アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみた 失われたカムイ伝説とアイヌの歴史
- ユサブル (2022年7月14日発売)


- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909249470
作品紹介・あらすじ
アイヌ人口は減少の一途をたどり、2013年の調査によれば16,786人。
一方でその生活文化に注目し、学習する人は確実に増えている。中略~そうした中でここ数年、アイヌ関連観光が推進されている。
アイヌ舞踊ほか文化芸能を紹介するイベントが頻繁に行われ、アイヌの民俗をふんだんに取り入れた漫画『ゴールデンカムイ』が大ヒット。
そして2020年には白老町のアイヌ民族博物館が大々的にリニューアルし、国立アイヌ民族博物館を主軸とする民族共生象徴空間「ウポポイ」へと生まれ変わった。だが――。~本文より。
最果ての町から絶海の孤島まで、日本の隅々を自らの足で歩いてまわる旅作家・カベルナリア吉田がアイヌとは何かを求めて北海道中を歩いてまわった旅記録。アイヌと開拓、明治以前のアイヌと和人の交流と抑圧の歴史。そんな記憶が残る場所を訪ね、ある時は有名観光地で観光化が進み過ぎている現状に違和感を感じる。そしてほとんど観光ガイドには取り上げられない地を歩き、100年前のアイヌと同じ風景を見る。
自分の足で実際に見て感じたアイヌの過去と現在。
感想・レビュー・書評
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じっくりと時間をかけて読んだ。
著者のカベルナリア吉田さんは、何事も決めつけることなく常に疑問を持ちながら北海道・アイヌの地を7年もの月日をかけて巡り、形にされた。
北海道のディープなガイドブックくらいの気持ちで読み始めたのだが、歴史的な観点や伝承、行政の話など多岐にわたり、何度も読み返す場面もあった。
北海道には何度か訪れたことがあるが、本当に表面的な観光でしかなく、そのイメージは20年以上アップデートされることがなかった。
和人とアイヌの歴史、納沙布岬や宗谷岬に掲げられる”愛国”的な碑石、交通網が途絶え始めている現状など、東京圏で生活していると全く意識に上らないそれらのことが、大きな比重で迫ってくる。
中身の薄い箱物を作るのではなく、ニュージランドがマオリ文化の教育を推進しているように、教育の一端にアイヌの歴史や文化を学ぶカリキュラムを組み込むことが必要だと感じた。
2023.2.1詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
北海道内を巡る紀行文。
ブログのような軽い文章だが、開拓の歴史の背後に隠れているアイヌ文化や、権力に逆らった者を囚人として働かせていた歴史にまなざしを向ける社会派の面もある。
観光目線でない北海道旅行のレポートとして参考になる。著者が食べ物好きなので食レポがたびたび入るのはご愛嬌。 -
こういう旅の仕方はいいものです。
テーマを持って、関連した場所を巡るのです。
時間が無ければ何回かに分けてでも良い。
この本での旅のテーマは「アイヌ」です。
ゴールデンカムイなどの影響で北海道ではアイヌ
を観光の目玉に据えようとしているらしいです。
それにより東京から観光客が大勢来てくれるかど
うかではなく、いわゆる「ハコモノ」が作れるか
らだそうです。
なんとなくの知識では見えてこないハコモノが、
テーマを持って訪れた人にとって全く無駄である
ことが見えてきます。
まさに著者はその眼力を持って、各地のアイヌ関
連施設を訪れています。
実際には和人はアイヌを開拓の際に追い出してし
まった歴史があります。
著者の眼力は、そういった本当の北海道の姿を浮
かび上がらせます。
何より著者は、全て公共交通機関を使って北海道
を移動しているのです。
そこではアイヌだけでない別の弱者も切り捨てら
れようとしている姿も見えてきます。
やっぱり旅は歩きだ、と再認識させられる一冊で
す。 -
女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000059125
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カルベナリアさんと言えば沖縄紀行作家だと思っていたが、方角的には真逆の北海道紀行にまずは驚いた。
読めばカルベナリアさんは北海道出身とのことで、作品化に至った思いはなんとなく理解できた。
内容はとても詳述された北海道紀行文であり、随所に込められたアイヌへの記述で理解が深まった気がする。
アイヌに関する本を他にも読みたいと思ったし、時間と金があれば北海道に行ってみたい。
カルベナリアさんみたいな人生の歩み方って羨ましい。
#カルベナリア吉田 #北海道 #アイヌ -
北海道各地のアイヌ遺跡を、列車とバスと歩いて回って思考を巡らせた一冊。
未来志向でアイヌとの共生を考える、そのうさん臭さに言及している。観光需要のの起爆剤としてアイヌを取り上げようとしているが、地方経済の回復はまずもって期待できない。全国で見られている地方の没落は、北海道でより顕著に感じらっれる。鉄道遺跡も、観光再生には力不足と言える。自然の諸物に神を感じていたアイヌの姿勢に、想い馳せることが必要か。
著者プロフィール
カベルナリア吉田の作品





