち-

  • サウザンブックス社
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909125262

作品紹介・あらすじ

英雄の生まれ変わりは、12歳の女の子。
少女たちとインドの神々が躍動する!

アル・シャーは、クラスメイトに馴染みたくて、つい法螺を吹いてしまう癖のある、12歳の女の子。考古学者にして博物館長、シングルマザーの母は忙しく、アルは寂しさのあまり、人の気を惹きたくて、法螺を吹いてしまうのだ。
博物館にある、恐ろしい呪いのランプ。クラスメイトに呪いの実在を疑われて、囃し立てられたアルは、つい勢いでランプに灯を点してしまう。だがその途端、ランプに封じられていた悪魔「眠れる者」が、縛めを解かれ、世界の時空が凍り付いてしまう。アルは、愛する母を凍り付いた時空から救うため、試練を乗り越えて眠れる者に立ち向かう。
 マハーバーラタの主人公たるパーンダヴァ五王子。「眠れる者」が封印を解かれる度、彼らの化身が危機を止めてきた……アルが今世における化身の一人なのだ。パーンダヴァ五王子の生まれ変わりが、「眠れる者」のもたらす破滅を止めなければならない。——だが、スパイダーマンのパジャマを着た女の子に、そんな大いなる使命を果たすことができるのだろうか?


雑誌『TIME』が選ぶ不朽の名作ファンタジー100冊、選出作品。

感想・レビュー・書評

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  • アメリカに住むインド系の少女アル・シャーは、「インド文化博物館」の館長のお母さんクリッティカーと二人暮らし。
    転校したばかりの学校は、家柄の良い子供ばかりが通っていて馴染めない。だからアルは嘘をついたり法螺を吹いたりすることが得意になっている。

    ある日博物館に来たクラスメイトがアルをからかう。あとに引けなくなったアルは、展示品の”破滅のランプ”に火を付ける。
    「おお、アルよ、アル。…おまえは一体何をしでかしたのだ?」
    その声とともに周りを見るとアル以外の時間が止まっていた。
    そこへ羽ばたきの音と「吾輩を召喚した戦士は誰だ」という荘厳な言葉とともに現れたのは…、ただの鳩?!

    その変な鳩が言うには「お前はランプの中の<眠れし者>を目覚めさせてしまった。やつが破壊神シヴァのもとにたどり着いたら世界は終わる。おまえはそれを止めなければならない。おまえにはできる。なぜならおまえは『マハーバーラタ』の英雄の魂を受け継いでいるからだ」

    何の話?そりゃーお母さんからはよく『マハーバーラタ』伝説を聞かされてきた。でも自分が英雄に関わりがあるなんて聞いていない!
    鳩の名前はスバラという。スバラ?面倒くさいからブーって呼ぶね!

    英雄の転生者は5人いるという。
    出会った2人目の転生者はミニという女の子。メガネで潔癖症で学校ではいじめられっ子。
    こうしてアル、ミニ、ブーの噛み合わないトリオで世界を救う旅に出ることに!

    ===
    お話は、「指名された少女が、自分の血統を聞かされ、世界を救うことになる」という、ハリーポッターとか、パーシー・ジャクソン系の冒険ファンタジー。
    これは第1冊目で、ラストに思わせぶりな新キャラも出ていた。シリーズで5冊くらい続くかな?

    物語に関係するマハーバーラタの神々
     冥府神ダルマラージャ、風神ヴァーユ、雷神インドラ、双子神アシュヴィン、破壊神シヴァ、天女ウルヴァシー、猿神ハヌマーン、などなど。

    転生するという英雄というのは、「パーンダヴァ五兄弟」と呼ばれる、パーンドゥ王が、自分の妃と神々との間の息子を自分の息子としたもの。
     高潔なユディシュティラ。父は正義と法の神ダルマ
     屈強なビーマ。父は風神ヴァーユ
     弓の名人のアルジュナ。父や雷神インドラ
     美しく強いナクラ。父は医術の神アシュヴィン双神
     美しく賢いサハデーヴァ。父は医術の神アシュヴィン双神
    この五兄弟は、絶世の美女ドラウパディーを共通の妻としている。
    この五兄弟が転生したものが、今のアルやミニということなんだが、”平凡な女の子”だということで、びっくりされたり、むしろ歓迎されてたりしている。

    彼らに敵対するのは、パーンドゥ王の兄ドリタラーシュトラの息子で、「カウラヴァ百兄弟」と呼ばれる者たち。この長男がドゥルヨーダナといって、物語にもかかわってくる。

    さらに保護者的役割の鳩ブーは、実はシャクニといって、悪のドゥルヨーダナ側の戦士でだった。
    物語上は息抜き的な役割で、「魔法お目付け役、お話の息抜き役だ」などと自己紹介し、言葉は大袈裟だけど見た目はただの変な鳩。だんだん敵との戦いが進むに連れて「彼女たちは俺のヒロインなんだ!」と、アルとミニに信頼を寄せるようになる。

    アルとミニはそれぞれ生まれ育ちにコンプレックスがある。
    アルとお母さんはとても仲が良いけれど、自分の生まれを黙っていたこと、出張ばかりだったことが哀しい。自分を守るために「嘘をつかないアルなんてアルじゃない!」と言われるくらいにウソが上手になった。
    ミニは、自分の血筋が英雄に繋がると知ってはいたが、本来の英雄は兄だと思われていたためおミソ扱い(でも多分その兄もちょっと変わってる子っぽい)。そのうえ彼女自身が変な潔癖症で会話もズレてるので学校では浮いている。

    こんな噛み合わない三人組のため、文章も軽妙というか、感覚がどっかズレている。
    そもそもアルが着ているのはスパイダーマンのパジャマで「こんな格好で世界を救うの?」だし、
    潔癖症のミニは手に入れた魔法のアイテムのコンパクトを開いて「ニキビができちゃった。ここからバイキンが入ったら死に繋がるかも!」だとか、
    敵との戦いもなんかラップバトルだったりと、緊迫感があるんだかないんだか。

    まあそんなアルとミニが徐々に「魂は姉妹なんだ」と繋がるようになってゆく。

    そして<眠れし者>の正体がわかったり、母のクリッティカーがなぜ自分に秘密にしていたのかがわかったり、そこへ意味ありげな新しいキャラクターがでてきたり…、というところで第1巻終了。2巻以降いつ出るのかな。

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著者プロフィール

若い読者向けに神話や伝説の世界を描いて高く評価されるベストセラー作家。作品はローカス賞やネビュラ賞にもノミネートされている。本作『アル・シャーと時の終わり』はTIME 誌の「不朽のベストファンタジー100」に選ばれ、先頃パラマウント・ピクチャーズが映画化についての優先交渉権を取得した。著書はほかに二部作“The Star-Touched Queen” や“The Gilded Wolves” シリーズなどがありニューヨーク・タイムズ・ベストセラーリスト入りしている。

「2021年 『アル・シャーと時の終わり -目覚めしマハーバーラタの半神たち-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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