- Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909753045
作品紹介・あらすじ
沖縄テレビ制作のドキュメンタリー「菜の花の沖縄日記」原作、待望の書籍化。
高校生になったら沖縄で暮らしてみたい――。
そう考えた少女、坂本菜の花は、15歳で故郷・石川県を離れ、ひとり沖縄にやってきました。
高校は無認可学校「珊瑚舎スコーレ」。
クラスメートがお互いをサポートしあい、ともに成長する場が学校、教員はその手助けをする存在。そんな教育方針を掲げる珊瑚舎で、彼女はさまざまな人に出会い、経験を積み重ねていきます。
ユニークな授業、併設する夜間中学に通うおじい、おばあとの交流、街で出会った人との何気ない会話。そんな日常を楽しみながら、しかし一方で、基地のある島、地上戦のあった島ゆえの現実にも真正面から向き合い、自分には何ができるのかを深く考えます。その貴重な記録が本書です。
本書のもとになっているのは、北陸中日新聞で2015年4月~2018年3月まで31回にわたって連載された「菜の花の沖縄日記」。それに卒業後の文章3本と、珊瑚舎スコーレの星野校長、遠藤事務局長との座談会を加えて1冊にまとめました。
「菜の花の沖縄日記」は連載時から静かな反響をよんでいましたが、あるとき、沖縄テレビのディレクターの目に留まります。沖縄の基地問題をこれまでとは異なる方法で伝えたいと考えていたディレクターは、彼女を主人公にドキュメンタリー番組「菜の花の沖縄日記」を制作。その番組は「地方の時代映像祭2018」のグランプリに輝き、全国でも放送され、話題となりました。
それと同時に、この原作である北陸中日新聞の「菜の花の沖縄日記」にも注目が集まり、書籍化を待ち望む声が多数あがりました。
日記に出てくる沖縄の歴史や言葉、時事的な問題については注もつけました。
沖縄にはじめてふれる人にとってもわかりやすい内容で、菜の花さんと同世代の若い人たちにもぜひ読んでほしい一冊です。
感想・レビュー・書評
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15歳で地元(能登)を離れて、沖縄の学校に通った女性が3年間綴った日記。
まず、高校生活の環境に驚いた。同級生はわずか数名で、小学生から高齢者まで広い世代を跨る交流を普段から経験することで、これほどまで聡明で感受性豊かな人格が養われるのかと感動した。
農業・漁業・祭事・政治活動まで幅広く経験し、いろんな世代の友人が沢山いることで、物事の本質を見極め、確固たる自分の意見を持つことができるようになっている。特に、3年間で辺野古問題に対する考えが少しずつ変わり、多面的な立場から見るようになってきていることが象徴的だった。
それに対して、私の高校時代は、数百人の同級生と同じ環境で、難関大学受験のために死に物狂いで勉強をする日々だった。家族以外では、同世代ではない人と話もせず、本を読む時間も無いような状態で、問題集や教科書と睨めっこばかりしていた時間って本当に勿体ない。
世の中にはさまざまな世代・立場の人がいる「ちゃんぷるー状態」なのだから、多様性のある中で日々を過ごすのが自然だろう。同世代だけを集めて、同じ格好をさせて、同じカリキュラムを課し、かつテストの点数で序列をつけるやり方は、兵隊育成の手法でしかなく、全時代的で不自然だと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【目を開いて、耳を澄ませて】
石川県に住む女の子、坂本菜の花さんが2015年から沖縄へ単身「留学」中に、北陸中日新聞に連載した原稿などをまとめた本。彼女は沖縄に興味を持ち、面白い学校はないかと、とあるフリースクールを見つけて沖縄にやってきます。三線を練習したり、家を作ったり、畑を耕したり、ハーリーという船のレースなどなどユニークな授業が行われる「珊瑚舎スコーレ」。夜間中学が併設されたその学校では、年齢関係なく様々な人が学んでいる。先生たちは一方的に勉強を教えるのではなくサポートするというスタンス。生徒たちの自主性に任せる。週のスケジュール決めや修学旅行の計画だって生徒でやる。夜間中学のお手伝いもやる。そんな毎日を菜の花さんのまっすぐな文章で伝えてくれます。
「基地の島」を知るべく高江や辺野古へ。遺骨収集ボランティアやチビチリガマ(戦時中の避難所)にも。並行して米軍による事件事故が起こり、離島では自衛隊基地配備が進む。見て聞いて考えて悩んで複雑な気持ちも綴られます。(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会/つちふまず) -
沖縄県にある珊瑚舎スコーレで過ごした著者が感じた沖縄の色々。
著者の感性の瑞々しさを感じました。 -
中学校卒業後、沖縄県にある無認可学校「珊瑚舎スコーレ」で学んだ著者。
その3年間で、学校で、沖縄の人と触れ合って学んだこと、感じたことが、素直に綴られています。
最後に収録されている校長との対談もよいです。
「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」
大きな問題にぶつかり、自分の無力さを痛感するときに、必ず思い出す言葉として、このガンジーの言葉を紹介しています。自分の核となるものをしっかりと持とうとしていると噛んじます。 -
子どもの時から知っている子…そんなことを勘定に入れなくても,この本は,特に,今の若い子たちに読んで欲しいなと思う。
奥能登から単身,沖縄の珊瑚舎スコーレという高校に通うことにした菜の花さん。自分で選んだ道で,考え,行動し,ひとまわりもふたまわりも大きくなっていく等身大の多感な女性の姿が,当時の日記風文章(新聞で掲載された)を通して表現されています。
何も分かっていない自分に気づくとき,自分の意見とは違う意見の人と出会ったとき,あまりにも大きな壁を感じたとき,矛盾だらけの社会で生きていることを知ったとき…それぞれの“とき”に,彼女の中に葛藤が生まれてきます。”わたしはこれでいいのだ”とは言いきれない自分が今の自分。それだからこそ,毎日を活き活きと生きている姿がわたしたちに伝わってきます。そして,自分の若い頃と重ねたりもするのです。
彼女の通うスコーレには,学び直したいおじいやおばあが同じ教室・校舎にいます。そんな多様な同窓生から学ぶこともたくさんあったようです。
時々,父親の一言が思い出のように出てきます。ちゃんと伝わっているんだね。
菜の花さんは,沖縄のTVのドキュメンタリー番組にも紹介され,2020年にはそれが映画になるそうです。楽しみだなあ。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/734398 -
沖縄のフリースクール(?)に通った女の子の連載手記。その感性に驚く。何気ない日常を生きながら気づき続けるのって実は難しいこと。それと考えても分からなければとりあえず動く。人に会う。それってとても難しいこと。珊瑚舎の教育方針もカッコいいし。自分もこんな生き方をしたい。
始めるのはいつだって今。 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/734398 -
P183珊瑚舎スコーレ代表の星野人史さん「珊瑚舎の子たちはアーティストになってほしいと思っています。アーティストというのは職業の名前じゃなくて、生き方なんだよね。想像力を糧にして、ある表現をつくっていくことだよね。そのキャンバスは社会です。」「この世にまだ存在しないもので、経済的価値のないものを一生懸命つくる。」ってことばに感銘を受けました。
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沖縄の日記、高校生になったら沖縄で暮らしたい、そう願っている少女菜の花15才。