書誌学入門ノベル! 書医あづさの手控〈クロニクル〉

著者 :
  • 文学通信
3.21
  • (2)
  • (6)
  • (17)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 165
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909658418

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 書誌学入門、サブタイトルにふさわしい古書の修理に関する様々な事柄が物語の中に組み込まれ、謎解きをするような展開で進んでいく。
    双子の姉妹の成長自立の物語。父親の虫に好かれる変わった存在感にちょっと驚いた。

  • 小説としては今ひとつだが、勉強にはなった。

  • 専門用語が多いので難しく感じますが、とても面白かったです。双子の姉妹を中心とした登場人物も良かったです。

  • 書誌学をネタにしたライトノベル。
    書物の修復を生業にする家の娘が、色々な人や書物に出会っていく成長物語。ストーリーはさくさくと読めて、登場人物同士が語り合う書誌学知識が面白い。
    この本を読んでいるうちテンションが上がって、読後『和本入門』[ https://booklog.jp/item/1/458283292X ]と『書誌学談義』[ https://booklog.jp/item/1/4006003390 ]を引っ張り出してきて再読。本書で小ネタとして使われている話題がそちらにも出てくる。当たり前なのだが、知り合いに再会したみたいでなんとなく嬉しい。たとえば本書「大手鑑は聖武天皇直筆である宸筆『賢愚経』の断簡-聖武切を必ず最初に貼るっていう約束事があるんだ。(p124)」→『和本入門』p31で聖武切の話が出てくる。
    またこれは偶然かもしれないが、印象深かったくだり。朝鮮本について語り合う場面で、紙の研究をしていると漢字文化圏の各種言語に通じる必要があるとか、韓国のデータベースを引く際、資料自体は漢文なのでハングルが読めなくても大丈夫という話(p223-224)が出てくる。同じく『和本入門』でも、ヨーロッパの共通語であったラテン語と同様に、漢文はアジア圏の共用語としての役割を担ったという指摘があった(p51)。漢文が漢字文化圏における共通語だという事実は、これも歴史を考えれば当たり前なのだが、古い書物の研究をする人には肌感覚としてあるのだろう。
    自分が併読した2冊に比べると、本書の方がよりモノとしての面に注目している。中身や出版事情等への言及はあまりなく、本を構成する素材の話題が充実している。日本と韓国の楮の性質の違い(p66)など。
    そうしたモノとしての古書について、主人公が同級生に語る場面(p48-49)が熱い。
    「古書は生演奏。楽曲を作った人自身が演奏するのを生で聴くのはもちろん最高だと思う。でも、その曲を好きな人がその人なりのアレンジで楽しみながら演奏しているのも聴いていてワクワクするでしょ。同じように、たとえ写しであっても、人が書いた文字が伝える魅力って、音楽と同じだと思うんだ」
    「文字情報っていうけど、その本をどういう紙で作ろうとしたか、っていうのも情報なの」

    こういう熱量を、特に比較的知られていない分野についての熱を伝えるのに、ライトノベル(小説形式)というのはやはり良い媒体だ。専門家の専門知識と思い入れとを同時に仮想体験できる。もちろん研究書や論文だって目のある者が読めば熱いのだけれど、そのレベルに達するには基礎知識が必要だし、書く方もなるべく頭を冷やして書くから、愛をあまり前面に出せない。
    紙の素材が色で分かる特殊能力という設定は『もやしもん』[ https://booklog.jp/item/1/4063521060 ]を思い出す。突飛なようだけれど、専門知識を持つ人に見える世界の解像度はこうなのだろう。
    ところで主人公の名前「あづさ」と「さくら」は板木にちなんでいるのが分かるが、「葵」は何だろう。紙漉きの増粘剤のトロロアオイ?

  • 書誌学の知識をベースにしたライトノベル。書物を専門に治す書医という架空の仕事に就く新人の物語を通して、漢籍、古典籍の歴史が紹介される。京都の要法寺や全国漢籍データベース、『古鮮冊譜』など興味深いキーワードが出てきた。巻末には書誌学講座と題して、書誌学の用語を解説している。とはいえやはり用語が難しく、作中に注釈がほしいところだった。

  • 書誌学入門ノベルと銘打たれたライトノベル風の学問書。入門とはいえゴリゴリの書誌学で、かなり理解に骨が折れるところだが、架空の職業「書医」、共感覚で紙が識別できる双子の妹など、ファンタジーチックな設定で読みやすい。小説としてはあまり成功していないのだが、書物の成立背景や構造を調べて謎を解き人を知る学問の醍醐味はしっかり伝わる。これ、同じ設定・同じ著者監修で、職業作家さんに娯楽寄りのミステリなんて書いてもらったら書誌学ブレイクするのでは…。題材に惹かれて、本好きはまんまと読むよね。

  • 書医なるものが面白かったし、大学生の双子姉妹が真面目に、家業に向き合う姿や、そのみちのプロたち人との出会いも良かった。書誌学が難しくて読みづらいところもあったが、難しい問題を解き終えた後のような、頭を使った後の爽快感が味わえた。本物の良さと、物に引き寄せられる不思議さ、そんな仕事がしてみたい。

  • 私はうんちくには興味がない。ただ小説が読みたいのだ。

  • なんとも、スカスカの人物描写と空虚な展開にビックリ.
    これ小説?付録で星1つ追加。

全22件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

博士(文学)。青森県立弘前高等学校卒業。慶應義塾大学文学部国文学専攻卒業後、法政大学大学院にて日本文学(近世)を専攻。指導教授は松田修。原典・現物にこだわる研究姿勢を継承している。慶應義塾大学の無料公開オンライン講座FutureLearn「The Art of Washi Paper in Japanese Rare Books(古書から読み解く日本の文化、和本を彩る紙の世界)」で講師を勤める。著書に『紙が語る幕末出版史 『開版指針』から解き明かす』(文学通信、2018年)。

「2020年 『書誌学入門ノベル! 書医あづさの手控〈クロニクル〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白戸満喜子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×