ライトノベル・クロニクル2010-2021 (ele-king books)

著者 :
  • Pヴァイン
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本棚登録 : 37
感想 : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909483874

作品紹介・あらすじ

ラノベを読めば日本がわかる!

◆ラノベは311も貧困問題も直接的には描かなかった。にもかかわらずそれは時代を反映していた。マンガ、アニメ、ゲームへと派生して時代を彩ったヒット作は何を描いていたのか? 社会状況や読者の心情といかに呼応し、あるいはズレていたのか?
◆本丸たる文庫ラノベの市場規模は縮小する一方、ウェブ小説(なろう系)やボカロ小説を取り込み、ライト文芸などへと拡張しながら、単行本ラノベ市場も合わせればプラス成長だったこの10年。つねに「似たような作品ばかり出ている」とも揶揄されるが、10年前と今とではラノベは大きく様変わりしている。
◆SAO、魔法科、ログホラ、ビブリア、俺ガイル、薬屋、ノゲノラ、オバロ、Re:ゼロ、このすば、転スラ、ダンまち、のぶ、よう実、幼女戦記、ナイツマ、ゴブスレ、はめふら……
◆2010年から2021年までのベストセラー60作を一気に批評し、このジャンルに明るくない読者にも何が重要で、どこが論点なのかが伝わるよう示す。発表されるやいなやバズを引き起こした「ラノベの中学生離れ」論も所収。「現象」としてのラノベが映し出す、2010年代日本の姿とは──

(著者プロフィール)
飯田一史(いいだ・いちし)
マーケティング的視点と批評的観点からウェブ文化や出版産業、マンガなどについて取材・調査・執筆。単著『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ』『ウェブ小説の衝撃』等。Yahoo!個人、リアルサウンドブック、現代ビジネス、新文化、日刊サイゾーなどに寄稿。

感想・レビュー・書評

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  • とにかく労作で、ここまでライトノベルを読んで評論を書くという行為をしたことが素晴らしい。内容はややネタバレ的な部分があるので注意が必要。

  • 《巨視的に見ればラノベは「群れ」が作り出す運動である。ただし、当事者や読者のリアルタイムの意識としては「個」(個別の作品・作家)として認識されている。》(p.9)

    《本書の読者に記憶してほしいのは、広義のラノベでは『禁書』のように、神を信奉する「教会」が「敵」としてしばしば表象される点である。(…)超常的な力や奇跡を求める一方、宗教は忌避するという態度が二〇〇〇年代以降のスピリチュアル・ブームで見られるが、これと同型だ。》(p.19-20)

    《現実世界では不倫した著名人が炎上する一方で、ラノベでは炎上回避のためにハーレムが選ばれたのが一〇年代だ。本作【『魔弾の王と戦姫』】は、戦記部分や政治体制の混乱や腐敗、各勢力の思惑や民衆感情を描くパートではリアリティを重視した骨太な展開を見せる。他方で、従来の文庫ラノベのラブコメの流れを汲むラッキースケベイベントは頻出、結婚制度や婚姻に関する価値観自体が現実とは異なる世界であることを活かして堂々たるハーレムエンドを描く。とはいえ大人の読者も満足させる頭脳戦と、性愛に対する(読者の)欲望の肯定の並立、上半身と下半身のリアリティレベルの乖離は、ラノベが元々有した「『世界』と『学園』の重ね合わせ」の変奏ではある。》(p.137)

    《その俺TSUEEぶりにではなく、MMORPGの骸骨姿のマジックキャスターが戦闘能力は最強でありながらも内心ビビっていたり、かつてのギルドの仲間と会えないことをさみしく思っていたりといった「外形」にこそ、一〇年代のウェブ小説らしさがある。》(p.160)

    《ジャンル固有の評価軸を定め、キャノンを作り出すには、ランキングと映像化だけでは不可能なのだ。①定期的な回顧・特集(たとえば「SFマガジン」「ミステリマガジン」の特集の多くは評価の定まった作家の特集や作品ガイドだ。これはジャンルの外側からはいつまでも中身が変わらない古色蒼然としたものに映るが、ジャンル内の評価軸をコミュニティ内で継続的に共有するには不可欠な作業だ)》(p.205)

    《本作【『ありふれた職業で世界最強』】では、居場所のなさを感じ、自らの無能さに劣等感を抱き、世界を呪詛した主人公だけが、誰もが疑わない世界の欺瞞に気づいて真実に辿り着く。この考えは陰謀論と親和的な危ういものだが——ネット民が嫌いな西野亮廣『えんとつ町のプペル』の展開とも同型だ——そのわかりやすさと気持ちよさは人を惹きつける。》(p.255)

    《この「褒めまくり」から始まるお約束はソーシャルゲーム/スマホ向けゲーム開始序盤の無双ぶり(ガチャが引ける、資源が膨大にある、敵を圧倒等々)に似ている。これも、ソシャゲ的な快楽をラノベにいかに導入するかという課題に対するラノベの対応と解せる。文庫ラノベも「最初から強い」「いきなりラッキースケベ」は二〇〇〇年代作品でもやっていたが、なろう系はより徹底して主人公を持ち上げることで読者を気持ちよくし、それを読み進めてもらう原動力のひとつにする。》(p.277)

    《『友崎』『チラムネ』的な「努力が足りないからクラスに溶け込めない、モテない」という理屈は、新自由主義的な自己責任論だ。背後に個人の努力では避けられない経済・社会・文化的影響があること、後天的には変えがたい個人の発達や適性の差異が存在することを覆い隠す。だが『はがない』のようにそこから「降りる」のではなく「乗る」。これが一〇年代後半以降の青春ラブコメで支持されている。》(p.296)

  • 取り上げられる本を一冊も読んだことがなく、自分がおじさんになったことを実感する

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著者プロフィール

1982年青森県むつ市生まれ。グロービス経営大学院経営研究科経営専攻修了(MBA)。小説誌、カルチャー誌、ライトノベルの編集者を経てライターとして独立。マンガ家や経営者、出版関係者のインタビューも多数手がける。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ キャラクター小説の競争戦略』(青土社)『ウェブ小説の衝撃 ネット発ヒットコンテンツのしくみ』(筑摩書房)、構成を担当した本に藤田和日郎『読者ハ読ムナ(笑)いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか』(小学館)など。

「2018年 『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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