感想・レビュー・書評

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  •  反貧困運動を振り返る記事がいくつか載っており、特にもやい・稲葉剛のインタビューと、posse事務局長・渡辺寛人の論考が興味深い。前者のインタビューをしているのが渡辺なので、内容はやや重複しているのだが、生活困窮者自立支援法関係者にとっては苦い批判となっており、興味深かった。

     稲葉が語っている反貧困運動の反省点としては、それが現場の当事者と結びついた運動として始まったはずが、(民主党政権成立に伴う)政治の動きと接続される際に、当事者よりも支援者主体の運動に変質してしまったことだという。
     また、そこから(自民党政権への転換を経て)生まれた生活困窮者自立支援法については、それが当事者への直接の経済的給付を(ほとんど)全く欠いていることが最も大きな問題であるほか、支援団体が行政の下請けとなることで、これまで批判的な視点から取り組みをしていた人びとの中に、モノが言いづらい状況が生まれていることを指摘している。
     ちなみに、湯浅誠が政権内部に入ったことについても言及している。湯浅は、法律制定の過程を目の当たりにする中で、「制度を変えるためには、現場よりもマジョリティ(保守層)向けの議論を展開することが重要だ」と痛感し、結果として「子どもの貧困」に議論をシフトしてしまったと、苦々しく語られている。湯浅は「1ミリでも前進させる」と言うが、それは結果として貧困問題全体の議論を後退させるものなのではないか、と。
     現場において、当事者の利益を考えた時に、「そもそも論」を収める場面というのはあるが、しかし「そもそも論」なくしては、理念もなにもなく、支援活動は成り立たないのではないか、という稲葉の主張はもっともである。

     現場の支援者(というか福祉労働者)は、基本的に制度を前提として思考するが、それゆえに、より広い視野で、原理原則に基づいて是非を問うことは、おろそかになりがちである。状況を整理し、振り返る上でも、こうした論考に耳を傾けることは必要不可欠であるとあらためて思った。

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