- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784909862105
作品紹介・あらすじ
“音楽を聴くこと”と“本を読むこと”はともに、創り手と味わい手が時空を異にしながら時間を共にしあう体験。そこに「もうひとりの味わい手」が加わって「三角形」が浮かびあがるとき、あたらしい共同体が生まれます。
本書は、“音楽の本”を人文書のひとつのジャンルとして位置づけた編集者/出版人(アルテスパブリッシング代表)が綴る「共体験」型エッセイです(各篇にBGMがついて、書き手と読み手、読み手と読み手がつながることができます)!
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
近刊本をいただきました。
https://kodachino.co.jp/books/9784909862105/
音楽ってどうやって言語にできるのだろう。専門用語をつかわずに。うわあ、あまりにも抽象的でムリ、と、わたしが格闘している難題を、この静かな本は臆せず対峙している。しかもわたしよりも”方向音痴ではなしに”、著者はずっとずっと彼方を歩いている。さすが京都市中ををキーワードを唱えつつ方向をつかむ達人である。
音楽を耳にして得たこと、感性のどこかにひっかかったことを拾い上げ、しばし手のひらの上で観察する。そしておもむろに思索を進めるのだ。その腑分けの手つきに見とれる。聴覚から派生したあらゆる事象を、方程式を解いていくように、「これはこういうこと」「これはあれにつながる」と丁寧に言葉に置き換えていく。興味深かったのは、音楽と「自分」と「他人」の位置取りを3Dで見ていく視点。ああ、そう見るのか。音楽に没入するタチの自分としては、新鮮だ。おかげさまで、木村さんが言葉の虫取り網で仕留めた「音楽の実体」を、わたしも網の上から掴むことができ、その手触りをとりどりに愉しんだ。