送別の餃子: 中国・都市と農村肖像画

著者 :
  • 灯光舎
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本棚登録 : 94
感想 : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784909992017

作品紹介・あらすじ

中国の北方では、人々は別れの時に、手作りの水餃子を囲んでその別れを惜しむという。
自身の研究分野を「民族音楽学」に決めた著者が選んだ調査地は中国の農村。1988年、文化大革命後に「改革開放」へと舵をきった中国で、右も左もわからぬまま「研究」への情熱と未知なる大地へのあこがれだけで、彼女のフィールド調査がはじまった。

中国の都市や農村での調査をきっかけにさまざまな出会いがあった。「怖いものはない」という皮肉屋の作家、強烈な個性で周囲の人々を魅了し野望を果たす劇団座長、黄土高原につかの間の悦楽をもたらす盲目の芸人たち……「親切な人」とか「ずる賢い人」といった一言では表現できない、あまりにも人間臭い人々がここにはいる。それぞれの物語で描かれている風土と生命力あふれる登場人物に心うごかされ、人の心のありようについて考えてみたくなる。
1988年以降の中国という大きな舞台を駆け巡った数十年間には無数の出会いと別れがあった。その中から生まれた14の物語をつづったエッセイを、40以上のイラストとともにお届けします。


イラスト:佐々木 優(イラストレーター)

感想・レビュー・書評

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  • 荒波に身をまかせる(灯光舎 面髙悠) | 版元日誌・版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/nisshi1038

    灯光舎の本 - 京都の小さな出版社
    https://www.tokosha-publishing.com/publication/1/

  •  ブクログのタイムラインで流れてきて印象的なタイトルに惹かれて読んだ。学者の著者が中国でフィールドワークしているあいだに遭遇した中国人との思い出が綴られていて興味深い。また今すぐ会いたい、会えるわけでもないけど、自分の人生の中で通り過ぎた人たちに関する思い出話は個人的にとても好き。そして本著はそれの詰め合わせであり最高なのであった。
     一番オモシロかったのは著者が1980年代に中国の農村でフィールドワークしていた頃の話。今のように中国が豊かになる前で、80年代でこんな生活レベルだったのか?と驚く話の連続だった。そんな貧しい生活の中に根付く音楽をひたむきに調査している著者と現地の人々のやりとりは心温まるものが多い。今のように世界で戦争が起こっている中だと人間不信がうっすら社会に蔓延していくよなぁと最近考えていた。しかし著者が冒頭で宣言している通り、国がどうこうというのは超えてあくまで人同士の関係なのだと思えて心の平穏を取り戻せた。(ゆえに特定の国に対して誰彼問わずヘイトを飛ばしている人間には中指を)
     知らなくて興味深かったのは、中国語では日本語における「やさしい」に該当する言葉がないということ。生存するのが厳しい環境だったからこそ曖昧な概念を許さないがゆえらしい。しかしそれは逆をかえすと中途半端な「やさしさ」は存在せず困っている人がいたらすぐに助ける、そういった直接性は健康的だし社会としては生きやすいだろうと思えた。(功利主義ゆえなのかもしれないけど)
     本の装丁や挿絵も本著の大きな特徴。絵は味があって文字だけでなかなか伝わらない中国の文化が直接伝わってきて良かった。背表紙が餃子の皮で包まれているのもかわいい。インデペンデントな出版社だからこそできるフットワークと懐の深さが産んだ本だと思うので他の本も読んでみたい。

  • 自分の体験した80年代半ばからの中国と重なって。

  • 文化人類学系の本なので身構えながら読み始めたら、最初から面白い!エピソードが強い!
    中国人のことを私は「明るくてやさしい」と思ってきたけど、著者によれば「やさしい」という言葉は中国には不要な概念だそうだ。
    病院の描写はどれもおどろおどろしく、よっぽど心細かったのだろう。
    対して食事の描写は感動が溢れていて、日本の食事は彼らには不満だろうとあるのも、日本人はなかなか言わない事で面白かった。

  • 中国の農村でのフィールドワーク。そこで出会った忘れられない人たち。
    なんだかとてもうらやましかった。誰でもが簡単には行けない辺境の地に行って、いろいろな人と出会い、調査する。それが仕事であること。なんと自分は狭い世界で生きてきたのか。そういう感想を持つために書かれたものではないと思うが、そう感じてしまったのだから仕方がない。
    著者の目を通して描かれた中国の農村の人はとても魅力的だった。欠点もまた魅力的で、それは著者の目を通したからこそであろう。距離も時代も遠いのだが、まるでそこに自分もいるかのように楽しんだり困ったりした。

  • (後で書きます)

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著者プロフィール

専門は音楽学、民族音楽学。大阪音楽大学音楽学部教授。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得、文学博士。主な研究テーマは中国の音楽・芸能、近代アジアの洋楽受容。 
主な著書に『亡命者たちの上海楽壇 ― 租界の音楽とバレエ』2019年、音楽之友社。『中国北方農村の口承文化―語り物の書・テキスト・パフォーマンス』1999年、風響社など。

「2021年 『送別の餃子 中国・都市と農村肖像画』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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