21世紀の楕円幻想論 その日暮らしの哲学

著者 :
  • ミシマ社
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本棚登録 : 121
レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909394026

作品紹介・あらすじ

めざすべきは、正円じゃなく、楕円。
もう1つの焦点をいかにしてつくるか?

全財産を失い、右肺の3分の1も失った著者がたどり着いた、新たな贈与論。

人は必ず病み、衰え、老い、死んで土に還る。でも、その可傷性・可死性ゆえに、生きている間だけ人は暖かい。平川君が構築しようとしているのは、壊れやすく、傷つきやすいけれど、それゆえ暖かい「生身の人間の経済学」である。――内田樹氏、推薦!

文無し生活、その日暮らし、タケノコ生活、自転車操業の日々となった。とほほである。
多くの人々は、そんな生活をしたいとは思わないだろう。しかし、やってみるとこれがなかなか時代に適合した生き方のようにも思えてくる。…そのために必要なものは何か。…その答えは本書をお読みいただきたいと思う。――「まえがき」より

『小商いのすすめ』から6年、『「消費」をやめる』から3年を経た、平川哲学の集大成。

感想・レビュー・書評

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  • ・贈与論が気になった。
    ・語り口調がやや読みにくい。

  • お金以外に大事なことがある。

  • その日暮らしの素敵な哲学( ^ω^ )

  • いろいろ考えさせられた。
    解決できない問題を抱えた時、どちらか一つを選び、どちらかを捨てるというのではなく両方引き受ける覚悟、責任。
    あ〜難しい。自分の問題としてもう少し考えたいと思った。

  • 思っていた内容とは違ってた。
    価値交換の世界と贈与の世界

  • 今日的な出来事に照らし合わせても、問題解決のヒントになる考え方がたくさんあるように思いました。とりあえず問題を引き受ける覚悟、弱者に寄り添う解決策、複数の問いを立てて考えるも結果、答えにバリエーションはない。こんなプロセスで問題は収束していくのかなと思いました。

  •  借金とは、自らの意図とは無関係に、赤の他人との関係を取り結んでしまうことなんですね。それも、「支配ー被支配」の関係に近い関係です。(中略)借金とは遅延された等価交換だということなのです。(p.22)

     貨幣交換とは、非同期的交換であり、貨幣の出現によって、同じ場所に交換物を持参して、対面で相手の品物を吟味しながら交換するなんていう面倒がなくなったのです。(p.27)

    ・お金=①交換を促進する道具②関係を断ち切る道具
    ・贈与関係=①交換を禁止すること②関係を継続させること(pp.89-90)

     消費社会とは、アノニマスな消費者が、経済の主役になっている社会です。
     市場とはまさに、網野善彦の言う「無縁」の場であるわけで、そこは旧態依然とした地縁血縁的なつながりや、長幼秩序といったものが意味を持たない自由空間です。市場原理とは、まさに「無縁」の原理であり、「無縁」の原理の下で、唯一、人間関係を取り持つのがお金なのです。(p.96)

     地縁や血縁あるいは兄弟盟約的な関係性が無ければ、他者に対して贈与するという気持ちもなくなっていきます。何か問題が起きても、問題の責任を誰も引き受けようとはせず、「それはわたしのせいじゃないよ」と他者に責任を転嫁することになります。(p.97)

     宗教が立ち上がるひとつの大きな理由は、取り返しのつかない負債(返済不可能な負債)を、等価交換とは別の仕方で返済する仕組みが、人々に要請されていたということではないでしょうか。そういう場所がなければ、人を殺めてしまった場合には、「じゃあお前も死ね」という報復によるしかなくなってしまいます。等価交換の原理だけではうまくいかないことがある。(p.137)

     よく政治というのは現実的でなければならず、きれいごとでは何も解決しないと言いますが、政治家はたとえそれがすぐには実現できないとしても、きれいごとを言い続けて、実現へ向けて努力する責任があると思います。わたしたちは、現実をよりよい方向へと動かしていくための代表者に一票を投じたのですね。(p.149)

    「ためらい」だとか「言いよどみ」だとか「恥じらい」だとかそういうことがこの社会の中になければ、社会は実は、平穏な人間の住処ではなくなってしまうということです。確かに、きれいごとの社会は、それが永遠に実現できないかもしれないということで、ごまかしなのかもしれない。
     このごまかしをやっているといううしろめたさは、非常にネガティブな、「自分はひょっとしたら間違ってるんじゃないか」とか「これはつくり事じゃないか」という近くですね。でも、この自覚が自らの欲望の歯止めになる、生活に規矩を与える。
     よくよく考えてみると「文化」ってそういう事なんだと思うのです。文化の異名は「ためらい」なんです。「うしろめたさ」という事です。(p.154)

     何度か呼びかけていると、そこに応答の兆しがあらわれてくる。
     「呼びかけ」と「応答」という交換が最初にあったのです。(p.172)

     真円的思考は、楕円がもともと持っていたもう一つの焦点を隠蔽し、初めからそんなものは存在していなかったかのように思考の外に追い出してしまいます。
     真円的思考とは、すなわち二項対立的な思考であり、それは田舎か都会か、化学科振興課、権威主義か民主主義か、個人主義か全体主義か、理想主義か現実主義か、どちらを選ぶのかと二者択一を迫ることです。(p.208)

     わたしは、解決がつかない問題を、安易に解決してはいけないと思います。これまで考えてきたように、解決がつかない複雑な問題を前にしたときに、とりあえずわたしたちがとり得る態度は、「泣く」「ためらう」「逡巡する」です。つまりは、立ち止まって足元を見つめる時間を持つということです。

  • 鳥取の実家を離れて東京で暮らし、結婚して、去年娘ができた。そうなってみて核家族で暮らすことで手に入らないものがあるのだなと痛感した。祖父祖母と暮らさないことで教授する“自由”は魅力的だが、失ったものも多い。お金を出せばある程度は補えるが、そのお金も潤沢にあるわけではない。そこで著者が提案する重心を2つもった楕円の考え方。等価交換と相互扶助のバランスこそが大切だという。東京を新たな地元にしつつ、鳥取も切り離さず、向こうも地元だという認識をさらに強く持ちたいと思った。

  • 2018.3.4のNHKAM著者からの手紙で語ったのに興味を持ち読んでみた。このラジオ番組、聞き手のアナウンサーも聞くツボを心得ていて、著者の世界を引き出して行く。

    副題「その日暮らしの哲学」とあるように、15年続けてきた会社をたたんだ著者の平川氏が考える、金銭、モラルなどについて語った著。

    memo
    会社をたたむということは借金を返すということ。借金を返したら済々はしたが日々の生活にやる気が無くなった。お金とは交換を促進する道具であり、関係を断ち切る道具。モノを買えば物を受け取り金を払い、2者の関係は終わる。

    ピーター・フロイヘン「エスキモーの本」の中のエスキモーの価値観。「「われわれは人間である」「そして人間だから助け合う、それに対して礼を言われるのは好まない。今日わたしが得るものを、明日あなたが得るかもしれない。この地でわれわれがよくいうのは、贈与は奴隷をつくり、鞭が犬をつくるということだ」
    エスキモーから肉をもらいお礼を言ったフロイヘンに対しエスキモーは怒った。部族社会の人々にとっては、自然からの贈与は、自分たちが生きていく条件であり、感謝の気持ちはあっても、等価交換的な返礼の気持ちはない。

    政治というのは、きれいごとの論理が通る場でなければならない。政治の役割は国民国家のフルメンバーが衣食足りて平和にくらせるよう、すぐには実現できないとしても、実現に向けて努力する責任がある。

    「文化」は「ためらい」と「うしろめたさ」

    「楕円」には焦点が二つある。「有縁」と「無縁」、お金と信用、欲得と慈愛という相反する焦点があり、それがいつも綱引きをしている。それらは反発しながら相互に依存している。
    ・・・面白かったのが「木綿のハンカチーフ」の考察。現代の楕円思想が現れているという。田舎と都会、情とお金、生産と消費という相矛盾する二つの項を鮮やかに対比させてみせた。そして”この歌は徹頭徹尾、男目線の、ある意味で身勝手極まりない歌なのです”という。日頃思っていたことを1950年生まれの男性の平河氏がきっぱり書いてくれて、こういう男性もいたんだ、と目をみはった。これが上野千鶴子なんかが言ったらたちどころに攻撃の嵐ですね。

    解決がつかない問題の前で、逡巡する時間を経たのち、わたしたちがとるべき行動は、「やむを得ず、引き受ける」こと以外にないように思います。解決がつかないままに一身に引き受ける、というんですか。

    本よりラジオの方がおもしろかった。

  • やっぱり平川さんの本は気づきを与えてくれる。

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著者プロフィール

文筆家、隣町珈琲店主。1950年、東京生まれ。著書に『小商いのすすめ』(ミシマ社)、『グローバリズムという病』(東洋経済新報社)など。

「2018年 『「農業を株式会社化する」という無理 これからの農業論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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