- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909753151
作品紹介・あらすじ
フォトジャーナリスト安田菜津紀がつづる、自身のルーツをめぐる物語。
父は在日コリアン2世だった。
父の死後に知ったその事実に、著者のアイデンティティは大きく揺れ動く。
自分はいったい何人なのだろう。父はなぜ語らなかったのだろう――。
朝鮮半島からやってきた祖父母も、その子どもである父も、歳の離れた兄も、もうこの世にはいない。手がかりがほとんどないなかで、祈るような気持ちで資料を取り寄せ、わずかな痕跡をたどってかれらがかつて住んでいた地を歩き、交流のあった人の話に耳を傾ける。
その旅でしだいに見えてきた家族の在りし日の姿を胸に抱きながら、目の前の現実を取材する日々。現在と過去を往還するなかで、ときに気分が沈みそうになっても、多くの人との出会いにより、著者は自らの向かうべき道を見出していく……。
貧困、災害、難民、ヘイトクライムなどの取材を通して、人々の声を伝え続けてきた著者が、自らのルーツに向き合い、大きな気づきを得て、あらためて社会のありかたを問いかける渾身の作。
【メディア掲載・出演情報】
5月7日 朝日新聞デジタルに、インタビュー掲載
5月16日、TBSラジオ「Session」出演
5月17日、毎日新聞デジタル、毎日新聞夕刊に、著者インタビュー掲載
6月5日、東京新聞朝刊特報面に紹介記事
6月10日、毎日新聞朝刊「今週の本棚」に書評掲載。評者は作家の中島京子さん
6月13日、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」に出演
6月15日、「週刊新潮」書評掲載(6/22日号)、評者は篠原知存さん
6月24日~25日、沖縄タイムス、琉球新報、秋田さきがけ、 福島民報、沖縄タイムス、山陰中央新報 下野新聞に書評掲載(共同通信配信)。評者は武田砂鉄さん
6月25日、「しんぶん赤旗」書評掲載。評者は渡辺雅之さん
6月26日、ハートネットTV「ルーツをめぐる旅の先に SNS上のヘイトを問う」
6月26日、AERA「この人のこの本」コーナーに掲載
感想・レビュー・書評
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語られなかったルーツを探し求める過程と、その周辺の社会問題と地続きの歴史を辿る本。語られなかった、語れなかった理由の切実さが胸を打つ。
印象的だったのは、幼い著者が父親に連れられて投票しに行く光景だ。政治なんて興味ない=自分に害はないと安心している者がないがしろにしている投票権を、どれほど切望していたのかと思うと、苦労なく「当たり前」を保有している私たちの怠慢や傲慢さを痛感する。
また、登場する「ちゃんへん.さん」の国籍選択のエピソードは、読んでて胸が詰まった。突きつけられる歴史とイデオロギーや立場の弱さが、あまりにもつらく、重たい。
あとがきのようなページに、
『この社会に存在する国籍や出自、ルーツや文化の「違い」は、「なくすもの」でも「乗り越える」ためのものでもない。
だからこそ「皆、地球人」という、フラットに均してしまう語りにも違和感がある。
違いが違いとして、ただそこに自然と存在することができる社会が、生き心地のいい場所なのだと、私は思う。』
という文章に、はっとさせられた。
「みんな地球人」という一見平和的なフレーズに感じていた何とも言えない違和感の理由が、違いを無視する安易な目線が嫌だったのだと気付く。
「表現の自由」=自由に人を傷つける言動を垂れ流すことの許容、とされている現状。
そんな潮流に抗う著者を突き動かす原動力は、愛する者が生きられたはずの社会になるために、という願いだ。著者の人生に影響を及ぼした喪失体験について、
『「その経験のお陰で」とは絶対に言いたくない。それは(中略)背後にある社会の問題を、覆い隠すこと』
という、愛する者たちの存在が安直な言葉によって軽率に回収されまいとする姿勢の強さが伝わる。
いち読者として思ったのは…私たちは、弱さを知ることや、問題を考えることをやめてはいけないのだ。苦しみを知ることをやめて、難しいことを考えることをやめて、乱暴に単純化し二元論を振りかざす差別やヘイトに抗うために。 -
ー感謝を込めて に
この社会に存在する国籍や出自、ルーツや文化の「違い」は「なくすもの」でも「乗り越える」ためのものでもない。
だからこそ「皆、地球人」という、フラットに均してしまう語りにも違和感がある。違いが違いとして、ただそこに自然と存在することができる社会が、生き心地のいい場所なのだと、私は思う。
と筆者の安田菜津紀さんが綴っておられる
まったく、同感である。
この国では、
何も考えずぼんやりしていると
いつの間にか「みんな」の中に組み込まれてしまい
いつのまにやら加害者側に立たされてしまう危惧が
おおいにある。
安田菜津紀さんの「写真」と「文章」は
いつも その辺りのことを
興味深く じっくり考えさせてくれる。 -
安田菜津紀さんは、ポッドキャストでお話をきいたり、他の人の書いた本の中で見つけたり、とにかく注目している人だ。まことに人間らしさにあふれている。
彼女が自らのルーツを巡る本書にも共感いっぱい。
私もヘイトなど許されるはずがないと強く思っている。
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石原慎太郎ってクソだな。維新も。小池百合子も。
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安田菜津紀さんの活動に日頃から注目して、記事やコラムもわりと読んでいるので、なんとなく既に知っていることも多かった。
おばあさまの方のルーツが、女性だからはっきりしなかったことで改めて取り組むべき課題を確認されたようだ。いろいろな国内外の不条理な出来事を取材され、写真でも文章でもわかりやすく伝えてくださる安田さんをありがたく思い、応援していきたい。 -
東2法経図・6F開架:316.8A/Y62k//K
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TBSラジオやYouTubeでお話を聞いてファンになったので読む。日本という国が、マイノリティにとっていかに生きにくい場所かということがわかった。中傷を受けても著者のように声を上げつづける人がいることが救い。救われるだけじゃなく、わたしには何ができるだろうと考える。
在特会の人たちはきっと、自分自身の人生があまり幸せじゃないのだろうなと思った。辛さのはけ口を、立場の弱い人たちに求めているんだろうな。 -
日本人の家庭に育ったと思い込んでいたら、実は父は、在日二世だったと知った著者。父と異母兄との関係の不思議さも、今となれば理解できる。
自分のルーツを探る旅は、苦労の連続。テレビのコメンテーターとして活躍してる著者へ、その出自を絡めた、心無い中傷が届く。
自分は極めてフラットな感覚を持った人間だと思っているので、ヘイトスピーチや差別には嫌悪感がある。が、知らず知らずのちに、見て見ぬふりをしてるのではないかという、後ろめたさもある。家族の歴史を辿り、こうして本にして発表する、著者の勇気を賞賛したい。NHKにはファミリーヒストリー、という、著名人の先祖を探す番組がある。何本か見た記憶があるが、二世三世といった方を対象にした放送はこれまであったのだろうか?ふと、皮肉な気持ちで疑問に思ってしまった。
いろいろ心に残るエピソードや表現はあった。その中で、今の私に響いたのは、或高齢女性の「人間は朝起きて目的がなかったらダメ」と言うような、どうと言うことのないセリフだった。
著者プロフィール
安田菜津紀の作品





