REKIHAKU 特集・日記がひらく歴史のトビラ

制作 : 国立歴史民俗博物館  三上喜孝  内田順子 
  • 国立歴史民俗博物館
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  • Amazon.co.jp ・本 (111ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909658579

作品紹介・あらすじ

国立歴史民俗博物館発! 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』!
いまという時代を生きるのに必要な、最先端でおもしろい歴史と文化に関する研究の成果をわかりやすく伝えます。

本書の特集は「日記がひらく歴史のトビラ」。

一冊の日記は、これほどまでに人を動かし、歴史を見る目を変えていく。
歴史を語る史料として、日記は魅力的でこんなにも奥深い。
日記を書き、読むことは私たちが歴史に参加し、歴史を実践する行為だ。

歴史学の世界では、日記が史料として研究対象となることがある。一方最近では、日記や手紙など個人の語りに注目する研究も行われている。個人の日記には、公式の歴史書では語られない「生の声」があふれ、きわめて魅力的な史料である。

日記という一人称の史料から、どのような歴史が描けるのか、日記研究の魅力と困難を、時代や地域やジェンダーを越えて語ることを目的とする。日記が歴史を語る史料として魅力的で奥深いものであることがわかれば、日記を書くこともより楽しくなるのではないだろうか。

特集テーマは「【特集対談】日記に寄り添うということ マーシャル諸島と戦争の記憶」「日記の生命力」「かな日記と『土佐日記』」「「日記」を書く遊女たち」「日記・文書としてのツイッター」「近代日本の「日記文化」を探究する」「個人の日記を社会の遺産に」「朝鮮時代の日記資料と研究動向」。

特集以外にも、教科書には載らない歴史のこぼれ話、いま注目の博物館漫画家・鷹取ゆうの連載、浅井企画のお笑い芸人・石出奈々子の連載、フィールドワークのビジュアル記事、デジタル研究や若手研究者の記事、全国の博物館や、くらしにまつわる事物を振り返る記事、そして海外の研究記事など、盛りだくさんで歴史と文化への好奇心をひらいていきます。

執筆は、大川史織、三上喜孝、松薗 斉、小倉慈司、横山百合子、小島道裕、田中祐介、島 利栄子、金 貞雲、齋藤 努、鷹取ゆう、石出奈々子、川村清志、日高 薫、廣川和花、大久保純一、亀田尭宙、橋本雄太、渡部圭一、山田慎也、内田順子、青木隆浩。

歴史や文化に興味のある人はもちろん、そうではなかった人にもささる本。それが『REKIHAKU』です。年3回刊行!

感想・レビュー・書評

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  • 創刊号、2号、3号と読んできたけど、号数を重ねるごとに段々面白くなってきた。今回の3号は『日記がひらく歴史のトビラ』。表紙の雰囲気も凝っていて、「歴博さんノッてきたんじゃない?」とニンマリ。特に日記史料、日記文学には興味があるので、楽しく読むことができた。

    気になる時代が出てきたら、その時代に書かれた日記を読んでみる。そうすれば当時の空気も感じられる。難しい文章で書かれている歴史書だって、「あ、そこは分かる!」なんてところが時折現れたりして、そうなるとまた面白くなってくる。
    わたしは平安時代の一条天皇の頃がとても好きなので、その周辺にいる人物たちの日記「紫式部日記」や「御堂関白記」、「和泉式部日記」を現代語訳だけど読んでみた(日記全部の文章とは言えないので、“触れてみた”かな……)。
    あとは「権記」、「小右記」も必ずや読んでやるぞと思っているし、各日記の全文をしっかり読み込んでいきたいと密かに燃えていたりもする。
    それに加えて今は、ぐーんと時代と海を越え〈朝鮮王朝〉が気になってしょうがない(はい、韓国の時代劇ドラマの影響です)。
    現代語で書かれた「朝鮮王朝実録」の解説本を読んでいるのだけど、これがなんとも面白くて。あぁ、壮大で無謀な夢ではあるけれど、いつの日かちゃんとした実録を読んで(見て)みたいものです。……できるならば現代語との対訳で。

    今回の特集対談『日記に寄り添うということ マーシャル諸島と戦争の記憶』のなかで、映画監督 大川史織さんは「私は歴史家でも研究者でもありません。でも歴史とは、日々の営みそのものであり、誰もが歴史家であると思ってます。」と述べている。
    アジア・太平洋戦争中にマーシャル諸島で餓死した日本兵・佐藤富五郎さんが戦場で書かれていた日記に出会った大川監督は、その日記を読み、書かれたものをたどることによって、歴史実践者として歴史とつながることを極めたいとインタビューに答える。大川監督は、この日記をもとにドキュメンタリー映画『タリナイ』を製作した(2018年公開)。
    大川監督の言葉に、わたしは一般の単なる読者であるけれども、これからは日記という歴史を語る史料に向き合うとき、単なる好奇心だけでなく、もっと知りたい、この奥には何があるのか、そんなことを考えながら読んでいきたいなと、ちょっぴり背筋が伸びる思いがした。

    特集記事のなかで、いちばん興味を抱いたのは、『「日記」を書く遊女たち』──なぜ遊女たちは「日記」を書いたのか。──
    1849年(嘉永2年)の新吉原遊廓で起きた遊女の放火事件。その資料『梅本記』と題された裁判調書には、遊女の自筆の「日記」やその「日記号」も含まれている。
    “この事件は、16人の遊女が2年以上も合議を重ね、大火にならぬよう放火したのち自首し、抱え主佐吉の非道を訴えたものでした。”
       (ジェンダー展の公式Twitterから引用させていただきました。)

    著者 横山百合子氏は、そもそも、一つの見世の何人もの遊女が「日記」を書くということがあったのだろうか、また、本当に遊女の「日記」だったとして、なぜ遊女たちは「日記」を書いたのだろうと、資料を発見した当時は疑問であったらしい。
    研究として考えるとそうなるだろうな。でも女性としての立場から遊女の身を考えると、なんとなく理解できるよ……と、わたしは思った。
    遊女同士であっても、本心を語り合えるほど心を許しあうことなんて稀なことだったろうし、まして抱え主からの非道に声をあげることなんて到底出来ない世界。それならば、あとは書くことだけしか、彼女たちが辛さや苦しみを吐き出す手段はなかったはず。誰に見せるでもない日記(とも思っていなかったかもしれない……)という形で、思いのままを綴ることで、彼女たちはなんとか1日1日を生きていくことができたのではないかと思うのだ。
    著者もやはり、「誰かが読むために書いたのではなく、生命の危機に追い込まれた経験を、書くことで吐き出し、心理的な抑圧を緩め、精神の崩壊をかろうじて食い止めたともいえよう。」と述べている。
    この遊女の「日記」のような“「一人称」で書かれた資料”──日記や書簡などで、歴史における「主体」への注目から生まれてきた史料論──をエゴ・ドキュメントというらしい。
    彼女たちの「日記」についても論じられている『エゴ・ドキュメントの歴史学』長谷川貴彦編 (岩波書店)はぜひとも読んでみたい。

    あともうひとつ特集記事で面白く読んだのは、『朝鮮時代の日記資料と研究動向』──朝鮮時代の人々にとって日記とは、自らの歴史であった。──
    うわ、わたしにはドンピシャな特集ではないか。
    朝鮮時代の日記は2007年時点で確認されているものが1600件余りある。その作成主体は、個人が約80%、残り20%が国家機関。
    国家機関の日記は、承政院が毎日の業務内容をすべて記載した『承政院日記』、世子の日常について記録されたのは『東宮日記』、他にも様々な記録『宗廟日記』『国葬日記』『輔養庁日記』などなど。祭祀、葬礼、教育、出産、養育などの出来事ごとに作成される。
    また80%を占める個人の日記では、李文楗の『黙齋日記』、周世鵬の『遊清涼山録』など、たとえば旅行日記、官僚日記、紀行日記などが作成された。また天気、農作物の状態、季節の吉凶、近隣の事件、朝廷などで起きた事件……など、必ず記録しなければならないとした親子4代にわたる日記もあり、日記とは毎日の行動を記録し、自らを省みるための資料でもあった。

    朝鮮時代の人々にとって日記とは、子孫に公開される文章であった。「結局、朝鮮時代の人々にとって日記とは、自らの歴史であった。朝鮮時代、国家は国家の歴史を記録し、個人は個人の歴史を記録した。」と著者 金 貞雲氏は述べる。

    この特集に関して、企画展の図録「18世紀ソウルの日常 ユマンジュ日記の世界」を歴博のオンラインショップから取り寄せてみた。その時代の歴史とあわせて読んでみると、大きな歴史のなかでは見えなかった日々の営みという個人の歴史が見えてきて面白かった。

    今号の「博物館のある街」では、滋賀県草津市の滋賀県立琵琶湖博物館が紹介されていて嬉しかった。そうだそうだ、2020年リニューアルオープンしたんだ。広くて気持ちがいい琵琶湖の風景も見たいし、また行ってみよう。

    • kuma0504さん
      地球っこさん、おはようございます♪
      詳しい説明ありがとうございます。
      こんな雑誌できているんだ。
      歴博、20年近く行ってない。行きたいなぁ。...
      地球っこさん、おはようございます♪
      詳しい説明ありがとうございます。
      こんな雑誌できているんだ。
      歴博、20年近く行ってない。行きたいなぁ。
      普通博物館発行物は通販できないけど、Amazonできるんだ。そうか‥‥。ちょっと考えよ。
      2021/07/02
    • 地球っこさん
      kuma0504さん、おはようございます♪

      国立歴史民俗博物館、行ったことないのに「歴博さんノッてるね~」なんて偉そうなこと書いてしま...
      kuma0504さん、おはようございます♪

      国立歴史民俗博物館、行ったことないのに「歴博さんノッてるね~」なんて偉そうなこと書いてしまいました。失礼しました。
      歴博、憧れます。行ってみたい。

      この雑誌は近所の本屋さんでは見かけないので、わたしも通販で購入してます。
      年3回の発行です。
      旧総合雑誌「歴博」がリニューアルされて創刊されたみたいですよ。
      旧「歴博」は、kuma0504さんのおっしゃっるとおり一般書店やネットで買うことができなかったようです。
      あと内容が「難しい」とか……

      先日、初めて歴博のオンラインショップで図録を注文したのですが、本当にすぐに届いたので嬉しかったです(*>∀<*)ノ
      2021/07/02
  • 歴史と文化への好奇心をひらく『REKIHAKU』|刊行物|歴博とは|国立歴史民俗博物館
    https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/rekihaku/index.html

    REKIHAKU 特集・日記がひらく歴史のトビラ 国立歴史民俗博物館(編) - 国立歴史民俗博物館 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909658579

  • 2階集密 : 205/REK/3 : 3410167812
    https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/webopac/BB50372597

  • 日記。

    歴史の断片を見せてくれる。

    中世、近世、近代、現代。

    いつの世も日記が、民衆の姿、あるいは為政者の姿の一部を垣間見せてくれる。

    大学生の頃に、その重要性に気がつけばよかった。

    後悔である。

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著者プロフィール

千葉県佐倉市城内町にある、日本の考古学・歴史・民俗について総合的に研究・展示する博物館。通称、歴博(れきはく)。歴史学・考古学・民俗学の調査研究の発展、資料公開による教育活動の推進を目的に、昭和56年に設置された「博物館」であり、同時に大学を中心とする全国の研究者と共同して調査研究・情報提供等を進める体制が制度的に確保された「大学共同利用機関」。
〒285-8502 千葉県佐倉市城内町 117
https://www.rekihaku.ac.jp/

「2023年 『REKIHAKU 特集・歴史をつなぐ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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