世界文学の21世紀 (ele-king books)

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909483676

作品紹介・あらすじ

現在、文学の世界では何が起こっているのか。そして世界の中で文学はいまどのような位置にあるのか。
国境、人種、ジェンダーなどさまざまな枠組みが大きく変わりつつある21世紀にあって、文学はどのように変わろうとしているのか。「21世紀の世界文学」を多様なトピックから紹介。ゲストを迎えて同時代カルチャーと世界文学の接点に迫る対談も合わせて掲載、さまざまな角度から世界文学の潮流に迫ります。

著者 アメリカ文学研究者、翻訳家、早稲田大学教授。
著書に『今を生きる人のための世界文学案内』(立東舎)、『狂喜の読み屋』(共和国)、訳書にジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(新潮社)など。

対談ゲスト陣
・大和田俊之 アメリカ文学およびポピュラー音楽研究
・椹木野衣 美術批評
・寺尾紗穂 シンガーソングライター、ノンフィクション作家
・五十嵐太郎 建築史家、建築評論家
・ドミニク・チェン 情報学者、メディアアーティスト

感想・レビュー・書評

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  • 都甲幸治著『世界文学の21世紀』本日発売、大和田俊之、椹木野衣、寺尾紗穂、五十嵐太郎、ドミニク・チェンの豪華ゲストを迎えた対談も収録! | ガジェット通信 GetNews
    https://getnews.jp/archives/2696597

    世界文学の21世紀|都甲幸治|cakes(ケイクス)
    https://cakes.mu/series/4313

    都甲幸治『世界文学の21世紀』 – 神保町ブックセンター
    https://www.jimbocho-book.jp/545/

    世界文学の21世紀 - P-VINE, Inc.
    http://p-vine.jp/?s=%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%96%87%E5%AD%A6%E3%81%AE21%E4%B8%96%E7%B4%80

  • M-1の敗者復活戦でランジャタイの漫才を見て、これは現代文学だ!と衝撃を受けた。
    欽ちゃんが好きなんだよって話してたらもう仮装大賞でありもしない「仏が沼にハマったよ」という演目をしていてそこから唐突になんでも鑑定団になって…という現実の崩壊感が、村上春樹や、フィリップKディックのユービックみたいだ!とものすごく感動したのだけど、彼らは投票では最下位になってしまった。
    私のこの感動は的外れなのかもしれないけれど、でもなんだか、こういう現実とそうでないものの境界が曖昧になる感覚や、理論からの脱出、近代に作られた様式から超えていこうとする試みは文学や芸術世界に留まらず、最近特に広く多くの場所で行われ始めているんじゃないかという予感がしていた。
    そして、この本は、その予感を確信に近づけてくれた。

    この本を読んで、世界文学や、映画や、建築や、ネットフリックスや、ノンフィクションの世界において、洗練された技巧や、理論よりも、心地よさや、人間の感覚に立ち返るような方向に進みつつある、ということが語られていると私は解釈した。
    心地よいとか、感覚を重視するとかいうと、それは今まで積み上げられてきた理論を学ばない、頭を使うことを回避しているのでは無いか、と思われがちだが、実際は、積み上げた理論に当てはめて機械的に構築することの方が考えることを放棄していると思う。
    あるものを見た時、理論も意味も取り払ってそのものを受け取るのは難しいし、そうしたものから離れて受け取った感覚を言葉にするのはもっと難しい。
    人間の知覚は言葉や、機械では到底表しきることができないほど複雑なのだから、理論化したものからはみ出た場所に知覚において重要なものが取りこぼされている事がままあるはずなのだ。
    そういう点で美術評論家の堪木さんとの対談で語られている「花子」の話がとても印象的だった。

    今は論理的な思考や、最高の生産性を求めることで切り捨てたものの大切さに人間が気づきつつある時期なんだろうと思う。
    この本の良いところはそれでも人間への希望を感じさせてくれるところだ。
    理論や生産性を求め続けた社会は今まさに行き詰まっている。
    しかし、もしそうした現行の価値観を取っ払って物を考えることができたなら。
    今1人が手に取れるお金よりも、もっと先の未来で皆が共有できる富を考えられたなら。
    論理的思考よりも、身体感覚を大切にできたなら。
    そしてそうした希望は、社会の本筋とされている人よりもむしろ、軽んじられてきた人々の中にこそ根付いている。

    ところで漫才の世界でもこうした現象が起きつつあることがマヂカルラブリーの優勝に表れているのではないだろうか…
    そして世界がこのままこの方向に進み続けたらいつかランジャタイがM-1優勝することもあるんじゃなかろうか…と私は妄想している。
    そしてきっとその世界は今よりも平和になっているんじゃないかと期待している。

  • 《コンマリの更なる容赦のなさが際立ったのが、古い郵便受けのシーンだ。中南米系移民にとって、ちゃんとした家を自分で買うというのはとても大きなことなんだよ。買ったときに付いていた郵便受けは、だから絶対に捨てられないんだ、と男性は言う。
     するとコンマリは言うのだ。今この郵便受けを持って、あなたはときめきますか。未来でも一緒にいたいですか。しばらく黙り込んだ彼は、ついに郵便受けを処分する、と言ってしまう。今使っているきれいな郵便受けのほうがよっぽどときめくからね、と。このシーンを見ていて、なぜだか僕は泣きそうになった。ねえ、一回ぐらいはコンマリに抵抗してみようよ。たとえときめかなくても、人生には大事なものがあるんじゃないのかい》(p.18)

    《僕らはロマンチックな自己表現に、世代的・構造的に懐疑を持ってしまっている。だから、偽アメリカ文学なんですよ。自己表現ではなく、なにかが屈折してしまったという状況にしか美しさを見出せないというか。》(p.54)

    《野球もサッカーも好プレー集だけでいい。好プレー集ってあれ、ブレイクビーツでしょ。》(p.54)

    《だから孤独という概念が、うまく付き合えばこなせるみたいな風潮が広まっていくと、その人自身を追い詰めてしまう可能性がある。》(p.139)

    《新しい表現が出てくると、みなそれが前提で過去を読み直すので、見え方が変わっていく。》(p.177)

    《文学史でもポスト・モダンのあとを指す用語がないんですよ。でも、僕はここ二〜三〇年の、超現代のところの議論をしているので、用語も理屈がない中でどうやって摑んでいくのかという仕事もしてるんですよね。
     そこでただ感覚的に「ここがいいんだ、ここが泣けるんだ」みたいな話をするのもいいんですけど、なにか理屈を作るには、「これってモダニズムの中にも、ポスト・モダンの中にもあったよね」とか、歴史化していくことが大事だし、幅が広がるんじゃないかみたいなことを考えています。》(p.177)

    《共話はこの本の定義では相手が話し始めて、「春になると……」「あったかくて気持ちいいですよね」「気持ちいいって最高ですよね」みたいな感じで、一文を二人で完成させながら共に考える。日本語の会話はそっちのほうが普通なんじゃないか。》(p.221)

    《(水谷信子先生)の出した結論は、日本語が上手いというのは、決して文法を全部マスターするとか、語彙がすごく多いとか、完璧な日本語を喋るということではなく、共話ができることなんだと。そうしないと自然な日本語にはならないとおっしゃっているんですね。》(p.222)

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著者プロフィール

翻訳家、批評家、アメリカ文学者。早稲田大学文学学術院教授。 一九六九年、福岡県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。
著書に、『偽アメリカ文学の誕生』(水声社)、『 世紀の世界文学 を 読む』(新潮社)、訳書に、C・ブコウスキー『勝手に生きろ!』(河出文 庫)、ジュノ・ディアス『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』、同『こうし てお前は彼女にフラれる』、ドン・デリーロ『天使エスメラルダ』(共訳、い ずれも新潮社)など多数がある。

「2014年 『狂喜の読み屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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